★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK52 > 101.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080721ddm012040002000c.html
東京・国分寺市議の住居侵入:議会報告ビラ投函で書類送検に波紋
◇住居侵入か、表現の自由か
東京都国分寺市で5月、市議が議会報告ビラをマンション敷地内の1階の集合ポストに投函し、住居侵入に問われ書類送検(後に不起訴処分)された。市議は、オートロックの扉の内側には立ち入らなかった。政治活動の一つであるビラ配布。過剰反応だとして疑問を呈する住民もおり、「表現の自由」の観点からも波紋を投げかけた。【内橋寿明】
5月18日午後5時ごろ、JR国分寺駅近くにあるマンション入り口のオートロック扉の外側でトラブルは起きた。集合ポストにビラを投函中の幸野統(こうのおさむ)国分寺市議(共産)は帰宅した住人と鉢合わせした。
「何やってるんだ」「党の市議会報告を配っています」「ビラ配布禁止、関係者以外立ち入り禁止と張り紙があるだろう」「市議会議員として市民にお知らせする義務があります」「必要ないと住民が明記しているのだから配る権利はない」
幸野市議や、後に警察へ被害届を出したマンション管理組合副理事長を務める新海栄一国分寺市議(自民)、この住人らの証言によると、やり取りは長時間続いた。インターホンの上には、「チラシ、一切、禁止。悪質なチラシ配布は警察に通報する」との「警告」が掲げられている。
3年前に管理組合で決議したもので、住人は決議を根拠に「議会の動きを知りたいと思えば、インターネットで議事録を確認できる。ビラを受け取りたくない自由も認められるべきだ」と主張する。
ビラは共産党市議団の3月議会報告。幸野市議は昨夏の参院選前、ビラ配布で数回出入りしたが、抗議はなかったという。
住人はこのマンションに暮らす大家の新海市議を呼び出した。幸野市議は二人に「二度と配らない」と約束。新海市議は「丸く収まった」と思って外出した。だが、住人の怒りは収まらず、午後6時ごろ、幸野市議と駅前の交番へ行った。幸野市議は警視庁小金井署で事情聴取され、写真も撮られた。
集合ポストがある場所は共有スペース。「住居侵入事件とするには管理組合としての被害届が必要」と説明された住人は新海市議に提出を求めた。
新海市議は「住人の強い希望は管理責任者として無視できない」と思った。同調する住民も数人おり、4日後に被害届を提出。小金井署は6月9日に住居侵入容疑で東京地検八王子支部に書類送検した。一方で新海市議は7月3日、「騒ぎを大きくしたくない」と被害届を取り下げ、地検支部も17日、不起訴処分とした。
一方、住人の中には管理組合の「過剰反応」に批判的な意見もある。男性住民は「郵便物が大量のビラに紛れるのは迷惑」としながらも、「ピンクチラシでもないのに配っただけで犯罪とされるのは怖い」と話す。
幸野市議の送検後、弁護士らでつくる自由法曹団東京支部(文京区)は国分寺市議会に不起訴を求めるよう文書で要請し、「今回のビラ配布が犯罪なら、議員活動に大変な障害となる。党派にかかわらず議員全体の問題だ」と訴えた。
3万部の国会報告を選挙区内で定期的に配布する民主党の河村たかし衆院議員は「オートロックの外側の集合ポストで配っただけなら、違法性はないと言える。市民への報告は議会での発言と並ぶ重要な議員活動だ。議員の考えを広く伝えるのはまさに表現の自由に当たる」と指摘する。
表現の自由に詳しい奥平康弘東京大名誉教授(憲法学)は「立川でのビラ配布を巡る有罪判決の影響を懸念していたさなかに国分寺の件が起こった。表現の自由として最も保護されるべきものの一つは、今回のような政治的な文書の配布。住居侵入罪で取り締まるべき害悪は何かを考え直すべきだ」と批判する。
◇司法判断なく−−集合ポストにビラ
ビラ配布を巡っては、東京都立川市の防衛庁(当時)官舎で04年1月に自衛隊イラク派遣反対のビラを各戸の玄関ドア新聞受けに投函した市民団体メンバー3人が後に住居侵入罪で逮捕・起訴された。
1審の東京地裁八王子支部は無罪を言い渡したが、東京高裁では有罪。今年4月に最高裁で有罪が確定した。
