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【メディアの「鈍感さ」が事態を悪化させている】後期高齢者医療制度と憲法的観点
http://www.asyura2.com/08/senkyo48/msg/957.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 4 月 03 日 23:08:35: twUjz/PjYItws
 

http://www.news-pj.net/npj/maruyama/index.html

◎後期高齢者医療制度と憲法的観点

  メディアの「鈍感さ」が事態を悪化させている


  朝日新聞は、3月27日の生活面と28日の総合面で、4月1日からの後期高齢者医療制度を大きく取り上げ、その制度の問題点にも触れながら、新制度を解説した。「どうしていまごろ?」 と思わせる記事だが、それなりに、「野党などからは早くも 『うば捨て山だ』 という批判にさらされている」 と書いて、「お年寄りが受ける医療サービスの行方」 からの 「心配」 を紹介している。
  新年度に入って、この制度が実施され、70−74歳の病院窓口負担は現行の1割負担から2割へ、65−74歳の国民健康保険料は年金から天引きされることになったが、この問題、メディアの取り上げ方の 「鈍感さ」 が、ここまで事態を悪化させてしまったように思えてならない。

  率直に言って、私自身、この問題に気づかされたのは、そんなに古い話ではなかったのだが、2006年5月の法律の成立以来、この問題がどう書かれてきたかをトレースしてみると、いかに新聞がこの問題について冷淡だったか、憲法的視点を欠いていたか、その結果、問題の本質を捉えていなかったか、がよく分かる。
  早い話、憲法14条は 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」 と規定し、「法の下の平等」 を決めている。確かにこの条項には 「年齢」 は例示されていないが、欧米の多くの国で雇用についてさえ、年齢による差別が禁止されていることを考えると、何の合理的な理由もなく、ただ年齢だけで75歳から一般の健康保険から切り離し、ほかの制度に移すことなど、憲法的視点から考えれば、全くおかしなことである。まして、問題は 「健康で文化的な生活」、「生きる権利」 に関することである。

  この制度は、2005年10月の厚労省の試案に始まり、2006年2月の閣議決定、5月の 「医療改革法」 成立で決定された。
  この経過の中で新聞は、少なくともいくつかのデータベースや縮刷版で調べた限りでは、「後期高齢者医療制度を新設」 と書いてはいるが、その内容については、ほとんど報道しないままだった。社説でも、何回か取り上げているが、結局、議論は財政負担の問題に流れ、最も本質的な 「75歳以上の高齢者を別制度に移行させる」 ということが、どういう意味を持つのかについては、全く論じられていないようだ。
  昨年来、「見直し」 が論じられるようになり、投書欄でも論じられたり、地方での動きが報じられたりしているが、社説に関して言えば、地方紙の一部が論じているほか、東京新聞が3月29日に 「高齢者医療制度 見直しをためらうな」 と題する社説を掲げたのが目立つ程度で、大手紙の社説には登場しないままだった。
  とくに、2月28日、4野党がこの制度自身を廃止する法案を提出しているが、これについても、一般紙には東京新聞で26行、朝日が15行、毎日が7行のベタ記事がある程度で、報じられず、法案は店ざらしのままになっている。
  見直しを求める地方議会の決議は、「しんぶん赤旗」 3月23日付によれば、530議会、署名も中央社会保障推進協議会や日本高齢 ・ 退職者団体連合などの分を合わせてると、500万人分を超えたという。3月23日、東京・井の頭公園で12000人が集まった集会が開かれ、参加者たちは 「いのち」 と書かれた黄色のプログラムを一斉に掲げて抗議したが、一般紙に報道は全くなかった。27日には、4野党による集会が開かれ、これも赤旗の報道では400人が集まり、民主党の菅直人代表代行、共産党の志位委員長、社民党の福島みずほ党首、国民新党の自見庄三郎副代表、新党日本の田中康夫代表があいさつしたというが、この報道も一般紙にはなかった。

後期高齢者集会 井の頭公園で開かれた集会には、12000人が集まった 2008.3.23


後期高齢者集会 「いのち」 を掲げて訴える参加者たち 2008.3.23

  他の学問領域でも同様なことはあるだろうが、マスメディア研究をする中で、あるテーマについて、報じられていること、論じられていることの是非は、さほど難しくないが、最も困難なのは、「報じられていないこと」 「論じられていないこと」 を実証し、「なぜか」 をさぐることである。この作業には、そのテーマについてのそれぞれの専門家や、現場のジャーナリストの協力がどうしても必要だ。そして、その作業自体がジャーナリズム活動だろう、と私は思う。

  日本ジャーナリスト会議 (JCJ) と、日本マスコミ文化情報労組会議 (MIC) による 「憲法メディアフォーラム」 は、4月19日 (土) 午後、東京・両国のKFCホールで、「憲法25条・生存権とメディア」 について、都留文化大学の後藤道夫教授、首都圏青年ユニオンの河添誠書記長、NHKスペシャル 「ワーキングプア」 の取材班の板垣淑子ディレクターをパネリストに、シンポジウムを開く。
  改めて、生存権とメディアの責任を考えてみたい。


2008.4.1

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