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【予言:福田は暫定税率を復活できない!】ガソリン値下げの既成事実で政治の流れが変わる【JANJAN】
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投稿者 傍観者A 日時 2008 年 4 月 02 日 16:26:10: 9eOOEDmWHxEqI
 

ガソリン値下げの既成事実で政治の流れが変わる

田中良太 2008/04/02

政府は暫定税率延長の再議決はできない。自民から「造反」議員が出るのは必至だからだ。日本人は既成事実に弱い。いったんガソリンが値下げされれば、それが既成事実となり、戻らない。民主党が暫定税率廃止最優先の戦略を考えるさい、この点に着目して作戦を立てたのなら、見事だ。福田政権は連休明けに危険水域に入るだろう。
日本 財政 NA_テーマ2

目 次
 (P.1)
http://www.news.janjan.jp/column/0804/0804014042/1.php
 ◆「暫定税率は復活しない」とあえて予言する!
 ◆既成事実がモノをいう社会
 ◆スジ論なら廃止か本則税率アップの二者択一
 ◆既成事実が歴史をつくった!
 ◆日米開戦の不条理
 ◆野党が既成事実をつくれたワンチャンス

 (P.2)
http://www.news.janjan.jp/column/0804/0804014042/2.php
 ◆「復活」宣言は福田だけ
 ◆政権は危険水域に
 ◆民主政治が分かっていない新聞論調
 ◆地方首長は役人の論理だけ
 ◆メディアは官僚支配の秩序がお好き?

◆「暫定税率は復活しない」とあえて予言する!
 とうとう記念すべき4月1日を迎えた。政府・与党が実現させたくないガソリン値下げが実現したのである。

 もの書きのはしくれだから、下手な予言は慎まなければならない。予知能力はもちろんないのだから、推測ということになる。その推測が外れたら、書くもの全体の信ぴょう性が疑われてしまう。

 その禁を犯して、あえてこの段階で書いておこう。暫定税率を延長する法案を衆院で再議決することはできない。自民党議員の中から「造反」が出て、3分の2以上の多数が得られない。その情勢をあらかじめ読んで、3分の2再議決を放棄するか、それとも賛成票が3分の2を下回ることを覚悟で、改めて衆院本会議で議決するのか。福田康夫政権は苦しい選択を迫られるはずだ。

◆既成事実がモノをいう社会
 どうして造反者が出るのか。日本人は既成事実に弱いからだ。「日本人は……」と書きたくないから、日本社会では既成事実が幅を効かすから、と改めよう。

 既成事実がモノをいう社会だからこそ、暫定税率が34年間も生きてきたのである。揮発油税などに暫定税率を創設する租税特別措置法改正が成立したのは1974年の通常国会。田中角栄政権下で蔵相は福田赳夫だった。衆院大蔵委員長は安倍晋太郎で、委員会採決に先だって賛成討論したのは小泉純一郎だった。現在政界のスターたちの父親たちが主役で、かろうじて脇役に小泉が登場しているという情景である。

 福田赳夫が提案理由の説明を行ったが、「資源の節約、消費の抑制、道路財源の充実」が3本柱だった。

 前年10月、第4次中東戦争が起き、石油輸出機構(OPEC)がイスラエル支持国への対抗措置として、原油価格引き上げ・供給削減などの石油戦略を発動した。第1次石油ショックである。日本中のスーパーで、主婦たちがトイレットペーパーを奪い合う騒ぎになった。

◆スジ論なら廃止か本則税率アップの二者択一
 この特殊な状況下で「暫定税率」が上乗せされたのである。日本の社会が、既成事実よりもスジ論を重んじるのなら、その後の措置として

 (1)その特殊な状況は解消されたのだから暫定税率は廃止

 (2)道路整備に要するカネは、「上乗せ」分がなければまかなえないことが分かったのだから本則税率を上げる

 のどちらかが選択されたはずだ。

 しかし現実には、74年度に始まった暫定税率が、その後3度の引き上げと7度の延長を経て、2007年度まで続いていたのである。その長期間、政治は、廃止かあるいは本則税率の引き上げかを選び、スジの通った制度に移行するエネルギーを持ちえなかったといえる。特殊事情がなくなったのに、「暫定」を続けるという非合理的な状況を長期間続けてきたのは、政治の無力ぶりの証明でもある。

