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2008年6月10日 (火)
「第1の権力」マスメディアを支配する政治権力
6月3日記事「「敵を欺くにはまず味方を欺く」手法に警戒すべし」に記述したフジテレビ月曜9時ドラマ「CHANGE」第6回放送が昨日6月10日にあった。木村拓哉扮する朝倉啓太総理大臣のイメージを小泉純一郎元総理大臣に重ね合わせようとの思惑が番組編成の裏側にあるとの指摘がある。まぐまぐメルマガ大賞政治部門1位の「国際評論家小野寺光一の「政治経済の真実」」が早くからこの番組について警鐘を鳴らしていた
第6回放送では、日本の農産物輸入をめぐって来日した米国通商代表と日本政府が対立するストーリーが展開された。
ストーリーそのものは単純で、@政策の内容に関してはまったく素人と見なされていた首相が、実は非常に勉強熱心で、政策の鍵を握る部分について、問題を完璧に把握していたことが浮かび上がる。A米国に対してモノを言えない空気が日本政府を支配するなかで、朝倉啓太首相が米国通商代表との直接交渉で、日本の国益を擁護して一歩も引き下がらない姿勢を見事に貫く。B英語は分からないが、知ったかぶりをせずに通訳にすべてを細かく通訳させる。C秘書官の美山理香(深津絵里)に「首相の言葉には人々の心を動かす力がある」と語らせる。D竜巻発生のニュースを聞くや否や、自衛隊機を用いて現地に向かと同時に、すべての被災者に懐中電灯と携帯ラジオを支給するよう陣頭指揮をとる。
このような朝倉首相の姿が描かれた。ドラマが飯島勲元秘書官の著書『代議士秘書−永田町、笑っちゃうけどホントの話』(講談社文庫)をベースに制作され、木村拓哉扮する朝倉啓太首相のイメージをを小泉元首相に重ね合わせようと演出されているとするなら、ホントに笑っちゃう作りになっていた。
むしろ、ドラマが反小泉政権者のパロディーかブラックユーモアのセンスによって制作されたものではないかと思わせる内容だった。
上記の@からDのキャラクターは、どう考えても小泉元首相の現実と対照的に設定されたものとしか考えられない。Cの点については、人によっては小泉元首相の言葉が人々を誘導する力があると思うのかも知れないが、政治経済学者西部邁氏の表現を借りれば、小泉元首相は「デマゴーグ=民衆扇動家」としての力を有しているだけにすぎないと思う。
拙著『知られざる真実−勾留地にて−』(イプシロン出版企画)に詳述したが、西部氏は「ギリシャ・ローマの時代からデモクラシー=民主主義政治にはデマゴギーが付きまとうというのは常識だった。民衆が前面に出て暴れまくる時代というのは、大いなる可能性でデマゴーグが出る。民衆扇動家という意味だが、扇動するためには嘘をつくことが多いから、デマ=嘘ってことになった」と指摘している。たしかに小泉首相はデマゴーグとしての才能を有しているとは言えそうだ。
しかし、勉強熱心で政策の細部まで十分に把握していたか、という点に関しては、一部の御用学者のお追従以外にそのような評価を聞いたことがない。元財務省官僚の高橋洋一氏も著書『さらば財務省』のなかで、小泉元首相が詳細な説明資料を一切受け付けなかったことを暴露している。高橋氏は同書に、「小泉総理に渡す書類はA4一枚までというのは有名な話だ。詳細をしたためた数枚にわたる書類を持っていっても、読んではもらえない。要点だけを、それもかなり大きな字で書いたペーパーを持参する慣わしになっていた」(142ページ)と記述している。
英語が分からないことを率直に述べて、体裁を取り繕わないとの設定は小泉元首相の姿とは異なっている。小泉首相は英語が得意なのかも知れないが、小泉首相が英語を用いたパフォーマンスを好んでいた様子はいくつも記憶に残っている。国際会議で日本の政治家が英語でスピーチすることは悪いことではないから問題ではないが、ドラマの設定は現実と異なっている。
