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2008年07月13日
自衛隊のサマワ派遣は憲法9条違反ではなかったのか
陸上自衛隊がイラクのサマワから撤収して2年が経つ。
今では国民のほとんどが忘れ去っている。
しかし、その記憶をよみがえらせるかのように、13日の東京新聞が一面でスクープを掲載した。
自衛隊統合幕僚監部から独自に入手した資料によれば、陸自への攻撃が13回あり、22発が宿営地およびその近辺に着弾したという。予想以上の危機的状況だったという。
果たしてサマワは、政府が主張していたような「非戦闘地域」であったのか。
ここで思い出さなければばらばいのが、4月17日に名古屋高裁で下された判決文である。
この判決は、自衛隊のイラク派兵によって平和生存権を侵害されたとして損害賠償を国に求め、イラク派兵の即時差止めを要求した訴訟である。
裁判所の判決は、原告側に損害賠償請求を認めるだけの十分な理由はないと却下し、国が勝訴させた判決であった。
しかし、その結論を導き出す判決文の中で、首都バクダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」にあたり、そのバクダッドへ多国籍軍への空輸活動を行なう事は、多国籍軍の武力行使と一体化した行動であるとして、専守防衛を定めている憲法9条への明白な違反である、としたのである。
この判決の画期的なところは、政府の命令によって行なわれた自衛隊の行動が憲法9条違反であると断じたところである。戦後始めて自衛隊の行動が違憲とされた。
この判決のもっとも重要なところは、「憲法解釈において政府と同じ立場をとり、さらに自衛隊派遣の直接の根拠となっているイラク特措法が合憲(つまり憲法9条の趣旨から見て認められる)であるとの判断に立ったとしても、バクダッドへの空輸は違憲である、と考えざるを得ないとしたところにある。
つまり立場を超えて、誰が見ても違憲である、としたのだ。
その背景には、もちろんイラク情勢の悪化がある。もし米国のイラク攻撃が、一時的な混乱の後に、あっさり鎮圧されていたならば、このような判決はありえなかった。
イラク派兵差止め訴訟も続かなかった。
しかし、イラク情勢は誰の目にも戦争状況が悪化し、しかもひどくなっている。
そして原告側が提出した数々の自衛隊空輸の現実を示す資料は、いやしくも裁判官が事実から目をそらさずに「法の支配」を誠実に実現しようとするならば、もはや違憲以外の判断を下せない状況であることを示したのだ。
同じ事は、このサマワでの陸自の活動に関しても言えるのではないか。
米国自身が認めているように今日の戦争の最大の敵は国家ではなく武装抵抗組織(テロ)である。
陸自に対して行なわれた13回の攻撃が陸自の活動に反発した武装抵抗であることは明らかである。
宿営地に迫撃弾やロケット弾が着弾した事が、攻撃を受けたという事ではないと言い張る事は詭弁でしかない。裁判官がそのような判断を下せるはずはない。
東京新聞が入手したという統合幕僚監部の資料を基に、平和を願う人々の間から、あらたな違憲訴訟が起きるかもしれない。
重装備したサマワへ自衛隊を派遣した事が、憲法9条はおろかイラク特措法にも違反していたのではないか、という違憲訴訟が起きるかもしれない。
「どこが戦闘地域でどこが非戦闘地域などと、自分にわかるはずはない」などという政治家の粗雑な発言とは異なり、司法の場において、どの裁判官が「サマワが非戦闘地域である」などと、と言い切れるのだろう。
8月下旬から始まる臨時国会の最大の政治課題は自衛隊のアフガン派遣だと取りざたされている。
その議論を深めるためにも、野党議員はまず、この東京新聞のスクープを活かし、自衛隊サマワ派遣に絞っての違憲性を追及すべきである。
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