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動きはじめた共謀罪法案成立に向けた動き (ビートニクス)
http://www.asyura2.com/08/senkyo51/msg/997.html
投稿者 ヤマボウシ 日時 2008 年 7 月 21 日 03:41:47: WlgZY.vL1Urv.
 

法と常識の狭間で考えよう(ビートニクス)
http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2008/07/post_1f68.html

動きはじめた共謀罪法案成立に向けた動き

 共謀罪法案のことは、世間ではほとんどもう終わったものと認識されていると思われるが、今年の通常国会においても、廃案になったのではなく、継続審議となっている。

 東京都内でG8司法・内務大臣会議が2008年6月11日から13日まで開催され、その総括宣言の「国際組織犯罪に対抗するユニバーサル・ネットワークの構築」の項目の中で、「国際組織犯罪及び国際テロは、全世界的な取組を必要とする全世界的な課題である。G8のみならず、世界中の国が、これらとより効果的に取り組むための普遍的な法的文書――すなわち国際組織犯罪防止条約及び付属議定書、国連腐敗防止条約、13のテロ防止関連条約及び付属議定書、サイバー犯罪条約――を批准し、全面的に実施することが不可欠である。我々は、これらの批准及び実施を促進する上で、G8のリーダーシップが重要であることを、改めて確認する。」との内容が盛り込まれている。議長国である日本が、共謀罪が創設できないために、国際組織犯罪防止条約の批准が遅れていることが改めて浮き彫りになったと言える。

 また、その直後に行われた鳩山法務大臣とアメリカのムケージー司法長官との会談においては、鳩山法務大臣から、共謀罪法案に関連して、「世界的な犯罪防止ネットワークに穴をあけている状態で申し訳ない。早く責任を果たしたい」と述べて法案の成立に全力をあげる考えを示したと報道されている。

 このことは、6月17日の閣議後の鳩山法務大臣の会見においても述べられ、「G8司法・内務大臣会議において、国内法が整備されていないことについて、『早く批准をしてください。』ということが、イタリアあるいはアメリカから要請をされたわけですが、それに対し『早期に批准できるように全力で頑張ります。』という努力の誓いをした」、「党にもお願いをして次期臨時国会で国内法が成立するように努力をします」旨を述べている。

 元々、鳩山法務大臣は、法務大臣就任直後から、サミットまでに共謀罪法案の成立を目指す意向を表明していたが、それが実現しなかった。そこで、特にアメリカからハッパを掛けられて、早期に共謀罪法案を成立させ国際組織犯罪防止条約を批准することを約束させられたということであろう。

 ところで、現在、衆議院は与党が2/3の議席を確保しているのに対して、参議院は野党が多数の議席を獲得しており、いわゆる「衆参ねじれ現象」となっている。当初は、そのために、野党が反対する法律は全く成立しないのではないかと考えられていたが、今年の通常国会においては、必ずしもそうならなかった。

 むしろ、与党と民主党が、密室において「修正協議」を行い、民主党が出した修正案を、与党が「丸呑み」する形で、ほとんど国会の中で議論もなく、極めて短期間で法案が成立するという事態が生じた。その典型例は、少年法改正案であった。

 今年の通常国会に提出された少年法改正案は、少年審判を犯罪被害者等に傍聴させるという内容を含んでおり、民主党が政府原案に反対していたことから、通常国会では法案は成立しないと予想されていた。

 ところが、衆議院の法務委員会において、与党と民主党との間で修正協議が行われ、民主党が提案した修正案を与党が「丸呑み」することで合意ができた後、衆議院でも参議院でも、非常に短い質疑が行われるだけで、あっさりと通常国会の会期中に少年法改正案が成立してしまった。

 今回の少年法改正案は、審判非公開の原則の例外を認めようとするものであり、少年審判のあり方を根本的に変質させてしまうという危惧がある中で、予想外の展開で、改正案が成立してしまったのである。もちろん、民主党の修正案により、政府原案よりは多少は改善された内容の法案が成立したと言えない訳ではないが、少年審判のあり方を変えて良いのかという根本的な議論が国会の中で尽くされることがなく、あっさりと問題の多かった法案が成立してしまったことは否定できない。

 そして、この少年法改正案の成立経過は、今後の法案の行方を占う上でも決して無視できない点を含んでいると考えられる。
 すなわち、与党と民主党が修正協議を行って、民主党から修正案を出せば、与党はそれを「丸呑み」してでも、法案を成立させようとするという動きを必ず行うということである。

