★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK49 > 683.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://mytown.asahi.com/aichi/news.php?k_id=24000240804300003
【新編「あたらしい憲法のはなし」】
第6部 聞く・語る(上)
2008年04月29日
愛敬浩二教授
【愛敬浩二・名大大学院教授】
●9条 政策として問え
日本国憲法は5月3日で施行61年になります。憲法と現代社会を問う企画を昨年から5部にわたって続けてきました。「憲法は米国の押しつけ」などと言われ、改憲手続きを定めた国民投票法もできました。安倍前首相は11年にも国民投票をして憲法を変えようと考えていました。最大の眼目は9条でしたが、改める必要はあるのでしょうか。格差社会を憲法の視点でどう考えたらいいのでしょう。「今の憲法はもう古い」と言うほど私たちは憲法に目を向けてきたでしょうか。識者に聞きます。(大塚晶)
―イラクでの航空自衛隊の活動は武力行使を禁じた憲法9条に違反するという名古屋高裁の判決が出ました。
イラク特措法を合憲と言い繕うために、政府は無理な説明をしてきました。「戦闘地域と非戦闘地域の区別」などがその最たる例です。名古屋高裁は、イラク戦争の実態を踏まえると、政府見解は維持しえず、憲法違反だとしたわけですが、この論法には説得力があります。
―そもそも「戦地」イラクに行くこと自体、自衛隊と9条との関係を考えると大きな転換に思えますが。
イラクへの派兵は戦争への参加だったと私も思います。ただ、9条の下ですから、とにもかくにも戦争に行くわけではないという形をとり、自衛隊もまだ、イラクで誰かを殺してもいなければ殺されてもいない。この点は軽視できません。
―政府は今、自衛隊を海外に派遣するための恒久法を検討していますね。
米国からの要求もありますが、冷戦後の状況の中で、自衛隊が自らの存在意義を高めるために海外に活動の場所を求めたいという面もある。ただ、自衛隊の活動は米国の軍事展開の下請け化がますます強まっていますから、9条を改正したら海外派兵が日常化しかねません。だって、世界のどこかには必ず米国が介入する紛争があるんですから。
―ここ数年、北朝鮮の脅威が言われ、いざという時に米国から助けてもらうためにも日米同盟維持が必要と語られるようになってきました。
冷戦期と状況が全く違うことを忘れた議論です。朝鮮戦争の時には中国とソ連が実際に北朝鮮と一緒に戦いましたが、もはやそのような状況ではありません。冷戦が終わったのだから、近隣諸国との信頼関係を醸成しつつ、軍縮を進めるというのが筋でしょう。また、中国と台湾の関係のように、東アジアにはまだ不安定要因があります。そういう場所に、9条の拘束から外れたフリーハンドの軍隊がいきなり現れたらどうなるか。そういうリスクもちゃんと計算すべきです。
―米国についていくことが日本の国益と言われます。
米国と是々非々でつきあっている国々と比べて、米国が本当に日本だけをひいきしてくれているのか。そんなことはありませんよね。
―戦後の日本で何でも批判できるような自由な社会を築けたのは9条があったからとも言われます。
日本は60年前に軍隊を一応解体したことで軍事的なるものに対する違和感が社会に浸透してきました。さらに9条があったおかげで国家権力に対する健全な懐疑心も育ってきました。例えば、戦前では常識だった国家のために死ぬべきだという考えは、今の日本ではそう簡単に出てこない。国や集団ではなく、個人が大切という見方ができるようになるためにも、9条というのはすごく重要でした。
―しかし昨年国民投票法が成立し、改憲の時期まで取りざたされました。どうすれば9条を守れますか。
一つは、現実の政策選択の問題として問うべきです。米国への軍事的支援は9条があるから今のレベルですが、変えたらどうなるか、東アジアにいきなりフリーハンドの大きな軍隊ができたらどうか、米軍基地も恒久化しますよ、とか。それが望ましいかどうかきっちり議論すべきです。
それに、92年に米国留学中の高校生が知人宅と間違って訪問した家で射殺される事件がありました。これは異常だと多くの日本人は思ったのではないか。これは大切なことで、このような感覚が日本社会に根付いたのも、9条の存在が大きい。
―トラブルを力で解決しないというのは国際関係でも同じですね。
同じです。米国も含めて、何か利害対立があるとすぐに暴力を振るう国が少なくありませんが、日本にはそれはおかしいという感覚があります。日本は、利害の対立があっても手は出さないという証文を渡しているわけですね、他の国々に。これも重要です。9条を維持しながら、自衛隊を段階的に縮小して、災害派遣などに純化していく。そのほうが、私たちの安全にとっても、国際社会のニーズにとっても、合理的な選択だと思います。
【自衛軍保持を明記―自民党新憲法草案】
自民党が05年にまとめた新憲法草案は、現行の憲法9条について、1項をそのままにして「9条の2」を新設し、その性格を大きく変えている。「自衛軍を保持する」と明記し、自衛軍による国際協調活動もうたっている。集団的自衛権については触れていないが、政府は今も、「集団的自衛権の権利は持っているが、現行憲法上、行使できない」としており、自民党の新憲法草案では集団的自衛権の行使が可能になる。
一方、一般法(恒久法)として自衛隊を随時海外に派遣できるようにする法案が今国会にも提出される動きが出ている。これまでのPKO協力法などと違い、国連決議や国際機関の要請がなくても多国籍軍への参加を可能にする内容で、憲法上、大きな論議を引き起こすのは必至だ。
あいきょう・こうじ。66年生まれ。信州大助教授などを経て05年に現職。著書に『改憲問題』など。「名大九条の会」の世話人代表も務める。
■関連記事
新編「あたらしい憲法のはなし」
http://mytown.asahi.com/aichi/newslist.php?d_id=2400024
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK49掲示板
フォローアップ: