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ニセ米ドルとニセ金塊が物語るマーケットの未来
注目を集める商品(コモディティー)の価格動向
金(ゴールド)、原油、そして穀物。商品(コモディティー)価格の動向に注目が集まっている。特に金は一時、1オンスあたり1,000ドルを超え、原油は1バレル=111ドルを超えるなど高騰を見せたが、その後大きく下げる荒い動きとなっている。
原油と金にはいくつかの共通点がみられる。第一に、中東における地政学リスクの増大が価格の押し上げ要因になってきたということ。世界最大級の産油地域である中東が火ダルマになることがあれば、原油供給は大いに滞り、その結果、世界経済全体が火ダルマになる。そのことが見えているから人々は原油を買い、またいざという時に備え、「有事の金(ゴールド)」を買っているのだ、といわれてきた。
また、米ドルの価値下落も忘れられない。米国経済の不振を背景とした米ドルの下落が続く中で、米ドル建ての取引決済が基本である原油の価格は続騰した。米ドルの価値が下がれば、名目上の価格(米ドル建て)は上昇するに決まっている。その一方で、米ドルが価値を失った先のことを考えて、より普遍的に人々が欲しがる(であろう)金(ゴールド)への需要が高まってもいる、ともいわれてきた。
これらの説明は確かにもっともらしい。しかし、果たしてそこに落とし穴は無いのだろうか?世界中の至るところで引く手あまたのように見えた金(ゴールド)。そんな金をめぐって、暗雲を漂わせるかのようなニュースが舞い込んできた。エチオピアでニセ金塊が見つかったというのだ。
エチオピアで発見されたニセ金塊
エチオピアは、いわゆる「アフリカの角」と呼ばれる地域にある国だ。そのエチオピアの中央銀行が外貨決済用に備蓄していた金塊を南アフリカに持ち込んだところ、何と「ニセ金塊」であることが明らかになったのだという(3月13日付英国BBC報道)。
既に数百万ドルの被害が生じているが、事態はそれだけにはとどまらないようだ。エチオピア中央銀行に備蓄されている金塊全部をチェックしなければならない上、そもそもこのニセ金塊がどこから来たのかが分からず、場合によっては周辺各国にまで影響が及ぶ恐れが出てきているのだという。これは一大事だ。
ニセ金塊といっても、そうそう簡単に作れる代物ではない。今回のニセ金塊はかなりハイレベルなものであり、それ自体が希少金属として高価格なタングステンに、かなり分厚い金メッキが施されているものである。これは素人の手によるものではない。明らかに、かなりのプロによる仕業としか考えられないのである。
「ニセ米ドル事件」との不思議な共通性
商品市場の行く末を占うにあたって重要な、マーケットとそれを取り巻く国内外の情勢について、私は4月5・6日には大阪・名古屋、4月19・20日には東京・横浜でそれぞれ開催する無料学習セミナーでじっくりお話できればと考えている。その際、この問題についても取り上げることになるだろう。
ちなみにこの関連で気になって仕方がないことがある。それは1月に上梓した拙著『北朝鮮VS.アメリカ 「偽米ドル」事件と大国のパワーゲーム』(ちくま新書でも言及した、いわゆる米国による「偽米ドル」事件・自作自演説である。
精巧な「偽米ドル(スーパーノート)」をつくっているのは米国の情報工作機関であり、それは各国における協力者に協力の代価として支払われているというのが、欧州勢の主張であることを拙著でご披露した。
興味深いのは、この「ニセ米ドル」と「ニセ金塊」との不思議な共通性である。日本の大手メディアはあまり報じていないのだが、エチオピア、そしてその隣国のソマリアといえば、この1年余りにわたって米国、そして米軍が執拗なまでに手を出してきた国なのである。現に3月初旬には米海軍潜水艦より巡航ミサイルが発射され、ソマリアにいるという「イスラム原理主義者」への攻撃がなされた。しかし、1名の「テロリスト」を相手にそこまでの攻撃をなぜするのかが不思議で仕方ない。何かを隠しているとしか思えないのである。
そこに来て、金価格を取り仕切る英国勢のメディアBBCが今回の報道を流したのである。偶然といえばそれまでであるが、偽米ドル、そして北朝鮮をめぐっても英米間で協力関係があり、かつ利害衝突が明らかにあることを踏まえれば、単なる「偶然」と割り切ってしまってよいのかが気になるところなのである。
ちなみに、米国が「北朝鮮による『偽米ドル』事件」を喧伝し始めた2005年頃よりドル高が徐々に進行し始め、その後、ドル安へと暴落が始まった。そして去る3月17日、NY市場で金先物価格が大幅に下落し始めたのだ。原油についても同様の下げが始まっている。「ニセ米ドル」と「ニセ金塊」の不思議な因縁を感じる者にとっては、とりわけ金価格の今後が引き続き気になって仕方がないことだろう。まさに「歴史は二度繰り返す」なのだ。
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