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http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20080708ddm002070041000c.html
発信箱:すり替え=玉木研二
わが国初めてと鳴り物入りで登場した教育振興基本計画。投資や教員増に数値目標を掲げた文部科学省が財務省と一戦を交え、あえなく敗退した。数値を抜けば、あてもなく壮大な決意表明を聞かされているようなものだ。
だが文科省幹部は「完敗とは心外」と言う。「数値は外れても精神は生きている」
ここは冷徹に、なぜ財務省や内閣を説得できなかったか敗因を分析し、戦略を立て直した方がいい。「精神は……」と言っていては敗北を直視しないことになる。
東京の戦災を逃れ青森に疎開した太宰治が、敗戦直後に書いた手紙によると、村の有力者が敗戦に気をもむ者にこう言った。「何も心配ない。無条件降伏ではないか。よくもしかし、無条件というところまでこぎつけたものだ」
笑いを誘う逸話だが、待てよ、と思う。本当はこの有力者は無条件降伏の意味を知っていたが、内心あえて逆転させ、自分や村民を励ましたのではないか。戦後、日本人が戦争や敗戦をどこかに忘れたように復興にまい進できたのも、内心こんなすり替えをしていたのかもしれない。
北海道洞爺湖畔のブッシュ米大統領に申し上げたい。イラク戦とその戦後政策の大きなつまずきについて、この際率直に世界の領袖に語られてはいかがか。教訓に、と。
いや、日本では語りたくないかもしれない。イラク占領計画策定では日本占領の大成功経験も参考にされたといわれている。日本人は占領政策に極めて協力的で、武装抵抗やゲリラ戦は全く起きなかった。「お手本」としてはまるで的外れだったのだ……。(論説室)
毎日新聞 2008年7月8日 東京朝刊
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