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[3196]一か八かの「四月大改造」(副島隆彦の学問道場)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 3 月 23 日 17:28:05: twUjz/PjYItws
 

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[3196]一か八かの「四月大改造」 投稿者:土井1010投稿日:2008/03/23(Sun) 12:27:13

会員誌FACTA詩より貼り付けます。
(貼り付け始め)

風雲急を告げる緊迫国会。伊吹幹事長まで公然と改造不可避と言い出した。これが不発ならいよいよ総辞職か。
http://facta.co.jp/article/200804059003.html
2008年4月号 [遠のいた大連立]

「大連立構想は消えていない」

政界がそう見なしてきたのは、ひとえに福田康夫首相と民主党・小沢一郎代表の2人が、腹の内では依然、それぞれの苦境を打開するには大連立しかないと考えているはず、と信じられてきたからだ。

表向きは、福田首相が今も人から問われるたび「小沢さんが党に持ち帰って、あんな総スカンを食うとは思わなかったんだが……」と未練を隠さないのに対し、小沢氏は党内の反発を慮(おもんぱか)って「皆がダメだというものをやることはない」と否定してきたという違いはある。しかし、今年1月の新テロ特別措置法成立から、ガソリンの暫定税率を一時延長する「つなぎ法案」の取り下げに至る経過を見ても、自民・民主の関係は基本的に対決より妥協を優先してきたことは明らかだ。

このしどけない連携は、どちらも政局観のおおもとが「早期解散回避」で一致しているために成り立っている。自民党には内閣支持率が低落するなか選挙をしても、法案再議決に必要な衆院の「3分の2」議席という特権をみすみす失うだけ、という防衛意識が働いている。民主党のほうは選挙に勝ちはしても、直ちに民主党政権樹立の成算がない以上、早期解散はしょせん一時の現実逃避にすぎないという諦念にとらわれている。本気で追い込む気もないのに時々思い出したように「解散」を口にするのは、野党の存在意義を見失いがちな自分たちへの暗示みたいなものだ。

ボルテージを上げた小沢

解散はないのに、それに代わる政局展望もない。「いきなり大連立は怖いけど、中連立や小連立、政策協議でもいい。国会運営を何とかしなければ」という焦りは、自民党のみならず民主党の潜在意識にもある。皆で大連立を潰しておきながら、辞意を表明した小沢氏を総出で引き止めたのが何よりの証拠だ。

エネルギーに満ちた政党なら不埒な「ボス交」に走った党首は引きずり下ろして別の路線へ突き進んだだろうに、そうはしなかった。その甘さが、未練がましい「福田・小沢」関係を黙認し、「2人は大連立を諦めていない」という観測を引きずる温床にもなっていた。

しかし、そうした大連立幻想も賞味期限切れが近づいてきたようだ。与党が2008年度予算案の衆院採決を強行し、日銀総裁人事で民主党が嫌がる武藤敏郎副総裁の昇格案を突きつけた軋轢は、年度末国会がこれまでのような「偽装対決」のなれ合いでは乗り切れないことを示している。

道路特定財源をめぐる修正協議も、「全額一般財源化、暫定税率全廃」の原則論を掲げる民主党とのすり合わせは生半可ではできない。福田首相が大連立構想に再着手する次のタイミングは、3月政局を協調ムードで乗り切った暁にこそ訪れるはずだったが、現実はそちらへ向かっていない。福田首相は「イージス艦あたごの問題処理に手間取っちゃって……」という子供じみた言い訳をするが、原因が政権・与党内を掌握できていない首相自身のリーダーシップ欠如にあるのは明らかだ。

何せ指揮系統や戦術が定まっていないがためのつまらない行き違いが多すぎる。政局の転換点となった2月29日金曜日の予算案強行採決も、伊吹文明・自民党幹事長が年度内成立を確実にしようと、杓子定規に2月中の衆院通過にこだわりすぎた結果だ。

大島理森・同国対委員長がベテランらしく柔軟路線を進言した。「週をまたいで3、4日遅らせるだけで民主党の顔も立ち、信義上の貸しも作れる。文句は言っても参院審議には出てきます。無理押ししたら1週間は空転するので、結局は日数的に苦しくなりますよ」。だが、伊吹氏は「担保もなしに冒険はできない。何なら一筆とってきなさいよ」とにべもなかった。

「伊吹さんは生家が京都商人で自身が元大蔵官僚だから、証文のないカネは出さない主義。せっかく経世会(旧竹下派)仕込みで職人気質の大島さんが、民主党の山岡賢次・国対委員長を窓口に、同じ経世会文化の小沢さん相手に信用取引で事を運ぼうとしたのに、銀行屋みたいな上司が潰した」(自民党国対幹部)

採決強行を境に小沢氏の物言いは一気に険しくなり、「つなぎ法案」取り下げ後は「解散は早くても秋以降」と明言していたほどだったのが、一転して「今国会中の解散を目指す」とボルテージを上げた。

