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自由を萎縮させるな 反戦ビラ有罪(中日新聞)
2008年4月12日
自衛隊のイラク派遣に反対するビラを官舎で配った。最高裁は住居侵入罪にあたるとした。有罪が確定する。「ビラ配布有罪」が続いている。この積み重なりが、表現の自由をさらに息苦しくする。
憲法二一条が表現の自由を保障している。イラク派遣は国会でも大問題となった政治テーマである。「反対論」を唱えるビラ配布も許容されていい。
ただ、二〇〇三年から〇四年にかけて配った場所が、東京都立川市の旧防衛庁の宿舎だった。「関係者以外立ち入り禁止」の表示があり、警察にも被害届が出されていた。
一審は住居侵入を認めつつも、住民の被害が極めて軽微だとして、刑事罰を科すほどではないと無罪判決を出した。二審は逆転有罪となり、最高裁も「(住居の)管理権者の意思に反して立ち入った。私的生活の平穏を害する」とし、有罪判断を下した。
判決には、具体的にどのように平穏が乱されたか、どんな精神的被害があったか、言及はなかった。刑罰法規を形式的に当てはめた判決といえないか。政治ビラは意見を異にする人々に対しても、発信する自由があることを留意したい。被告たちは、自衛隊員にこそ「反対」のメッセージを伝えたかったようである。
見過ごせないのは、証拠隠滅の恐れを理由に、七十五日間も拘置されたことだ。
科されたのが罰金刑なのに、それほどの長期間、拘束する必要はあったのか。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナル本部は、「反戦ビラ」の被告たちを日本で初めて「良心の囚人」と認定した。非暴力で権利を行使しただけで、拘束された人々のことである。ミャンマーの民主化指導者アウン・サン・スー・チーさんや、旧ソ連のノーベル平和賞の故サハロフ博士らも名を連ねた。
共産党の印刷物を配布し、住居侵入罪に問われた東京都葛飾区の僧侶も、一審無罪が二審で逆転有罪。共産党の機関紙を配った社会保険庁職員は国家公務員法違反で、有罪判決。有罪が続く。
まるで「反体制」や「左翼」と呼ばれる人々を狙い撃ちしている印象を与えかねない。これでは、政治について声を上げ、それを伝達することすら、ためらいが生ずるのではないか。
多様な意見を自由に述べることこそが、民主主義の根幹である。
“良心の囚人”が増えれば、自由は必ず萎縮(いしゅく)する。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008041202003039.ht
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