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「経済コラムマガジン08/6/16(531号)
・原油価格とファンド
・二つのファンド
原油価格の上昇が止まらない。NY原油先物価格は140ドルに迫っている。勢いだけを見ていると、150ドルや200ドルになるという一部投資機関のレポートの予想が、現実味を帯びてきたように見える。しかし瞬間的に150ドルはあるかもしれないが、さすがに200ドルはないと筆者は思っている。
原油価格の決定権が、メジャーやOPECの手を離れ、ニューヨークの原油先物市場に移った。この原油先物市場に投機マネーが流入している。金余りを背景に、原油価格がまるで仕手株のように高騰している。株式が一旦仕手化すると、どこまで上がるか合理的に予想することは困難になる。同様の雰囲気で原油価格が150ドルや200ドルなると言われているのである。しかし可能性を否定しないが、これらに合理的な根拠があるわけではない。
本誌は何回か原油価格の動向を予想してきた。それらをまとめたのが07/11/26(第506号)「原油価格に見るバブル」http://www.adpweb.com/eco/eco506.htmlと07/12/3(第507号)「「金余り」と商品相場」http://www.adpweb.com/eco/eco507.htmlである。本誌は60ドルから70ドルの原油価格が適正(米ドルの価値によって変動するが)と唱えてきた。
筆者から見れば、今日の130ドル台の原油価格は明らかに高くなり過ぎである。いずれ大幅な下落場面があると思われる。しかし原油市場が仕手化しているため、誰もその調整幅と時期をはっきりとは言えない。本誌はそれを来週号で試みようと思う。
ただ下落するきっかけは色々と考えられる。その一つが当局の原油先物市場への関与である。5月の末、135ドルまで上がっていたNY原油先物価格が一時的に122ドルまで急落した。これは5月29日に米国商品先物取引委員会(CFTC)が市場の監視を強化すると伝えられことが影響したと考えられる。
当然、金融当局による金融引締めも効果があると考えられる。しかし米政府にとって物価の上昇より、金融不安や景気後退の方がずっと深刻な問題である。したがって原油価格が高騰したからといって、FRBが簡単に利上げするとは考えられない(一方、欧州中銀は昔からちょっとおかしいので利上げする可能性はある)。米国政府とFRBはせいぜい口先介入で米ドル安を牽制する程度であろう。
次に今週の本題である原油先物市場に流入している資金について述べる。原油価格高騰を演出しているのは、商品ファンドとヘッジファンドの資金である。商品ファンドには、年金、政府系ファンド、個人投資家などの資金が流れている。日本の投資家もかなり出資している模様である。
原油などの商品の価格だけが高くなっている今日、商品ファンドには金が集まりやすい。おそらくこの種の金は、ちょっと前までは高騰を続けていた新興国の株式市場に流れていたのであろう。したがって商品ファンドにまだ金が集まる限り、商品ファンドは商品の先物を買い続けることになる。
たしかにこれまでは幸運にも商品価格が上昇している。しかし新興国の株価が今日暴落しているように、いずれ商品価格も暴落するものと筆者は見ている。つまり商品価格の上昇初期に投資した商品ファンドだけが大きな利益を手にするのである。商品市場は何かマルチ商法に似てきた。とにかくまだバブルが崩壊していないのは、原油先物市場を含めたこの商品市場とユーロだけである。
・原油価格と株価
筆者は、もう一つの資金であるヘッジファンドの動きに注目している。最近、米国の株価とNY原油先物価格の逆相関関係が強まっている。米国の利下げが続くと見らていた頃には、一時的にこの逆相関関係が弱まった。石油会社の業績のマイナス要因になるとして、原油価格の下落がNYダウを押し下げたことさえあった。しかし今日、元の逆相関関係に戻ったのである。時間的推移でも両者のこの逆相関関係がはっきりと見てとれる。このように両者の関係が逆相関に戻ったのは米国の利下げが終了したからである。
それにしてもこの原油価格の一日の動きが大きくなっている。筆者には、ヘッジファンドがNY原油先物市場を操作し、これによって間接的にNY株式市場を操作しているように見える。
米国株式市場で3月の半ばまで大量のカラ売りがなされ株価を押し下げた。しかしこれが清算されていないことを4月の初めに本誌も取上げた。
大量のカラ売りを行った主体はヘッジファンドである。米国の経済の実態が悪いことを理由に株式を大量にカラ売りしたのである。ところがベアー・スターンズの救済劇など、米国当局が矢継ぎ早に大胆な対策を打ったため、株価は逆に反騰を始めた。これによってヘッジファンドはカラ売りした株を買い戻せなくなったのである。それ以降、つまり3月の半ばから4月まで、悪材料が出ても株価が下がらず、逆に少しでも良い情報には敏感に反応し株価は大きく上がった。これは大量のカラ売り残高を持つヘッジファンドにとって危機的状況であった。
ここからは筆者の想像である。そこでヘッジファンドが目を付けたのが上昇を続ける原油価格と見る。前述したように原油価格と株価の関係は、前者が上昇すると後者が下がるといった逆相関関係に戻っていた。しかも原油先物市場は規模が小さいため、この市場の操作が比較的容易と見られるのである。
5月頃からつまらない情報で原油価格が急騰するようになった。例えば米国の石油在庫が少し減ったという話でNY原油先物価格が大幅に上昇するという具合である。しかしこれは世界的に原油の供給が不足になり、米国の石油在庫が減少したという話ではない。
FRBは連続して利下げし、資金の供給量を増やした。しかし下がったのはFF金利であり、市場金利は選別融資の強化によってむしろ上昇気味である(住宅融資金利などは逆に少し上がっている)。また銀行間の取引金利であるLIBORも下がっていない。
したがって価格高騰による石油在庫代金の増大と金利上昇によって、米国の業者の石油在庫の金利負担が大きくなった。この負担を軽くしようとして業者が在庫を減らしたに過ぎないのである。このような原油の供給不安とは関係のない話でも、意図的に使われNY原油先物価格がつり上げられた可能性が強い。筆者はこの原油価格高騰の背景にヘッジファンドの資金の存在を感じるのである。
NYダウは、原油価格の上昇に合わせるかのように、短期間のうちにかなり下落した。13,100ドルの高値から12,000ドル近辺まで1,100ドルも調整したのである。ヘッジファンドが売込んだ株価程度まで下落した。
しかし130ドル台の原油価格はヘッジファンドも高すぎると感じているはずである。またもし原油高・株価安がヘッジファンドの目的なら、目標の株価までほぼ下がったことになる。今後は、ヘッジファンドがいつ原油先物市場から逃げ出すかが注目点である。
これまで商品ファンドとヘッジファンドの両方で原油高を演出してきた。商品ファンドは金が集まる限り今後も買い進むと思われる。しかしヘッジファンドの方は、時期を見て逃げ出すか、あるいは逆に売り方に転ずる可能性さえある。
なんとなく筆者には、先週の末あたりから相場つきが変わったように感じる。商品市場へ行っていた資金がまた株式市場に戻ってきている可能性がある。また中国の国内向け石油製品に対する補助金の削減・撤廃が検討されているようだ。当局による商品市場の監視もきつくなっている。そろそろ原油高も天井に近いのではと思われる。
来週は原油の適正価格について述べる。」
http://www.adpweb.com/eco/eco531.html
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