◆既成事実が歴史をつくった!
 政治も言論も既成事実に弱い体質は、日本にとって深刻な問題である。第2次大戦への参戦(日米開戦)への道も、1931(昭和6)年9月、関東軍が引き起こした満州事変という既成事実が発端だった。事件は関東軍参謀だった板垣征四郎大佐、石原莞爾中佐、花谷正少佐らが筋書きをつくり、河本末広中尉と部下数人が鉄道爆破を実行したものであった。ときの政府(第2次若槻礼次郎内閣)は「不拡大方針」を表明したが、関東軍は守備範囲を超えて吉林省へ進撃を開始し、朝鮮軍司令官の林銑十郎も、独断で朝鮮軍を満州へ派兵、「越境将軍」と呼ばれることになった。

 中国の主権を無視した満州における日本の行動は、国際社会の批判を呼び、国際連盟によるリットン調査団の派遣という事態を招いた。それに対して陸軍は、満州国建国(1932=昭和7年3月)へと突っ走った。33年2月、国際連盟はリットン報告書を承認、満州国不承認の対日勧告案を決議。当時の日本政府(犬養毅内閣、外相は満鉄総裁だった内田康哉)は国際連盟脱退に踏み切った。総会議場で連盟脱退を宣言、そのまま退席した松岡洋右代表は、帰国のさい歓呼の声で迎えられた。

◆日米開戦の不条理
 満州事変という独断専行が「国策」として追認され、最終的には日米開戦にまで発展してしまった。1941年の開戦時、米国と日本の国力の差はあまりに大きかった。国民総生産は11.8倍、粗鋼生産で12.1倍、航空機生産で5.2倍、商船建造で5.0倍だったという。それなのに当時の支配者たちは「今後ABCD包囲網(※注参照)によって、この格差はもっと大きくなる。相対的にはいまが有利」という奇妙な理屈で開戦を決めた。つまり当時の支配者であった軍部は、勝利の展望が皆無である「敗戦必至の戦争」に日本国民を引きずり込んだのである。

 (注)Aはアメリカ、BはBritainで英国、CはChinaで中国、DはDutchでオランダ。これら当時の日本に対する資源供給国=英国はマレー半島、オランダはインドネシアなどを支配していた)が、資源供給をストップしているという認識にもとづく言葉。
 《(注)終わり》

◆野党が既成事実をつくれたワンチャンス
 今回民主党などが暫定税率廃止を最優先した戦略戦術をつくるにあたって、既成事実に弱い日本の政治と世論の体質がどの程度意識されていたか、私には取材する術がない。それにしても通常、既成事実をつくることができるのは、ときの政府や官僚、つまり支配者たちである。しかし暫定税率というシステムなら、参院で多数を占めるだけの野党でも既成事実をつくることができる。その点に着目して今回の作戦を立てたのなら、見事なものだという賞賛に値する。

◆「復活」宣言は福田だけ
 この無力な政治が、暫定税率の廃止という既成事実を元に戻すというパワーを持ちうるだろうか? 答はノーである。福田康夫がいくら頑張っても、自民党衆院議員全員が租税特別措置法改正案に賛成するとは思えない。

 国会議員たちは土日には選挙区に帰り、支持者の声を聞く。「諸物価値上がりの中で、ガソリンが安くなっているだけが救いですよ」という声ばかりのはずだ。1カ月も経てば、「元に戻すことは不可能だ」というのが、自民党内世論になる。

 福田は3月31日午後6時から記者会見して、「暫定税率を元に戻す」と宣言した。しかし自民党幹事長の伊吹文明は1日午前0時ごろからTBSの番組に出演、菅直人が「暫定税率をどうするのか?」と問い詰めたのに対して、逃げに終始し、ついに答えなかった。伊吹は暫定税率復活の困難さを意識しているのである。

 じっさいに租税特別措置法改正案の衆院再議決は29日以後になる。早くも連休明けに持ち越しなどの観測が出ている。いずれにせよ、造反議員を出さないためには、05年の小泉政権下の郵政解散・総選挙のときと同様の強い姿勢が必要となる。小泉政権とは質が違う福田政権は、「造反なら除名」と口先だけの脅しをかけることすら不可能だろう。

◆政権は危険水域に
 福田は租税特別措置法改正案の衆院再議決を実現できない。他方、民主党に対してだけでなく国民に約束した形になった道路特定財源の一般財源化(09年度から)も、道路族の抵抗によって実現できない。連休明けには、政権の危険水域に入るであろう。

 そこで自民党はどうするのか? 来年の総選挙は公明党が受け入れないというのが政界の定説である。これまでは今年秋の解散・総選挙だと言われてきた。民主党は「5月総選挙」を目指している。

