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http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20080620k0000m070150000c.html
記者の目:治安改善強調するアフガン政府=福原直樹
「国民は我々を支持している。復興は本物だ」。そう語る政府や国際部隊の幹部。その一方で、市民は生活苦や治安悪化、そして政府の腐敗を嘆き続ける……。今春アフガニスタンを取材して感じたのは、こんな当局と市民の意識のズレだった。日本政府は今月、復興支援策として陸上自衛隊派遣の可能性を探るため調査団を現地に派遣し、パリの復興支援会合では5億5000万ドルの支援を提示した。だが、「政府や国際社会は何もしてくれない」という市民の生の声に耳を傾けない限り、アフガンの混とんは今後も続くと思う。
アフガンでは、01年の米国同時多発テロを機に、北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(約40カ国、4万人)などが展開。治安維持と復興に当たる。首都カブールでその国際部隊のパトロールに同行したが、その時乗った装甲車は、テロから身を守る万全の態勢を整えていた。
パトロール中、装甲車は妨害電波を発信し続けた。旧支配勢力・タリバンが路肩にしかけた、多数の死者を出すリモコン爆弾を無力化するためだ。装甲車の兵士には自爆テロを防ぐため、近接車に威嚇発砲する権限もあったし、部隊が新たに導入した車両は、直下の地雷爆発にも耐える堅固な構造だった。
これらが、最近のアフガンの情勢悪化を反映するのは明らかだった。
タリバンの攻勢で、昨年の国際部隊の死者は、約230人と前年(約190人)を抜き、過去最多になった。カブールでも自爆攻撃が続き、3月には米装甲車が狙われ、40人以上が死傷した。リモコン爆弾の攻撃も続く。治安悪化で各国の足並みも乱れ、米国の兵力増派の要請にも、欧州各国は冷たいままだ。
だが、国際部隊の本部では、幹部が「タリバンに壊滅的打撃を与えた」と私に強調した。タリバンは組織的な戦闘能力を失いつつある。昨年夏から秋のタリバンとの戦闘は05年同期に比べ、最大5倍の月1000件に増えたが、これは国際部隊が掃討作戦を強化したためだ。治安悪化はない……。そう言うのだ。
「市民との友好関係も、構築できた」
別の幹部によると昨年の世論調査では、国際部隊を支持する国民は全体の約70%。治安維持や人道援助活動が高く評価された。また半数近くが「アフガンは正しい方向に進んでいる」と答え、タリバン支持は5%だけだったともいう。こうした楽観論は、アフガン政府にも共通する。国防省高官は私に「タリバンは士気を喪失している」と主張したし、内務省高官は「治安は改善した」と語った。
だが町で聞いた市民の話は、大きく違っていた。
カブールの市場を数日、歩いた。肉や野菜を売る粗末な屋台が続く中、店主ら31人に話を聞くと、一様に訴えたのが生活苦だった。「物価が半年前に比べ、2倍になった」というのだ。隣国パキスタンが、相次ぐ国内の事件で国境を閉鎖し、同国頼みの米、小麦などの供給が滞るからだ。
「物価高で1カ月、肉を食べていない」と青果商(55)。「1日の稼ぎは約200円。1家8人でパンと茶しか買えない」。彼らの批判は、現カルザイ政権にも向かった。「先進国のアフガン援助資金はどこに消えたのか。我々の生活は苦しいままだ」。そう雑穀商(44)が話した。
カブールの町外れ。トラックを整備中の運送業者(35)がいた。タリバンの攻勢が続く南部にタイヤを定期的に運ぶ、という。彼が訴えたのは、当局の腐敗だった。南部の幹線道路にはテロ監視の検問所が続く。だが、それらを通るたびに100〜400円程度のわいろを係官に要求される、というのだ。
「わいろを断ると殴られる。嫌がらせで積み荷を全部路上に放り出されたこともある」。彼の話は信ぴょう性が高かった。私自身、現地を車で走っていて、わいろを求める当局者を見たことが何度もあるからだ。
そして私が危惧(きぐ)したのはこれらの不満が、タリバン時代を懐かしむ一方、国際部隊を否定する見方に結びつくことだった。「タリバン時代はテロも腐敗もなく、モノも安かった」「国際部隊がいても治安は悪化する。彼らは必要ない」。こんな意見を、私は至る所で聞いた。
無論、私は復興に向けた国際社会の努力を否定はしない。国際部隊の兵士は命を賭して働いていたし、アフガンの町並みには復興の兆しも見える。だが当局と市民の間にある意識の「乖離(かいり)」に乗じ、アフガンでテロが増長する危険性は、非常に高いと思うのだ。(外信部)
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