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リベラル!! リベラリスト(自由主義者) 白川勝彦Webサイト HOME
永田町徒然草 No.762
いま自公“合体”政権やマスコミはガソリン税の暫定税率を定めている租税特別措置法改正案は、4月29日以降すみやかに再可決されガソリンの価格は元に戻ると盛んにいっている。本当にそうなのか。話はそれほど簡単ではない。今日の話はちょっと細かいが、日本語さえ読めれば決して難しいことをいっているのではない。こういう議論をしないと暫定税率の廃止はできない。 いま問題になっているガソリン税の暫定税率に関係する租税特別措置法改正案(以下、本改正案という)の条文を見てみよう。関係する条文はたった2条しかない。
今日論じるテーマに関係する部分だけ太字にしておいた。残りの部分はガソリン税の税額を去る3月31日まで引き上げていた規定である。条文では1キロリットル当りの税額が書かれている。これを1リットル当りの税額に直せば、毎日報道されているとおりだ。すなわち、揮発油税は本則税率の24.3円/リットルが48.6円/リットルに、地方道路税は本則税率の4.4円/リットルが5.2円/リットルに“暫定的”に引き上げられいたのだ。本則税率とは、「揮発油税法第9条及び地方道路税法第4条」に規定されている税額のことである。 さて本改正案が参議院の賛成多数で可決あるいは衆議院の3分の2以上の賛成多数で再可決されたとき、これは法律になるのである。そうすると法律の条文からあり得ない事態が生じることになる。それが現在の状態なのである。平成20年4月1日からこの法律が施行される日までこの状態が続くのである。だからこれは“夢か現か幻か”といったのだ。 この法律が成立した場合、条文だけからいえば「4月1日から施行される」というのであるから、この法律によれば現状は“夢か幻”ということになる。だが福田首相も混乱とか困ったことだといってはいるが、さすがに“夢か幻”と断ずる度胸はないようである。いま4月1日に遡ってガソリン税の暫定税率が課せられると主張する者はいない。誰もが国民に税の負担を遡って課すことはできないと考えている。それは結構なことである。 憲法39条前段は、「何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない」と規定している。これは刑事罰について不遡及を定めている条文である。租税に関しても同じような不遡及の原則があると考えられている。税を課すことは、それほど重要かつ厳粛な行為なのである。 それではこの法律によれば、ガソリン税の暫定税率はいつから国民に課せられることになるのか。この法律を眼光紙背に徹っして読んでも「○月○日から課せられる」と読取ることはできない。税法にとって、課税の始期と終期はきわめて重要なことである。実際にこの法律が成立した場合の始期はいつになるのか。いろいろなことがいわれているが、それはすべて解釈上の意見である。解釈上の意見など論者によって異なる。そうすると始期は法律上明確でないことになる。始期が条文上明確でない税法は、明らかな欠陥法律である。 参議院で審議が始まった本改正案は、現在では明らかな欠陥法案である。このような欠陥が生じたのは、野党が審議をしてくれなかったと自公“合体”政権はいうであろう。だから野党がそのことを指摘するのはおかしいという人もいるであろう。だが、それは政治的な理由になっても法律的なエキスキューズにはならない。法律論としては、あくまでも法律の論理として筋が通っていなければならないのだ。法律論として筋が通らない条文のある法律案を審議することは、国会として真面目な態度ではない。政府与党がまずやらなければならないことは、法律的な欠陥のない改正案を提出することである。 ガソリン税を再び元の暫定税率に引き上げることを内容とする本改正案には、法律として明らかな欠陥がある。本改正案を提出した政府与党は、税が課せられる始期が明確な法律案を国会に提出する義務がある。それは国民に対する義務である。税法として重要な欠陥のある本改正案を審議したり可決することなど、国会としてできないのだ。俗な言葉でいえば、“顔を洗って出直して来い”ということだ。政府与党は、どこからつかれても“ベスト最高”の予算案や法律案を国会に提出する義務がある。それもできないで、最後は衆議院の3分の2以上で再可決すればよいというのであれば、それはもう暴力団と同じだ。こんなことを許しては、わが国はもう終わりだ。 |
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