もちろん、まだ本気ではない。早期解散発言と同時に、それまで容認をほのめかしていた日銀総裁の武藤敏郎氏昇格に反対をぶち上げたことからも分かる。提示直前の武藤反対論は、小沢氏から福田首相に向けたSOSのサインだったのだ。「採決強行とは何てことをしてくれたのか。道路論議の妥結という3月末の仕上げに向けて、もっときめ細かく野党への気配りを積み上げてくれないと、すぐ跳ね返りたがる民主党内がついて来ない。次のテーマで民主党への配慮を分かりやすいメッセージで発してくれ」。推測するに、これが小沢氏の真意だったのだろう。大連立失敗で統率力が落ちた小沢氏は、信用取引でいったんは大連立合意に達した福田首相との関係を、くすぶる大連立幻想として逆手にとり党内掌握の材料に利用している。それだけ苦しい状態にあるわけだ。

にもかかわらず福田首相が武藤昇格案を提示したのは、余裕がない状態では同じだったからだ。国際金融の観点からは「英語が流暢に話せない、金融の専門知識がない、国際的な知名度もない」と無い無い尽くしの武藤氏が、それでも「本命」であり続けたのは、財務省が副総裁就任時から5年越しで日銀、経済界、政界に働きかけて「本命のための本命」に仕立て上げてきた人事工作の作品だからである。

もはや大連立のパワーなし

小泉・安倍政権で乱発された民間人登用がことごとく失敗する中、体制内人事秩序を再建、護持するという至上命題のシンボルという以外、武藤氏でなければならなかった理由は見当たらない。といって、平素から「関係者に気を配りすぎる」と評判の福田首相に、国内各方面からの武藤氏推薦の圧力を振り払ってまで、独自の名前を持ち出すだけの人脈やエネルギーがあるはずもない。

武藤氏の義父は故橋口収氏。旧大蔵省主計局長、国土事務次官、公正取引委員長、広島銀行頭取・会長を歴任。30年以上の昔、同期の故高木文雄・主税局長(後に国鉄総裁、横浜みなとみらい21社長を歴任)と大蔵次官のイスを争って敗れたが、当時、高木氏は田中角栄元首相、橋口氏は福田赳夫元首相が後ろ盾になったことで「角福代理戦争」と話題を呼んだ。「福田康夫首相は武藤氏に、互いの親子2代にわたる借りを返そうとした」。こんなまことしやかな因縁話も一部で語られたが、福田首相は「バカバカしい。そんな考え方をするほうがおかしい」と打ち消し、武藤氏の評価も「個人的にはあんまりよく知らない。ま、手堅い奴だよな」とクールだったというから、なおさらだ。

むしろ武藤案提示の真意は、福田首相の窮状が投影された、出たとこ勝負に近かったと見るべきではないか。小沢氏のSOSサインにも救命ブイを投げ返す余力がなかった。ここでかりそめに互いに手を差し伸べ、どうにか3月末を乗り切ったところで、大連立合意を交わした2人にはすでに大連立協議を立て直すだけのパワーはない。福田首相が4月以降も政権を維持するには、一か八かの大幅な内閣改造に踏みきらざるをえないだろう。

1月の改造見送りは、4月以降の大連立再燃に望みをつなぎ、一度合意した民主党の閣内入りにもなお備えているという構えを見せるためだった。しかし、もはやその気遣いも無用なら、さらに逆算して日銀総裁人事での配慮も今後の政局展開にはほとんど役に立たないということだ。そこには「ダメだったらそれまで」という開き直りがちらつく。福田首相の政局運営の裏面には、今や最悪なら総辞職という選択肢が張り付いている。

小沢氏がノーと明言した人事案を正面切ってぶつければ、民主党は予告どおり否決せざるをえないことを織り込んでいたとも考えられる。財務省、日銀、経済界、与党がこぞって推す人を提示したことで、そちらへの義理は果たしたことになる。結果、武藤総裁にならなかったとしても、それは同意人事という国会のルールに沿った与党の正当な政治手続きによるものだ。制度的には衆院3分の2再議決の裏返しと同じで、首相の力が及ぶところではない。

さながら「追い込まれ改造」

政府と日銀の権威、武藤氏の名誉は多少傷つくが、民主党も参院第1党の力を見せつけることができる半面、政略優先との批判を浴びてマイナスも背負うから、再提示案には速やかに同意するはずだ。予算案衆院通過の採決強行で損ねた民主党の機嫌を、もう一度取り戻すことができる。自民党内にちらつく強気に衆参ねじれの怖さを再認識させることもできる。痛み分けの機運を上手に道路の修正協議につなげれば、3月末政局を辛うじて乗り切れるかもしれない。そう転んだ場合、武藤氏は結果的に体のいい「捨てカード」だったことになるが、ねじれ国会になる前から「本命」と決め込んできた予定調和手法の限界であり、同情は無用。そうなる場合も予め読んだうえでの武藤案だったと推測してもいい。

