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http://www.iwanami.co.jp/sekai/2008/04/pscript.html
少子高齢化が進行し、国が借金を膨張させ続けている現状を見れば、国民はいずれ負担増を迫られると分かっている。また国民の多くが望むのは「福祉重視」の北欧型社会である。しかし、増税には強い抵抗を示す。一見矛盾するが、そこにあるのは行政府への抜きがたい不信である (先月号山口二郎、宮本太郎論文参照)。不公正、不透明、自分たちの払った税金が訳の分からないことに使われ、きちんと還ってこないと感じている。 だから政府は、増税、負担増を国民に分からないよう、騙し討ちのように行なう (本号三木論文)。それがまた国民の不信と怒りを増幅させる。悪循環である。 逆にいえば、日本の財政危機を克服し、少子高齢化に対応するためは、こうした国民の不信を解く、行政府の真剣で徹底した努力が絶対条件になるということだ。 しかし、年金積立金や道路特定財源をめぐる国会の議論を聞く限り、それは絶望的だ。官僚の天下り先やポストの維持、利権、果ては私益のために、国民から集めたお金がぞろぞろ流用されている。公的なお金を私物化する官僚の意識、モラルが、まず正されなければならない。 それどころか、28の特別会計に178兆円もの予算がつき、100兆円を超す積立金(剰余)がある(本号前田論文)と聞くと気が遠くなる。財政が危機だと国民に窮乏を強いながら、一方には潤沢な資金がうなっている。こうした部分にもっとメスが入れられなければならない。 日本は労働の規制緩和などによって、80年代から2000年にかけて、貧困層が増えたOECD(経済開発協力機構)加盟国唯一の国である。00年には「相対貧困層」(可処分所得が平均の半分以下の世帯)が全世帯の15%を超え、OECD(平均10%)5番目の高さになった。 昨年1月に発表されたOECD経済局の報告(*)によれば、日本の税制や社会的支出は、格差や貧困問題に適切に対応できておらず、とりわけ現役世代の貧困層や一人親家庭への対応が急務という。 税制は社会保障などの給付と並んで、所得を再分配する機能をもっている。しかし日本においては、1990年に2.9%ジニ係数を改善していた(格差を縮小していた)税制が、度重なる改正によって、02年には0.8%の改善にしか寄与しなくなった。もともと小さかった税の再分配機能がほとんど消えたのである。 日本の社会的支出の特徴は、18〜65歳の現役世代の貧困層への対応が極端に手薄なことである。OECD平均では、当初所得で18.2%存在する現役世代の相対的貧困層が、税や給付などで9.7%下がり、可処分所得では8.4%に縮小する。日本では、当初所得で16.5%の相対的貧困層が、税・給付の後も13.5%が貧困のままだ (00年)。 ワーキング・プア激増の背景には、こうした政策的な誤り、社会設計のミスがある。さらに驚くべきは、一人親家庭を比較である。日本では83%の親が働いているにも関らず、58%の家庭が相対的貧困に陥っている。それは何と、働いていない一人親家庭の相対的貧困率(52%)よりも高い (00年)。他の国では、当然のことながら、一人親家庭の貧困は、ほとんどが職のない世帯の問題である。 日本の税制、社会的支出のあり方に、根本的な欠陥があるとしか思えない。政府は、一人親家庭への生活保護費から「母子加算」を段階的に削減すると決めている。困窮者へのこの苛斂誅求! 消費税増税など、議論するには早すぎる。 *“Income inequality, poverty and social spending in Japan”Economics Department Working Papers No556 |
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