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名古屋高裁(青山邦夫裁判長)は17日、自衛隊のイラク特措法にもとづく派兵は違憲だとして派兵の差し止めと慰謝料の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、航空自衛隊の現地での活動に関し、(1)空輸先のバグダッドは「戦闘地帯」(2)多国籍軍の武装兵の空輸は他国の武力行使と一体化している――と認定し、イラク特措法と憲法第9条に違反するとの画期的な判決を下した。これによって小泉・安倍・福田の歴代三内閣が主張してきたイラク派兵に関するウソがすべて断罪されたのは明らかで、空自の即時撤退が求められている。
今回の訴訟で改めて浮き彫りになったのは、政府の異様な不誠実さだ。福田首相は判決直後、違憲判断を「傍論」とし、「判決は国が勝った。(今後の影響については)問題ない。特別どうこうすることはない」などと発言。確かに原告側が求めたイラク派兵の差し止めと派兵の違憲確認、損害賠償の請求は退けられ、国側が「勝訴」した形となり判決は確定となる。だが判決はイラク特措法に照らしても空自の活動は認めがたいと判断しており、「傍論」どころか判決の核心部分で政府の行為が初めて事実認定に踏み込んで違憲とされたのだ。
町村官房長官に至っては、「裁判官はどこまで実態が分かっているのか」とまで反論しているが、原告が2006年7月17日から11月12日までの空自の運航実績について情報開示請求を行なったところ、ごく一部を除き一切黒塗りだった。しかも「分かってい」ないのなら弁論で原告に反論すればいいはずだが、1審、2審とも国側は一切事実関係を争わず、沈黙を決め込んだ。公表すれば活動範囲が「非戦闘地域」だの、「他国の武力行使と一体とならない」などといったウソがすぐ判明するから、「実態」をひた隠しにしているだけだろう。
では、肝心の「実態」はどうなのか。町村長官は空自のC130がクウェートから飛び立って着陸するバグダッド空港について、「戦闘地域」でないなどと断言。だが、あの守屋武昌前防衛事務次官ですら06年7月の段階で「予断を許さない状況」で、「地対空ミサイルなどによる航空機に対する攻撃が発生する可能性も排除されない」と認めている。しかも空自自身、「戦闘地域」にいる事実を語っている。
「飛行ルート周辺はテロなどの危険地帯で、常に脅威を前提にして活動中だ。……脅威環境下での航空輸送を、全隊員が危険を顧みず、厳しい勤務実態を内に秘めたまま、異国の地で粛々と役割を果たしている」(『世界週報』05年12月13日号での航空支援集団司令官・永岩俊道空将インタビュー)――。
また、C130の「機体底部」を「装甲用の鉄板で補強」し、「ミサイルを“おとり”の熱源に誘導するフレア装置」も備えた(同)という。これで「どこが戦闘地域かなんて俺に聞かれてもわからない」(小泉元首相)だの、「空自が使用する空港と飛行ルートは非戦闘地域」(防衛省)などという居直りがまかり通っているのは、無責任の極みだ。
『東京新聞』は昨年3月、「続・イラク派遣の実像」と題し、空自の現地取材を通じて「ミサイルからの回避行動」を始めとする戦時下の危険にさらされているC130の飛行時の生々しいルポを連載。そこでは「イラク特措法は、戦闘地域への自衛隊派遣を禁じている。空自の活動を“合法化”しているのは、政府の法律解釈だ」(同27日付)と、「実態」を隠したまま公式論だけを繰り返している政府の身勝手さを批判している。
だが政府は最初から、憲法はおろかイラク特措法すら最初から遵守するつもりはないようだ。それより何よりも「日米同盟」を名目にひたすら米国の侵略政策に忠義立てするのを優先し、特措法も単なる形式に過ぎない。その米国の空軍公式サイト「エア・フォース・リンク」は、06年の6月28日付で「1954年の創立以来初めて、航空自衛隊は積極的に戦闘地域に配備された」と論評しているが、これが軍事的な常識だろう。
そしてより重要なのは、空自の活動地域以上にその役割にある。判決は空輸について、「それ自体は武力の行使に該当しない」としながら、「輸送等の補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であるといえることを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支壊を行なっている」と、空自が軍事作戦に従事していると断定。その上で単なる貨物などの空輸に留まらず、「多国籍軍の武装兵員を、戦闘地域であるバグダッドへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」と指摘している。
C130が武装米兵を空輸しているのは空自側も認めているが、このことが直接憲法第9条に違反して戦争行為そのものであると断定された意味は重い。ところが田母神俊雄・航空幕僚長は18日、「私が心境を代弁すれば『そんなの関係ねえ』という状況だ」などと述べている。自衛隊の発足以来、制服組がこれほど露骨に憲法と司法を蹂躙する暴言を吐いたのは前代未聞だ。
すでに06年末の自衛隊法改悪で、自衛隊の海外活動が付随任務から本来任務に変更。さらに自公両党は民主党を巻き込み、海外派兵をアフガニスタンやイラクのように時限立法による「特別措置」ではなく内閣の判断でいつでも実施できる「恒久法」の制定を目指している。もし可決されて自衛隊が国会のチェック抜きにいつでも海外に派兵された場合、彼らの行動に遵法意識など期待できない。
事実、元イラク先遣隊長の佐藤正久参議院議員も「あえて巻き込まれる形で」意図的に戦闘状態をつくろうと画策していたと発言して問題になったが、このままでは戦地における無法の暴走が既成事実化されて外交政策を引きずっていくという、戦前のパターンが再現しかねない。改憲を待たず日本が事実上の戦争国家に突入した現在、名古屋高裁判決を生かすのか否かは、私たち一人一人のこれからの取り組みにかかっている。
(成澤宗男・編集部)
■訴訟に原告として加わった天木直人・元レバノン大使の話
判決を聞き、ここまで踏み込んだ違憲の判断を下すとは予想していなかったので、文字どおり身震いした。心から、高く評価したい。憲法第9条がありながら、日本が重装備の自衛隊を出したという点が違憲とされた。これまでナイキ訴訟などで自衛隊の存在が憲法上問われたことがあったが、政府がやらせた自衛隊の行為が違憲と判断とされたのはきわめて画期的で、この判決を為政者は厳しく受け止めるべきだ。
いま日本は米軍の戦争に公然と協力し、海外での戦闘参加をさらに拡大しようとしているが、この判決は抑止力としてきわめて大きな影響を与えるだろう。さらにブッシュの侵略戦争が完全に破綻をきたした時期にこうした判決が出たのは、決して偶然ではあるまい。今こそ護憲政治家は、こうした現状を放置してきた責任を自覚して、イラクからの自衛隊撤退をどうあっても実現しなくてはならない。
この判決は、日本の司法が初めて世界に向かって憲法第9条の存在を知らせたという大きな意味がある。国際政治への影響も大きい。
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