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http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20080520-72.html
*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
J・トーマス・シーファー駐日米国大使の日本外国特派員協会における講演
「変化する世界における安全保障の代価」
2008年5月20日
日本外国特派員協会のお招きを受けることを、いつも大変光栄に思っています。ここでお話しさせていただく機会を、私は楽しみにしています。というのも、長年にわたり、非常に多くの著名な方々が、この場で、日本が直面するいくつかの重要な問題を取り上げてきたからです。本日は私もそれに倣い、とても重要な問題について、皆さんと考えたいと思います。それは「変化する世界における安全保障の代価」という問題です。特に、日米両国が将来の安全保障上のニーズに対応するための財政負担について、皆さんと議論したいと思っています。
まず、これを申し上げておきます。通常兵器によるものであろうと、核兵器によるものであろうと、米国と直接対決して勝者となることが想定できる仮想敵は地球上に存在しません。これは、米国が戦場で敵の攻略にてこずったり、敗北したりすることはない、という意味ではありません。イラクやベトナムでの教訓は、通常兵器と核兵器の両面で優位に立っていても、必ずしも勝利が保証されるとは限らない、ということを痛みを伴って思い出させてくれます。しかし、総じて米軍は、世界のどんな通常兵力にも打ち勝つだけの十分な火力を有しています。
核兵器に関して言えば、米国に先制攻撃を仕掛けて勝利することができる、あるいは現実的に見て、受け入れ難い損失を被ることなしに報復を逃れることが可能であると信じることができる仮想敵は全く存在しないということを確実にするだけの十分な能力が米軍にはあります。米軍のこうした能力は、一言で言えば「技術力」のたまものです。米軍の兵器は世界で最も洗練され、最も殺傷力があり、そして最も効果的です。米国は、世界中のいかなる国にも勝る金額を軍事面の研究開発分野に投資してきており、そのおかげで米国は圧倒的な優位に立っています。
その結果、戦争の仕方が革命的に変わりました。デービッド・ハルバースタムは、その興味深い著書「静かなる戦争−アメリカの栄光と挫折(War in a Time of Peace)」の中で、精密誘導兵器が戦場にもたらした効果について書いています。第2次世界大戦が始まったころは、米国の爆撃機は、投下した爆弾が直径20マイルの円内に着弾すれば「目標に的中」とみなしていました。今日の兵器は6フィート未満の円内に着弾可能な精度を有しています。つまり、弾薬がどの窓を貫通するようにしたいかを決めることが、実際に可能です。
これにより、米軍は破壊を少なくし、より多くを保全することが可能になっています。今では、公益設備や上下水道などは、戦後の復興に備えて保全できるように、完全に破壊せず、事実上機能しないようにすることが可能となっています。これは、敵の戦争能力を失わせるのではなく、完全に破壊しなければならなかった古い軍事的枠組みに比べて、非常に大きな利点です。また、近代兵器は、正確な目標攻撃能力で2次的な被害を減らすことができるため、民間人にとっての戦争の危険性を低下させることも可能です。でも、誤解しないでください。それでも戦争は是が非でも避けるべき恐ろしいものです。戦争は最後の手段であるべきです。しかし、現代の戦争は以前と比べ効率性と精密さに優れ、より技術的になり、そして兵器はより殺傷力が高くなっています。また、こうしたあらゆる技術には多大な費用がかかるため、戦争はより高くつくものにもなっています。
今年に入り、米国のB-2爆撃機が墜落事故を起こしています。この航空機1機だけで、製造に約12億ドルかかりました。米国のミサイル防衛力の一部であるSM-3ミサイル発射能力を有する米国のイージス艦を1隻建造するには12億ドル以上かかります。今年の夏に日本に配備予定の米国空母ジョージ・ワシントンの場合には約50億ドルでしたが、この数字には同艦を発着する艦載機の製造にかかる10億ドル以上の費用は含まれておりません。ジョージ・ワシントンとその艦載機を合わせた費用の総額は60億ドルを超え、現在の日本の防衛予算総額の15%に近づいています。2012年に進水予定のフォード級新型空母は、建造費が80億ドルから110億ドルと見積もられており、現在の日本の防衛予算総額の4分の1を超える可能性があります。これらは驚くべき数字です。