さて、そうなっても再び大連立への弾みがつくことにはならない。財務省、経済界、与党の推した日銀総裁候補の「本命」すら通せない政権は、端的に弱すぎるからだ。大連立で補強するには権威も力もない点で変わりはない。仮に、大連立含みの展開をたどったとしても、福田首相は相当思いきった政権の立て直しを迫られる。やはり内閣改造は避けられないだろう。必然的に大連立はさらに遠ざかる。現在、福田首相がもっとも信頼して助言に耳を傾ける相手は、意外にも渡邉恒雄・読売新聞グループ本社会長だとされる。言わずと知れた大連立構想の「黒幕」だが、渡邉氏は最近「大連立は選挙後にならざるをえない。僕はもともとそういう考えだった」と言っているそうだ。福田首相の政局判断に影響している可能性は高い。

「だから思いきって1月に改造しておけばよかったんだ」。町村派幹部は福田氏の不決断を今更ながらなじる。「このままじゃ、そりゃ無理でしょう。何たって安倍前政権の居抜き内閣だから」。首相を支える役の伊吹氏までが、すでに公然と改造不可避を弁じ立てる。こうなると首相の人事大権発動というより、「追い込まれ解散」ならぬ「追い込まれ改造」というほうが実情に近い。

確かに現閣僚たちの面従腹背は目に余る。問題発言連発の鳩山邦夫・法相と経済無策の「戦犯」とも言うべき甘利明・経済産業相は、どちらも「ポスト福田」へ始動する麻生太郎元外相への支援をはばからない。甘利氏は、麻生氏に誘われて中川昭一・元政調会長、菅義偉・前総務相と共に「NASAの会」を作る。いずれも安倍晋三前首相に近かった面々である。空港外資規制法案の閣議決定をひっくり返し、先送りした渡辺喜美・行革担当相や大田弘子・経済財政担当相も、「安倍シンパ」であることは隠しようもない。これでは獅子身中の虫がひしめく「虫食い内閣」に等しい。

現実味を増す総辞職

福田首相が自前で入閣させたのは、石破茂・防衛相と渡海紀三朗・文部科学相の2人だけだが、その石破氏は満身創痍の状態にある。ところが、「福田首相は改造に踏み切っても今のところ石破氏を代えるつもりはないらしい。なぜか防衛省を改革できる政治家は石破氏しかいない、と固く思い込んでいる」(首相周辺)というのだ。安倍前首相が選ばれた総裁選についに立候補せず「総裁選浪人」として過ごした時期、福田首相が夜の会食などに頻繁に石破氏を伴う姿が見られた。

さらに、福田政権のアキレス腱と言われている町村信孝・官房長官をどうするかも焦点だ。

官房長官在任最長記録が自慢の福田首相は、町村氏の仕事ぶりを「彼なりに努力はしているよ」と冷ややかに見ている。大連立合意から伊藤達也・首相補佐官起用まで政権の重要情報を伝えていないことが多く、信を置いていないのは明らかだが、町村氏も福田首相を支え抜こうという気迫に乏しい。とはいえ、「女房役」をわずか半年で交代させれば、改造しても屋台骨がガタつく。しかも「交代する場合の後任候補は、細田博之・元官房長官か衛藤征士郎・元防衛庁長官(共に町村派)といった地味めの名前が出ている」(町村派幹部)だけという。この分では大幅改造が行われても一時的な延命措置に終わる可能性が高そうだ。

解散を自ら封印し、改造も不発なら、いよいよ総辞職の現実味が増してくる。昨年9月、日本記者クラブで行われた自民党総裁選の候補者討論会で「トップリーダーに求められるものは」との質問に、麻生氏は「孤独に耐える力」と述べ、福田氏は「やっぱり決断でしょうね。それも辞めるときの決断というのが一番大事」と答えた。就任前に辞任の決断力を一番大事な資質に挙げるリーダーも珍しいが、福田首相にすれば美学の問題ということか。

官房長官辞任も前触れなく定例の記者会見で藪から棒に表明し、鞍馬天狗気取りに「風のごとく来りて、風のごとく去る」と言い残して去った。さすがに安倍前首相のような醜態は避けるにしても、あながち政権放り出しもありえなくはない。

小泉純一郎元首相、安倍前首相のような特定のキャッチフレーズを連呼するタイプではないため、すでにほとんど忘れられているが、福田首相は就任時、自ら「背水の陣内閣」を名乗り、「一歩でも違えば、自民党が政権を失う可能性もある」と述べた。わずか半年前のことである。福田政権は胸突き八丁に差しかかっている。

(貼り付け終わり)


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