重要なポイントはAとDだ。拙著『知られざる真実−勾留地にて−』にも記したが、2004年10月23日の新潟県中越地震が発生した時、小泉首相は六本木ヒルズで第17回東京国際映画祭のオープニング・セレモニーに出席していた。地震は午後5時56分に発生し、六本木の映画祭会場でも体感された。
地震発生直後に「新潟で震度6強」の第1報が小泉首相に伝えられた。しかし、小泉首相は6時半に近くの映画上映会場に移動して、午後7時8分まで会場にとどまった。「CHANGE」が本当に朝倉啓太首相のイメージを小泉元首相に重ね合わせようとしているのだとしても、あまりに無理があって嫌みをこめた演出にしか見えない。
Aの日本の国益を最優先して米国の要求を毅然とはねつけるくだりになると、驚きを感じないわけにはいかない。実はドラマが小泉元首相とは無縁であるかも知れないし、強烈な風刺をこめたドラマであるのかも知れないが、現実の小泉政権が日本の国益を著しく損なったことは否定しようがない。
小泉政権は2001年から2003年にかけて、日本経済を倒産、失業、自殺の阿鼻叫喚の焼け野原に誘導してしまった。それも、意図と裏腹に誘導したのでなく、痛みを生み出すとの明確な意志の下に経済崩壊を誘導した。日本の資産価格は暴落し、結局、外国資本が暴落価格で日本の優良資産の所有権を奪い去っていった。この巨大なディールが小泉政権と外国資本によって仕組まれたとの疑いが濃厚に存在するのだ。詳しくは拙著ならびに5月31日付記事「2003年株価暴落の深層(1)−危機対応の日米較差」を参照いただきたいが、小泉政権の最大の罪はこの点に存在する。
視聴者が「CHANGE」を風刺番組と捉えられればよいが、深く考えずに単なる娯楽番組と捉えてしまうと問題は大きい。ドラマを政治的に利用しようとする勢力が存在するなら、この点がねらい目になる。一種のサブリミナル効果と言ってもよいだろうか。気付かない間にイメージが刷り込まれて、視聴者はドラマの虚像を現実と取り違えてしまう。
ガソリン税暫定税率、後期高齢者医療制度、年金記録など、国論を二分する重大問題が争点として掲げられ、与野党による総力戦が展開された衆院山口2区補選、沖縄県議会選での与党惨敗のニュースはテレビ番組で極めて少時間しか放送されなかった。
自衛隊のイージス艦「あたご」が航海規則に違反して民間漁船に衝突して尊い人命を犠牲にした事件報道は、サイパンでの突然の三浦和義氏逮捕のニュースにかき消された。
後期高齢者医療制度に対する国民の怒りの声が沸点に達しようとした時に、中国で四川大地震が発生すると、テレビ番組は大半の時間を地震報道に振り向けてしまった。ニュースの大きさはメディアの報道規模によって決定される。私が巻き込まれた冤罪事件はメディア報道によって大事件に仕立て上げられた。
7月7-9日に北海道で洞爺湖サミットが開催される。福田政権は環境問題での政権浮揚を目論んでいる。5月下旬からマスメディアは、雨後のたけのこのように環境問題を特集し始めた。シロクマの生存が脅かされることを喜ぶ人はいない。しかし、環境問題の捉え方は元来、幅の広いものである。いたずらに視聴者の情緒に働きかけて、論議を誘導しようとする報道姿勢には疑問を感じざるを得ない。
マディアは「第4の権力」と言われるが、世論動向が政治的意思決定の最重要ファクターとして取り扱われる昨今の状況を考えると、「第1の権力」と呼ぶ方が正しいかもしれない。政治権力はマスメディアを支配し、情報操作により世論を誘導しようとしている。情報操作の魔手はインターネットの世界にまで忍び寄ってきている。本当の意味の変革=CHANGEを実現しようとする者は、政治権力によるメディア・コントロールの実態を十分に認識したうえで戦略を構築しなければならない。
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