これらの数字は、軍の指導者にも文民の指導者にも一様に、ひとつの課題を提示しています。それは、こうした軍備のおかげで国が戦場で優位に立つことができる一方で、これらの軍備が、国民、とりわけ政府を選挙で選出する国民が要求する水準のサービスを実現する政府の能力に大きな影響を及ぼすこともあり得る、ということです。要求されるかもしれないものと必要なものとの間でうまく折り合いをつけることは、簡単ではありません。
米国であれ、日本であれ、ほかの国であれ、政府は今後、以前よりも高性能である反面、より多くの費用がかかる兵器システムのための予算確保に苦心することになります。どの国も、米国でさえ、利用可能な兵器システムをすべて調達できる余裕はないため、誰もが困難な選択を迫られることになります。
かつて、ダグラス・マッカーサー元帥が、ウエストポイントの米国陸軍士官学校の士官候補生に、彼らの任務は単純なものであり、「(中略)戦争に勝つことだ」と説いた話は有名です。そうした単純なことが今日ほど高くつく時代は、これまでありませんでした。今日の近代的な軍隊は、戦闘行動の戦略のみならず軍備の経済性においても卓越していなければなりません。
国の繁栄が国防予算の増加につながる可能性があることは、歴史が教えているところです。ここアジアにおいては、今まさにこうした現象の影響が実感され始めています。
過去10年間の中国の年間経済成長率は平均9.3%です。しかし、同じ期間に、中国の軍事費は年平均で14.2%増加しました。中国の会計処理は非常に不透明なため、その14.2%という数字さえも、実際より低く報告されている可能性があります。また、軍事費の増大は中国だけの話ではありません。
朝鮮半島では、同じ10年間で、韓国の国内総生産(GDP)が2500億ドル以上増えています。同国の軍事予算は、同じ期間に73%増加しました。ロシアも、欧州やアジアで、軍事大国としての存在を再び主張しています。主に石油と天然ガスの産出による増収の結果、昨年の2月8日、当時のイワノフ・ロシア国防相は、1890億ドル規模のロシア軍総点検・近代化計画を発表しました。
米国の国防費もまた劇的な水準で増加し続けています。米国経済は1998年から2007年にかけて約2兆5000億ドル成長しましたが、米国の国防予算は2倍近くに増加しました。1998年に2520億ドルだった米国の国防費は、昨年4810億ドルとなりました。この中にはアフガニスタンやイラクでの作戦に使った1420億ドルは含まれていません。
北東アジア各国の国防費増大が続く中で、日本だけが例外です。日本の現在の防衛費は1998年当時のそれと大体同額です。この違いは、同時期に日本経済が概して停滞していたためだという見方も一部にはあるかもしれません。こうした主張にも一定の正当性があることに疑いはありませんが、問題は日本の防衛費の対GDP比が着実に低下しているということです。今年度は、この数字が1%未満の0.89%になります。これは、どの北大西洋条約機構(NATO)加盟国、あるいは経済協力開発機構(OECD)に加盟しているどの先進国よりも低い数字です。実際、日本の防衛費の対GDP比はスイスよりも低くなります。
しかし、日本国民は、この地域の敵や仮想敵からの軍事的脅威に対する懸念を深めているときでも、自国の安全について心配する必要はありません。なぜなら、これらの敵国には、日本を攻撃すれば米国が持てる限りの軍事力を行使して反撃に出てくるということが分かっているからです。こうした状況を踏まえれば、在日米軍駐留経費負担特別協定などの取り決めに一部の日本の政治家が強く反対するのはどうしてなのかと、米国民が疑問に思うことは驚くべきことではありません。
私たちは、日本がこの10年間に軍事力を増強してきた米国と同盟関係を結んでいることから恩恵を受けていると考えています。また私たちは、日本が自国の安全保障への寄与を減らすのではなく増やすために、自国の防衛費を増大させることの利益を検討すべきと考えております。
しかしながら、日米両国の防衛予算の規模にかかわらず、私たちは皆、両国が購入する兵器の調達でもっと良い仕事をすることができます。防衛費が、国民の安全を高める手段としてではなく、公共事業と同列の扱いを受けることがあまりにも多くなっています。米国は「400ドルの金槌」や「600ドルの便座」の問題を経験しているので、わが国も納税者の評価を得る完璧なお手本とはなってはいません。しかし、米国は過去数年間に、無駄を減らし国防能力を向上させる多くの改革を行いました。防衛調達手続きの改革は、米国の目標や日本の目標だけではありません。このことは昔からある簡単な常識にすぎません。これができれば、私たちは皆、勝者となります。では、私たちは何をする必要があるのでしょうか。私の考えでは、日米両国は戦略策定、分析、能力の最大化、製造、そして配備を連携して行う必要があります。世界の2大経済大国が同一の視点から問題に取り組めば、非常に大きな規模の経済を達成することができます。どういうことか説明します。
米国と日本には共通の信念があります。すなわち、民主主義が機能するということ、寛容が肝要であること、言論の自由が重要であること、自由な市場が期待通りの働きをするということ、です。日米両国はまた、アジアと世界で共通の利害を持っています。すなわち、海上交通路(シーレーン)を守り、法の支配を促進し、そして貿易の恩恵を拡大する必要がある、ということです。その場合、日米両国が自国民の安全を守るためには、それぞれの防衛態勢で何が足りないのかを十分議論することが当然ではないでしょうか。今後10年、20年、さらには30年先を展望した場合、日米の利害が大きくかけ離れたものになっていると、どちらかの国が考えているでしょうか。私自身は、その答えは「ノー」だと思っています。もしそうであれば、日米両国は協力して問題に取り組んでいくべきではないでしょうか。
一例を挙げますと、日本は次世代戦闘機の調達を検討しています。日本が米国の支援なしで戦争状態になるということは、想像し難いことです。そうであれば、日米両国が協力し、それぞれが保有する航空戦力にできる限り補完性を持たせることは当然ではないでしょうか。日本の新型戦闘機は、日米それぞれにとって戦力増強をもたらすものであるべきです。だからこそ、この戦闘機を別々にではなく、一緒に調達するための能力と戦略を検討することが両国にとって非常に重要だと思います。日本の決定は米国に影響を及ぼしますし、米国の決定も日本に影響を及ぼします。
日米両国は、それぞれの航空戦力にとって何が必要かを一緒に検討する必要があります。侵略の意図を持つ者が、完全な相互運用性を持つ日本の自衛隊と米軍のことを時間をかけて考えなければならない状況にある場合には、日本はより大きな防衛力を持つことになります。こうした状況では、F-22のような航空機を操縦するパイロットが日本人か米国人かは、彼らが戦力の構成要素の一部であり、最新鋭戦闘機のF-35やF-18を操縦する両国のパイロットにより補完されるものである限り、大した違いではありません。究極的には、共通戦力をこのように組み合わせることは、機体に描かれた国旗より重要となります。
こうした成果を得るため、日米両国は定期的に戦略対話を行って共通の目標を決めなければなりません。そこから日米両国はそれぞれの兵力を分析し、生産性を最大限に高める一方で最大限に節約もしなければなりません。同じ場所に行くために別々の道を進むことは、誰のためにもなりません。創造性と革新は協調と共同作業の副産物です。
何をする必要があり、それを誰がするのか、が分かれば、あとはそれを製造するために協力すればいいだけです。つまり、すべての兵器のすべての部品が自国製である必要はない、ということです。ひとつの好例として、統合攻撃戦闘機「ジョイント・ストライク・ファイター」の製造のために米国が採用している構想があります。多様な能力を持つ航空機を製造するために、複数の国の複数の企業が力を合わせています。世界各国の防衛関連企業が、特定の国に売却される航空機だけではなく、製造される航空機の最初の1機から最後の1機まで関わることができるということです。
日米両国は戦略策定、分析、能力の最大化、そして製造を共同で行ってきたのですから、配備も共同で行うべきです。相互補完性のあるシステムは、戦力を増強させるシステムであり、財政破たんを招くものではありません。先ごろの米軍再編に関する日米合意は、両国の協力を拡大する上で大いに役立ちます。私たちは、これをさらに拡大して行くべきです。日米の共同運用性が高まれば高まるほど、両国の状況は良くなるでしょう。
これは日米双方の政府に言えることですが、防衛支出を利益誘導型政治の究極的な「利権」と見てはいけません。政治のために戦略を犠牲にするなどということはあってはならないのです。私たちが防衛の分野で行っていることの結果は、国民の安全にとってあまりにも重要なので、失敗することはできません。同時に、最終的に開発する兵器の対価として、必要以上の金額を払うべきでもありません。無駄遣いした1ドルや1円はどれも、国民のためにより高い安全性が買えたはずの1ドルであり、1円です。