最高裁判決は「表現の自由も無制限ではなく、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受ける」と指摘したうえで、「管理者の意思に反して官舎に立ち入るのは、住民の私生活の平穏を害する」と結論づけた。ただし今回の国分寺市のマンションのように、オートロック扉の外にある共有スペースの集合ポストにビラを投函した場合の司法判断は示されていない。
◇まさか犯罪扱いとは−−書類送検された、幸野統市議
新聞やテレビは通常、市議会の詳細な議論まで報道しないから、ビラは議論の経過を簡単に伝えられる手段の一つだ。住民税を払っている市民にとって、市議会は身近な国会に当たる。ビラは議題や各議員の主張を知るために必要不可欠な情報ではないか。
管理組合が一律にビラ配布を禁止し、それが犯罪になるのなら、議員としての表現活動だけでなく、市民の知る権利も大きく制限されてしまう。しかも今回の配布場所はオートロックの外側の誰でも立ち入れる集合ポストだった。「関係者以外立ち入り禁止」という張り紙は目に入っていた。しかし、市民に市議会での活動を報告する立場にあり、自分自身は「関係者」だと考えている。
もちろん、住人にはビラを受け取らない自由、読まない自由もある。だから住人に強くやめろと言われたら、「はいやめます」と答え、そこで終わる話だ。警察に行った時も事情を説明しているという認識で、まさか犯罪として扱われるとは思ってもみなかった。
◇自由にも限度がある−−被害届を出した、新海栄一市議
表現の自由にも限度がある。幸野市議は「立ち入り禁止」の張り紙を認識しており、住居侵入に当たるだろう。被害届を出すことで、自身や同僚議員の活動を制限すると思ったが、住人の強い希望を受け、管理責任者としてやむなく提出した。
同じ議員の立場からすると、立ち入り禁止とあっても、気にはしながら配ってしまうのは分かる。このマンションにも自民党の都議や国会議員のチラシは入っている。だが、捕まったらその人の責任だ。立ち入り禁止は住人の総意で決めたことで、市民が嫌がることを議員がするわけにはいかない。幸野市議は配るのは当然の権利だという姿勢を改めてほしい。
さらに今回のビラの内容も議会報告というより、党の意見が多いような気がする。それでは住民の理解を得られないのではないか。今後、私の活動報告のビラ配りに対する市民の目は厳しくなるだろう。これまでもトラブルを考え集合住宅には配っていないが、その決まりを徹底する。
==============
◆ビラ配りを巡る最近の主な事件◆
04年 2月 東京都立川市の防衛庁官舎で自衛隊イラク派遣反対のビラを配った男女3人を住居侵入容疑で逮捕
3月 東京都中央区のマンションなどに共産党機関紙「しんぶん赤旗号外」を配布した社会保険庁職員を国家公務員法(政治的行為の制限)違反容疑で逮捕
12月 立川市の事件で東京地裁八王子支部が無罪判決▽東京都葛飾区のマンションで共産党のビラを配った僧侶を住居侵入容疑で逮捕
05年 3月 都立高2校で日の丸・君が代強制反対のビラを配った男性計3人を建造物侵入容疑で逮捕
9月 東京都世田谷区の警視庁職員官舎で「しんぶん赤旗号外」を配った厚生労働省課長補佐を住居侵入容疑で逮捕(後に起訴猶予。追送検の国家公務員法違反罪で在宅起訴)
10月 沖縄・米軍嘉手納基地前で憲法9条に関するビラを配った僧侶を警察官への公務執行妨害容疑で逮捕(後に起訴猶予)
12月 立川市の事件で東京高裁が逆転有罪判決。「ビラによる政治的意見の表明が保障されるとしても、管理者の意思に反して立ち入ってよいということにはならない」と指摘
06年 6月 東京地裁が社保庁職員に有罪判決(控訴)
8月 葛飾区の事件で東京地裁が無罪判決
07年12月 東京高裁が葛飾区の事件で逆転の有罪判決。「住民は住居の平穏を守るため部外者の立ち入りを禁止できる」と指摘
08年 4月 立川市の事件で最高裁第2小法廷が男女3人の上告棄却。「表現の自由は公共の福祉のために制限を受ける」と述べた
毎日新聞 2008年7月21日 東京朝刊
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK52掲示板
フォローアップ: