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http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080623dde012040053000c.html
霞が関の官僚が深夜帰宅でタクシー運転手から現金やビールなどの金品の提供を受けていた「居酒屋タクシー」の実態を暴いた民主党の長妻昭衆院議員(48)。消えた年金問題追及では「ミスター年金」と呼ばれ、調査能力には定評がある。霞が関の「情報の壁」を突破する秘訣は何か。長妻議員に会いに行った。【山寺香】
◇「官僚はうそをつかない ただし自ら言わない 具体的追及が必要」
国会議事堂裏手の衆院第2議員会館。今や与党と官僚にとって最も危険な男、「平成の爆弾男」の観がある長妻氏の事務所を訪ねた。封筒や段ボールに入った資料が床や棚に積み上がる。本棚には「年金」「主意書」などと書かれた分厚いファイルがずらり。
テレビニュースでは、国会質疑で首相や大臣を相手に声を荒らげて激しく追及する場面が目立つが、実際に会ってみると、語り口はおだやかで、落ち着いた物腰だ。
「居酒屋タクシー」問題の追及のきっかけは?
「霞が関で、官僚がタクシー運転手から料金の1割のキックバックやビールの提供を受けている、という告発のファクスが5月下旬に私のところに届きました。全省庁に調査を依頼したところ、一部の省庁がビールの提供を認めましたが、現金や金券は否定。そのうちに、官僚2人を名指しした内部の人からとみられるメールが届きました。その官僚に私が直接電話をしたところ、商品券をもらったことを認めたんです」
不正を暴いた経過はあっけないほど簡単に聞こえるが、背後には、長妻マジックが隠されている。
◇粘り腰
「私の議員活動の約半分は、官僚との間での『資料を出せ』『出さない』の押し問答。年金問題の時も、官僚は『問題ない』『調査はしない』の一点張りでした。市販されている白書に毛が生えたような内容のものでさえもったいぶってなかなか出してこない。資料提出のハードルを上げて、簡単に情報提供を求めないよう議員を調教する−−それができる人が、官僚の世界では“優秀”と評価される。だから、重要な情報はいくら時間がかかっても粘って出させる。根比べです」
その粘り強さを示すのが「質問主意書」の数の多さだ。提出回数は00年の初当選以来約250回。質問項目の多さも霞が関では評判だ。
質問主意書は、国会議員が内閣に質問する時に提出するものだ。国会法で規定された制度で、内閣は質問主意書を受け取った日から原則7日以内に答弁をしなければならない。
「民主党の菅直人代表代行や枝野幸男衆院議員が、薬害エイズ問題の時に活用しているのを見て、質問主意書を知りました。野党議員が官僚を追及するための最大の武器を使わない手はありませんよ」
長妻氏の活躍もあり、最近は利用する野党議員が増えてきたといわれている。
◇官僚の習性
しかし、質問主意書を出せば情報がすぐ手に入るほど甘くはない。官僚は文書作りのプロ、あの手この手で質問をかわし、核心を外す。これまで利用する議員が少なかったのはそのためだ。
長妻氏は官僚の習性について「基本的にうそはつかない。ただし、自分から積極的に言ってはこない。『何かありますか』と聞いても何も出てこないから、問題点を見付けて『これはどうだ』と一つ一つ、具体的に追及することが必要です」と語る。さらに、「イエス」か「ノー」でしか答えられない質問にするなど工夫も凝らす。長妻氏の質問項目が増えるわけである。
「官僚は野党議員のことを完全にバカにしていますからね。でもバカにできない一瞬がある。それが国会質疑です。キャリア官僚にとっては、国会で大臣に恥をかかせることは自分の出世に傷がつくことになる。5000万件の宙に浮いた年金問題で、65歳以上の未統合の記録件数について回答を求めた時は、いくらたっても数字を出してこなかったので『明日までに出さなければ国会を止めて大臣を徹底攻撃する』と言ったんです。そうしたらその夜、記録件数を出してきた」
根比べから経験的に悟った官僚の習性を徹底的に利用する、というわけだ。
◇集まる告発
政治評論家の森田実氏は「最近の国会議員には、基本的に調査力はない」と喝破する。「長期政権で役人との一体化が進み、与党議員はろくに調査しない。近年、野党の民主党でさえ調査力がないのは、官僚出身議員の増加が一因だろう。資金集めパーティーのチケット購入など、どうしても出身省庁との関係が強くなるし、質問主意書を出すにしても、自分も資料準備の重労働に苦しんだ経験があるから遠慮してしまう」と解説。長妻氏については「経済誌記者の経験があり、自分で取材し裏付けを取るなど丹念に調査するから勇み足がない。実務的にきっちりしているから、内部告発が集まってくる。年金問題に着目したのも、高齢社会の日本で最重要課題だと見抜いていた」と褒める。
調査力といえば、ロッキードやリクルートの疑惑を暴き「国会の爆弾男」と呼ばれた楢崎弥之助元衆院議員(無所属、96年引退)や、厚相として薬害エイズ問題の実態を解明した菅氏が思い浮かぶ。
その菅氏も長妻氏について「ここ2年くらいでは、民主党で最も能力を発揮し、良い仕事をしている」と評価。一方で「あの楢崎さんでさえ、83年に自衛隊内でクーデター計画があったという偽の告発を見抜けず失敗した。『爆弾男』は褒め言葉だが、とんでもないことをする人物という負の意味もある。党内で失敗も含めたノウハウを伝えていく必要がある」と語る。
ライブドア事件に関連した「偽メール事件」で、当時の前原誠司民主党代表らが辞任に追い込まれたのは記憶に新しい。くれぐれも、ミスリードによる自爆は厳禁、ということか。
疑惑を暴き、脚光を浴びれば誰でも舞い上がる。一方、官僚のガードは堅くなる。
「政治家はおだてれば世間の感覚からずれて自滅する。『政治家殺すにゃ刃物はいらぬ。先生、先生とおだてりゃいい』と言ってね。どんな議員でも程度の差こそあれ、この罠(わな)から逃れることはできません。いつも、この言葉を肝に銘じている」と長妻氏。この言葉を忘れず、行政の無駄を追及する庶民の味方であってほしいものだ。
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毎日新聞 2008年6月23日 東京夕刊
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