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週のはじめに考える キング牧師が託した夢(中日新聞)
2008年4月13日
私には夢がある−キング牧師は人種差別を超えた社会実現を後世のアメリカに託しました。「オバマ現象」はそこへ近づく大いなる歩みなのでしょうか。
「私には夢がある。私の幼い四人のこどもたちが皮膚の色によってではなく、その人格によって判断される日がいつか訪れることを」−。キング牧師が一九六三年、奴隷解放宣言百周年に行った演説の一節です。
アメリカ大統領選挙はスタートしてすでに一年以上たっていますが、ここにきて誰もが慎重に触れるのを避けてきた根本的な問題に直面しています。人種問題です。
激越な黒人牧師演説
きっかけは、オバマ上院議員が所属するプロテスタント系教会の黒人牧師が行った演説の一部がネット映像で流布したことでした。オバマ氏を教会に導いたライト牧師の演説は、白人優位の米国の歴史、米中枢同時テロに至った米政策を黒人の視点から糾弾する激越な内容でした。
「金持ちの白人に支配される国と文化に住む意味をバラク(オバマ候補)は知っている。ヒラリーは知るよしもない」「我々はパレスチナや南アフリカへの国家テロは支持しておきながら同様のことを自分の庭先でやられて怒っている。身から出たさびだ」「我々市民を人間以下に扱うアメリカよ、呪(のろ)われよ」
これまで中傷や非難合戦こそあれ、共和党のマケイン上院議員、民主党のオバマ上院議員、クリントン上院議員とも政策を中心に大統領としてふさわしい政治家の資質を争う戦いを展開してきました。人種、性別は従属的な要因でした。
ところが、この一件以来にわかに白人男性、白人女性、そして黒人男性の戦いの側面が際立つようになりました。
アメリカは変われるか
オバマ候補がとった対応がまた異例でした。オバマ氏は、「ライト牧師発言は不適切で非難すべきものだ」と明言したものの、教会や牧師との関係は断ち切らない考えを表明し、その説明を得意の演説に託したのです。
「より完全な連邦」と題した演説で、オバマ氏は奴隷制を米国の「原罪」と断じながら、建国の父たちは憲法の中に、法の下の平等、自由、正義を将来全うされるべき理念として刻み込んだはずだ、と強調しました。
過去、人種差別発言に対してメディアや当事者たちがとってきた扇情的、冷笑的な対応を繰り返すのではなく、今こそ「多様性の統一」に向けてすべての人が参加する社会の統合力を示すときだ。黒人を父に、白人を母に持つ自分のような候補者が大統領職を争う場にいられるようになった事実こそ、アメリカが変われる力を秘めている証しだ、というのです。
「歴史的演説だ」と高く評価する声がある一方、恩師の躓(つまず)きを逆手にとり論点をすり替えたものと非難する声まで受け止め方は大きく割れ今も波紋を広げています。
アメリカの歴史において、奴隷制は避けては通れない負の遺産です。黒人は所有者の財産である、との判断を示した「ドレッド・スコット」事件の最高裁判決が下されたのは百五十年ほど前でした。
奴隷解放宣言後、南部諸州でとられた隔離政策について「分離すれども平等」と述べた最高裁判決はおよそ百十年前のことです。ローザ・パークスが白人に席を譲らなかった問題をきっかけに、バスの座席差別は違憲だ、と最高裁が判断したのは、まだ五十年ほど前のことです。
アメリカは過去の歴史を克服し、黒人大統領を受容する準備を整えたのでしょうか。ある米高官の答えは示唆に富んだものでした。「黒人の大統領は前例がありませんが、国務長官を考えてみてください。最後の白人男性は誰だったか思い出せますか?」
ライス国務長官、パウエル前国務長官とも黒人です。その前は女性のオルブライト国務長官でした。白人男性はクリストファー国務長官まで十年以上溯(さかのぼ)ります。
最新の世論調査では「黒人大統領を受け入れる用意がある」と答えた人は七割を超えています。
何歩歴史を進めるか
「家が内輪で争えばその家は成り立たない」。南北戦争が火を噴く数年前、リンカーンは聖書の一節を引用して奴隷州と自由州で争っていては連邦は分裂する、と警告しました。
オバマ候補は昨年の出馬第一声でこの演説に触れ、イラク戦争を機に分断したアメリカ社会へ警鐘を鳴らしました。
アメリカの大統領選挙は「四年に一度の革命」ともいわれます。キング牧師が託した夢へ向けて進めるべき歴史の歩みは一歩か、二歩か、はたまた半歩か。「オバマ現象」の奥から、アメリカの自問する声が聞こえてくるようです。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008041302003324.html
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