 福田では総選挙に勝てないだろうから、自民党は総裁をすげ替えたいだろう。しかしすでに安倍、福田と2代にわたって衆院総選挙の洗礼を受けない政権が続いている。しかも直近の国政選挙は昨年7月の参院選で、与党の自公は敗北している。この状況下で、3人目の選挙の洗礼を受けない首相をつくるのは、大きな批判を招くはずだ。

 総選挙は5月でも9月でも、福田が首相であることは変わらないだろう。過去何人かいた「応援に来てくれるなと断られる首相」に1人加わることになる。自民党候補が応援に呼びたいのは、小泉である。あるいは総選挙後、小泉が政権に復帰する可能性が出てくるかもしれない。やってはいけない予言は、以上で終わろう。

◆民主政治が分かっていない新聞論調
 この間、政治について、あるいは税について、さまざまな論議が行われた。新聞論調を読めば読むほど、日本の政体は民主主義ではないという思いを強くした。

 暫定税率廃止を「混乱を招く」という理由だけで否定する論調がまかり通った。一つの制度を変更して、移行期の混乱が皆無だということはありえない。多少なりとも混乱は生じるのである。「混乱がないこと」を最優先するなら、変更は不可能になる。もちろん改善も変更である。多くの新聞社説は「どんな不合理な制度でも混乱を招くから変更してはいけない」という主張と同じだった。

 暫定税率廃止を優先した民主党の姿勢を「無責任」と断じた社説も多かった。その執筆者たちは憲法84条を読んだことがあるのだろうか? 「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」である。

 暫定税率維持を前提にして予算をつくり、成立させたのは政府与党である。衆院多数という数の力と、予算・条約については衆院議決の優位という憲法の規定によって、民主党など野党の意思は反映できなかった。

 予算が成立したから、その財源となる税制の立法に反対するのが「無責任」というなら、衆院で単純多数を握るだけの与党が、予算に盛り込むことによって、いかなる重税を課すことも勝手にできることになってしまう。二院制のルールに従って、租税特別措置法改正案を成立させないことが「無責任」などというのは言いがかりにすぎない。

「政争の具にするな」という言葉も、ひんぴんと使われた。民主主義の政治は、何ごとも政争の具なのである。自分たちが正しいと思ったとおりに行動し、次の選挙で国民の支持を求める。そういうパフォーマンスを否定するのは民主主義も、その担い手である政党も否定することに直結する。

◆地方首長は役人の論理だけ
 もう一つ、地方自治体の対応にも失望した。この件で「地方6団体」は活発に発言したが、行政を執行するお役所の論理を展開するだけだった。「暫定税率廃止なら地方の財源に穴が空く。だから困る」一色だったのである。揮発油税の上乗せ分を課されなくなる県民・市民の立場を反映した発言は皆無だった。

 宮崎県知事の東国原英夫を含めて、自分の選挙のときだけ「県民・市民の味方」で、知事・市長などに就任すると役人の論理を振り回す存在であることがはっきりした。暫定税率なしが定着した段階での彼らの言動はどうなるか? 注目したいところだ。

◆メディアは官僚支配の秩序がお好き?
 新聞論調に戻ろう。社説執筆者たちのアタマは、深層のところで官僚統治礼賛なのである。官僚にまかせておけば、混乱は起きない。また予算は成立したのに、財源となる税法が成立しないといった矛盾も起きない。その整った姿を礼賛し、国民主権の原理を押し通すことによる混乱や矛盾を嫌うのが、彼らの深層意識だ。混乱と矛盾を引き起こす国民主権は嫌いということになる。

 最後に、1日付各紙の社説を掲げておこう。1面コラムも、ガソリン税がらみのものは掲載しておく。私の新聞論調批判が正しいかどうか? 参考資料としてお読みいただきたい。

▼朝日=立ちすくむ政治―この機能不全をどうする、天声人語
http://www.asahi.com/paper/editorial20080401.html?ref=any#syasetu1
http://www.asahi.com/paper/column.html
▼毎日=ねじれ国会 有権者が動かすほかない、余録:エープリルフール
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/
http://mainichi.jp/select/opinion/yoroku/
▼読売= 「暫定」期限切れ 「再可決」をためらうな
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080331-OYT1T00817.htm?from=any
▼日経=再可決して一般財源化の公約を果たせ、春秋
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080331AS1K3100431032008.html
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20080331AS1K3100331032008.html
▼東京=ガソリン値下げ 混乱の抑制へ万全を、筆洗
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2008040102099988.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2008040102099989.html
▼産経(主張)=4月混乱 まともな政治取り戻せ、産経抄
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/080401/fnc0804010301002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080401/stt0804010258001-n1.htm

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