 実は、共謀罪法案については、2006年の通常国会の終盤において、自民党が、民主党の修正案を「丸呑み」して成立させようとしたことがあった。
 この時には、たまたま、当時の自民党の国対委員長が、「とりあえず、共謀罪法案を成立させた上で、後で、その内容では、条約を批准できないということで、改正すればいい」という本音を明らかにしてしまい、民主党としても、「偽装丸呑み」であるとして、この動きに抵抗したことから、共謀罪法案が成立しなかったことがあった。ただ、この時も、あわや共謀罪法案成立という瀬戸際まで行ったことは確かであった。

 その後、日弁連が、共謀罪を創設しなくても、国際組織犯罪防止条約を批准することができると主張し、民主党もこの見解を受け入れて、共謀罪については民主党は徹底的に反対し、対案(修正案)も出さないという方針をとってきている。

 ところが、これに対抗する動きも見られる。警察庁の方針や理論的な研究成果が発表される月刊誌「警察學論集」の6月号に、古谷修一・早稲田大学大学院法務研究科教授による「国際組織犯罪防止条約と共謀罪の立法化−国際法の観点から−」という論文が掲載された(同書143頁以下)。

 ここでは、「特定の政策判断を念頭に置いて、法的論点を曲げて理解することは避けなければならない。」と述べた上で(これは、おそらく日弁連や民主党の見解を批判しているものと考えられる)、次のように結論付けている。

 「国際組織犯罪防止条約を批准する目的で国内法の整備を行うのである限り、共謀罪を新設することは必要である。その範囲を条約が許容する限りの最小限に留めるということであれば、共謀罪の成立について顕示行為の存在を必要とし、かつ組織的な犯罪集団の関与を要件とすることに尽きる。純粋に国内的な犯罪について共謀罪を認めない立法は条約義務と抵触すると考えられ、これにかかわる第34条2項に対する留保も条約の趣旨および目的と両立しない。」(同161〜162頁)
 この論文は、日弁連や民主党の見解を真っ向から否定し、論戦を挑む内容となっている。この時期に、この論文が「警察學論集」に掲載された意味を、政治的に捉えれば、秋の臨時国会に向けて、民主党に共謀罪についての修正案を出させるための手段と見ることができるように思われる。

 そして、鳩山法務大臣が、改めて、共謀罪法案について、秋の臨時国会での成立を目指すことを明言していることの意味を噛み締める必要がある。サミットまでの成立を果たせず、議長国でありながら、国際組織犯罪防止条約への批准ができていない状況について「恥」をかかされた鳩山法務大臣は、今度こそは、並々ならぬ決意を披瀝したものと見るべきであろう。そして、それは、決して、鳩山法務大臣の個人の見解ではなく、法務省という役所としての決意でもあると言うべきである。
 なお、鳩山法務大臣は、当初、内閣改造があれば、閣外に去ると見られていたが、最近の死刑の連続執行によって内閣支持率の向上の貢献しているとして、内閣改造があっても留任する可能性が高いと言われている。

 そうだとすると、当初は8月22日に召集されると見られていた秋の臨時国会であるが、召集時期が9月中旬以降にずれ込む可能性が出てきているが、共謀罪法案をめぐる動きが秋の臨時国会において見られることは確実であると考えられる。

 ただ、これまでと国会情勢と異なるのは、「密室」での与党と民主党の修正協議の中で、民主党が、一旦、修正案を出すようなことがあると、与党はこれを「丸呑み」してでも、共謀罪法案を成立させようと必死になることが強く予想される点である。

 この方法の最大のメリットは、与党としては、衆議院の法務委員会において民主党も巻き込んで賛成を得られれば、野党が多数を占める参議院においても、民主党は共謀罪法案に反対することが困難になるという点にあり、野党を「分断」できるという点にある。それを分かった上で、それでも、民主党がそのようなやり方を受け入れるのだとしたら、民主党のそのようなやり方に対しては、市民としては反対の声を挙げる必要がある。

 いずれにしても、共謀罪法案は、まだ死んでなどいないし(これまで「死んだふり」をしていただけである)、むしろ、秋の臨時国会に向けて、着実に動き始めていると見なければならない。「小さく生んで大きく育てる」ことを見越した上で、民主党の修正案を受けて、最小限度の「共謀罪」(秋に出てくる頃には、評判の悪い「共謀罪」という名前とは異なるネーミングになっている可能性が高い)が提案され、早期に可決・成立する可能性がある。

 私たちは、その動きを冷静に予想した上で、共謀罪法案が成立させることがないように、今から反対運動を構築しておかなければならない。

 

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