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http://www.uekusa-tri.co.jp/column/2008/0408.html
コラム
日銀総裁人事についての補論(3)
4月7日、政府は空席の日銀総裁、副総裁について、白川方明副総裁の総裁昇格と渡辺博史元財務省財務官の副総裁就任案を国会に提示した。政府提案を受けて国会両院は4月8日に両候補に対する所信聴取を行い、民主党は同日夜の役員連絡会で白川氏の日銀総裁昇格賛成、渡辺氏の副総裁就任反対の方針を決定した。
政治権力に支配されている権力迎合のマスメディアは一斉に民主党攻撃を開始しているが、民主党は画期的な決定を示した。戦後日本社会の基本構造となってきた「官僚主権構造」に初めて明確なくさびが打ち込まれた。歴史に残る快哉である。
日本が抱える最大の構造問題は「財務省を中核とする官僚主権構造」にある。(1)官僚機構が意思決定の実権を握り、(2)官僚機構が国民の幸福を追求せずに、自己の利益増大を追求し、(3)政治がこの現状を「改革」せずに「温存」していること、が問題の核心である。
D=道路、N=日銀、年金、A=あたご=防衛省、のDNA問題のいずれも上記の三つの問題に帰着する。財務省は財政収支改善のために何を優先してきたか。高齢者、障害者、母子世帯、生活困窮世帯、一般勤労者への政府支出を切り捨て、一般大衆の租税及び社会保障負担を増大させる一方で、天下り機関と天下り利権を死守してきた。
日本における財務省の保持する権力は突出している。巨大な財政資金の配分を決定する予算編成権、国税調査権、租税政策に関する政策立案権、国有財産の管理および運用の権利、金融庁を通じての金融業界に対する支配権、為替市場への介入権、証券取引の監視権限、経済政策の実質的な決定権限など、国家権力の主要部分を財務省が集中して保持し、財務省はその権力の維持増大に努めてきた。
構造改革が叫ばれて久しいが、財務省は日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、あるいは大手地方銀行頭取などへの天下り利権を温存し続けてきた。日銀幹部ポストは財務省にとって最重要の天下りポストであり、財務省とその利益を擁護する福田政権は、最後までこの利権維持に執着した。
ニュース報道において財務省が最大の情報源であること、新聞の再販価格維持制度の生殺与奪権を握る公正取引委員会が財務省支配下にあることなどを活用して、財務省はマスメディアを支配してきた。財務官僚に対する屈折した憧憬を抱くマスメディア幹部は、財務省所管の審議会委員に就任して財務省の意向に沿う世論誘導にいそしむことで臆病な自尊心を満足させてきた。
弱者を冷酷に切り捨て、官僚利権死守を優先してきた財務省こそ、相互信頼と相互扶助の精神に支えられた潤いのある日本古来の共同体社会、共生社会を破壊し、日本を市場原理主義に基づく弱者切り捨ての格差社会に変質させた影の主役であり、その政策路線を全速力で推進した表の主役が小泉政権以来の歴代政権である。
今回の日銀人事における白川方明氏の総裁昇格は適正な提案である。白川氏は金融政策のみならず金融システム問題に対する造詣も深く、実務能力、学識、言語能力、海外の人脈、人格などのあらゆる側面において、日銀総裁職を任ずるに十分な資質を備えた人物である。
財務省出身者を日銀幹部に就任させないルールの確立は、財政当局からの日銀の独立性を担保する最も確実な手法である。財務省出身者の日銀幹部への任用をルールとして排除することを、中央銀行の独立性を担保するための「セーフティーネット」と理解するべきである。
欧米では財政当局の幹部を経験した人物が中央銀行総裁に就任している事例が見られるが、日本とは事情が大きく異なる。日本では財務省出身者が財務省退官後も財務省との強い連携関係を有しており、政策運営にあたっても強い影響を受ける蓋然性が極めて高い。財務省出身者の再就職、再々就職などに財務省が深く関わっていることも、財務省と財務省出身者との強固な関係を如実に示している。
空席になる1名の副総裁には財務省出身でない人物を充当するべきだ。日銀出身者が日銀幹部に複数登用されてもまったく問題はないが、これを避けるなら、中立公正の立場を守っている経済学者から登用すべきだ。植田和男東大教授(元日銀審議委員)は基準に叶う人物であり、有力な候補者と考えられる。
日銀幹部人事に際しては、もとより、純粋に日銀幹部としての資質のみを考慮して人選を進めるべきであった。日銀幹部人事がここまで混乱したのは、ひとえに政府が財務省の利益を優先して検討を進めたことに原因がある。財務省は日銀幹部ポストを最重要の天下り利権と位置付けるとともに、財政当局による実質的な日銀支配の実現を重視していると考えられる。
福田政権が純粋に日本銀行の独立性を重視し、日銀幹部に求められる資質のみを考慮して人事を検討したなら、政府提案の人事案が民主党をはじめとする野党の意向と対立することは回避されたはずだ。財務省の利権擁護を優先した政府の姿勢こそ糾弾されるべきである。
政権末期症状を示す福田政権は、支配下のマスメディアを動員して激しい民主党攻撃、小沢一郎氏攻撃を継続すると考えられる。民主党はメディア・コントロールの策略に嵌ることなく、国民の利益を優先する王道、正道を進むべきだ。
次期総選挙を通じて政権交代が実現すれば輝く日本の未来が開ける。今回の日銀人事における民主党の行動は、新しい日本社会が実現した際に金字塔として必ず再評価されるものと確信する。日本復興を追求する心ある有権者は、智慧と勇気に溢れる民主党の意思決定を全力でサポートしなければならない。
2008年4月8日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草一秀
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