日米両国が前進する中、日米両政府とも調達慣行を改善していかなければなりません。契約企業を選定する際、透明性の向上と競争力の強化を促進すべきです。公明正大で明瞭な制度があればこそ、国民は、納税者が苦労して稼いだお金が賢明に使われると信頼することができます。
複数年にまたがる契約を促進すべきです。政府は、より短期間で研究開発費を償却しなければならないという企業にとってのリスクを減らすことにより、自らのコストを削減できます。複数年の契約により、先の年まで購入することを政府が保証することによって財務リスクが軽減される契約企業に対して、当然なことながら、政府は価格の引き下げを求めることができるからです。
日米両国は、現在2国間協力の拡大を妨げている障害を少なくすることで、自国の防衛費を削減することができます。日本が機密資料や知的財産関連の情報を保護する能力を高めれば、米国はより多くのことができるようになります。日本も、米国企業ともっと多くの仕事をするために、ブラックボックス回避策を使う創造的な方法を取ることができるようになります。
その見返りに、日本はミサイル防衛で行ったように、防衛関連製品の対米輸出禁止を緩和することができます。これにより、日本企業は、現在、民生用市場で競争しているように、米国の防衛産業で競争する能力を大いに高めることになります。また、日米が採用している、防衛装備品調達契約の会計に関する法律や資金調達方法が、調達手続きにおいて企業に不利に働くのではなく、企業の参加を奨励するものになるようにするために、日米が協力することもできます。規制や調達の慣行が、顧客にとってのコストがかさむだけで利益のないものであれば、誰の利益にもなりません。契約企業に対し、契約の完了時ではなく節目ごとに支払いをすれば、日米両政府とも同じように利益を受けます。同様に、納期と予算を守った納品は、政府と契約企業の双方に財政面で利益をもたらします。こうした成果は相互排他的なものではありません。達成可能なものです。
日米両国は昨年の12月に、在日米軍駐留経費の日本側負担の包括的な見直しを行うことで合意しました。これは何を意味するのでしょうか。それは、日米両国が、あらゆる観点から、米軍の日本駐留経費負担の取り決めを見直す、ということです。また、日米両国は、米軍再編でも合意しました。この合意は、日米安全保障条約が1960年に署名されて以来、日米同盟を最も包括的に見直すものです。今や、この合意を実施していく必要があります。両国政府は、これまで数十年にわたり日米両国とアジアの平和と安全に寄与してきた両国の同盟関係を更新すると約束しています。今は、調達慣行を見直して、日米両国の国民と産業により大きく貢献できるものにする時であるとも言えるでしょう。
今、アジアは過渡期にあります。古い秩序は次第に消えていき、新しい秩序が現れてきています。しかし、今がアジアの紛争の時である必要はありません。日米両国は長年にわたり、世界のこの地域で平和を維持するために一生懸命努力を重ねてきました。相互の利益と関心を共有しているため、日米両国の努力はおおむね成功を収めています。日米同盟は、太平洋地域における両国の外交政策の要となってきました。この状況を変えてしまうほどの変化は、世界のどこでも起きていません。変わったのは、技術の水準と近代兵器のコストです。日米両国が協力して調達慣行の改革を行えば、両国それぞれの日米同盟への貢献を強化することになります。
日本は対等な同盟関係を望んでいます。米国もまた対等な同盟関係を望んでいます。これを達成するには、日米両国が提供する資源を最大限に利用しなければいけません。対等な同盟関係のために、日米両国が同額の費用を負担する必要はありません。しかし、無駄と重複が発生する場合には、それをなくすためにできる限りの措置を取るべきです。
今からおよそ50年前、太平洋の両側にいる何人かの非常に先見の明のある政治家は、日米が同盟関係を結べば、両国がそれぞれより安全になると認識していました。今、当時とは異なる世界秩序が出現しつつあります。しかし、日米同盟の戦略的な必要性に変わりはありません。日米同盟をあって当然のものと考えてはいけません。軽視してもいけません。大切にし、育み、積み重ねていかなければなりません。それは、日本と米国が同盟関係にあることが、今もなお太平洋地域の平和と安定のための最善策だからです。
(質疑応答=英文)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 5 月 20 日
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 5 月 21 日
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