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2008年04月15日
産経新聞社の本「カーブボール」を読んで
私は4月2日のブログで、産経新聞社が翻訳して出版した、「カーブボール」という本の事を、産経新聞の抄訳記事を引用しながら読者に紹介した。
カーブボールとは、「イラクに大量破壊兵器がある」という嘘の情報を流して、英、米、独を手玉にとった偽情報提供者のスパイネームのことである。
そのブログを読んだ産経新聞社の関係者が、私のブログに敬意を表して一冊献本してくれた。私は感謝を述べてそれを受け取り、さっそく先週の週末を使って読破した。
500ページ近くに及ぶその大部な翻訳本を私は一気に読破した。
今、日本の巷では、やたらに情報(インテリジェンス)の重要性を強調する言説が流行っている。しかし、この本を読むと、世界を動かす陰謀とそのために利用される情報活動が、いかに愚劣なものであるかがわかる。
私は、インテリジェンスなどという大げさなものは不要であると思っている。公開情報を正しく理解し、活用することによって正しい判断ができる。
いや、物事の正しい判断と政策決定は、衆人環視の下で行われてこそ、あらゆる批判に耐えることができるのだ。間違いを最小限に防ぐ事ができるのだ。
やたらに極秘情報を求め、人の知らないところで物事を決める。そのような決定にろくなものはない。人が知らない情報をもてあそんで、あたかも自分たちが有利な立場にいる、その立場を利用して重要な決定を行う、そう考える事自体が邪悪なのだ。
この「カーブボール」という本はそれを教えてくれた。
そして、それよりも何よりも、世界を裏で動かしていると喧伝される欧米の情報機関の実態が、いかにお粗末でいい加減なものであるかについて、我々に教えてくれたのである。
対抗意識、野心、責任逃れ、リーダーシップの欠如など、あらゆる権力者の卑劣さがそこにある。そのすべてをここに紹介する事はできないし、またその必要もない。
この膨大な著作の最後の部分において、カーブボールの誤った情報に米国全体がだまされていた事をブッシュ大統領に語るデビッド・ケイ調査団長の、次の言葉が、すべてを物語っているのだ。
「何がいけなかったんだね?」、「なぜわれわれはこれほどの間違いをおかしてしまったのか?」とたずねるブッシュ大統領に、ケイは次のように答えている。
・・・簡単な情報収集技術、基本的分析、CIA上層部の指導力という点で、想像を絶する失敗があったのです・・・「カーブボール」と呼ばれるたった一人のイラク人情報源に全面的に頼りました・・・CIAはその男に直接尋問することなく、彼自身を入念に審査することも、彼の情報の裏を取ることもまったくしませんでした。それなのにコリン・パウエルは国連でカーブボールの情報を強調し、大統領ご自身も一般教書演説で彼の情報を引用して大量破壊兵器を見つけたと発表された・・・
アメリカ合衆国は蜃気楼を追って戦争を始めたのです・・・
大統領は何の反応も示さなかった。質問をすることもなかった・・・
それにしてもである。そんな米国とも知らずに、「米国は正しい」と叫んですべてに追従していった日本政府の実態は、いかに空疎であったかがわかる。
あれから5年たって、米国にはおびただしい検証が優秀なジャーナリストや関係者から語られている。その事によってブッシュ政権は責任を問われる事になった。
しかしわが国ではただの一人も、当時の政策決定の検証をするものがいない。それとともに誰も責任を取ることはない。
あまりにも無責任な政府関係者とそれを追求しようとしないジャーナリズム精神の欠如である。
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