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http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080619dde012040006000c.html
特集ワイド:どうなる!?よど号犯「引き渡し」 若林容疑者、なお革命家の意地
◇「平常通り」切迫感まるでなし−−拉致容疑での逮捕状は不当であり、無効です。
あしたのジョーたちは帰国するのか? 北朝鮮は日本人拉致問題の再調査とあわせ、日航機「よど号」乗っ取り犯の引き渡しに協力する、と約束した。だが、ことはそうたやすく運びそうにない。なんでも白髪の革命家の意地があるらしい。【鈴木琢磨】
◇仮に強制送還になったら、あれこれ弁解せず“成熟したジョー”として帰ってこい−−元赤軍派議長
久しぶりに声を聞いた。平壌にいるよど号メンバー、若林盛亮容疑者(61)である。私と同じ滋賀県人、高校の先輩である。全共闘世代にはついていけないなあ、と思いつつ、かの地で酒をくみ交わし、議論したこともある。追放に備え、段ボール箱に荷物をまとめているのでは? 国際電話すると、あっけらかんとした答えが返ってきたのだった。
「身柄が拘束されてるんじゃないかとか、通告があったんじゃないかなんて言われてるそうだけど、まったく平常通り。この間の土曜日は学習と総括をし、午後はバレーボールで汗流して、ビールで一杯。総括? 原稿が締め切りに間に合わなかったとか。平穏な日常を過ごしておりますよ。さすが還暦過ぎてプラスワン、年は年やから、サッカーはちょっとね。ハハハ」
まるで切迫感がない。あきれるほど。核をめぐる米朝の動きをにらんで、日朝もそれぞれの思惑を胸に交渉のテーブルについた。よど号犯引き渡しは、米国によるテロ支援国家指定解除を求める北朝鮮がカードを切ったとも解釈されている。拉致問題は解決済みの立場を変更し、再調査に応じることも一定の評価をし、日本政府は制裁緩和を発表した。「拉致容疑者、帰国へ」と1面トップで大見出しを打った新聞もあった。
「<引き渡し>の文言が波紋を呼んでいるみたいで。あくまで日本政府式発表なんですよ。朝鮮側は、そう言ってない」。事実、朝鮮中央通信は、こう報じている。<朝鮮民主主義人民共和国はよど号関係者問題の解決のために協力する用意を表明する>。<引き渡し>の文言はどこにもない。「われわれは、よど号問題の政治利用、敵視に利用されてきたものを清算して帰る。拉致容疑での逮捕状は不当であり、無効です。よど号事件そのものについては実際、やっているし、司法で解決する。そこまでいちいちうるさくは言わんですよ」
つまり、拉致については一切、認めないままである。自ら平壌を去り、洗いざらい語る覚悟もできていない。そもそも、故金日成主席が彼らに会ったとき「金の卵だ」と喜び、朝鮮労働党による手厚い庇護(ひご)がなされはじめた。日本の警察の役目はしない、とも断言している。のちに結婚したのも「革命は代を継いで」の教示ゆえ。金正日総書記が米朝関係の改善のため、父の遺訓をほごにして彼らを追放できるのか、疑問が残る。
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東京都清瀬市のファミリーレストラン、その片隅で、うまそうに冷やし中華をすすっているのは元赤軍派議長の塩見孝也氏(67)である。02年の日朝首脳会談で、金総書記が拉致を認めたあと、雑誌でメンバーの拉致関与をにおわせる発言をしたことから「決別」状態らしい。「いや、疎遠になった時期もあるけど、一貫して連帯してきた。いまこそ小異を残して大同につこうと思ってる。それに(発言は)物証もなく、記憶に基づくものなのでこだわらない。彼らもこだわらないことだ」
ドリンクバーでアイスコーヒーをおかわりした。「再調査なんてリップサービス、福田政権が朝鮮側ににじり寄ったんだ。国内をまとめるための願望を朝鮮側が受け入れたかのように演出しているだけ」。そう言って、平壌にいる若林容疑者らを気にするのだった。「帰らないほうがいいんじゃないか。時機を失している。朝鮮側も遺訓を守るべきだ。よど号グループは革命家として日本政府代表と協議のテーブルにつく、との従来の基本を崩すな。仮に強制送還になったら、あれこれ弁解じみたことは言わず、“成熟したジョー”として帰ってこい。そして、よみがえり、反転攻勢して、戦いはじめている日本民衆と連帯し、不屈に闘う、と宣言してほしいね」
いやはや、獄中闘争20年の面目躍如たる言葉にのけぞっていると、ところでな、と自身の生活を語りだした。なんとシルバー人材センターの紹介で、駅前の駐車場の管理人をはじめたという。闘士の顔が穏やかになった。「時給1000円。いまは班の副班長をやってるよ。塩見もおちぶれたか、とか的外れなことを言うやつもいるけど、言わせとけ。フリーターやニートらプレカリアートとの連帯なんだ。彼らと同じ境遇に身をおいて、僕はより思想的に前進し、本物になったと思っている。息子は、おやじがまともに働いているのを見るのは初めてだと笑ってるけどね」
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再び平壌との国際電話。監視下で自由にものが言えないのかもしれないが、故郷の話になると、声が弾んだ。「うちの姉が、帰国した子供たちを琵琶湖周遊に連れて行ってくれて、そのビデオを見たんですよ。ミシガンって遊覧船だったですか。大津も変わったなあって感じました。街の雰囲気がね。でも、琵琶湖は変わらないなあ。まあ、61にもなれば、そりゃ、人生、どう区切りをつけるかを考えますよ。人生、きれいに飾らんといかんよなあって。そうじゃないと、子供たちにも顔向けできないでしょ。ヘンな背中を見せられないですよ」
そのふるさとで、若林容疑者の高校の同級生、堀井孝一郎さん(61)が帰国の情報に関心を寄せていた。現役の税理士である。学生時代、京都の祇園会館でビートルズの映画を日に6回も見せられた思い出がある。「平壌から手紙が来てたけど、もう向こうでの生活が長いしな。こっちも白髪で、薄くなったし。昔の若ちゃんとは変わってるよ。でも、帰ってきたら、会う。友達やったしな。もちろん、服役すんでから。さあ、会えるのは70歳かなあ、どやろ」
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ファクス03・3212・0279
毎日新聞 2008年6月19日 東京夕刊
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