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官僚組織に屈する政治家とメディア(天木直人のブログ)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 3 月 18 日 11:31:48: twUjz/PjYItws
 

http://www.amakiblog.com/archives/2008/03/18/#000769

2008年03月18日
官僚組織に屈する政治家とメディア
  

  私は13日のブログで、日銀人事をめぐる混迷が示す一つの大きな理由は、それが官僚組織の人事をめぐる予定調和の破壊と密接に関係しているからだ、と書いた。

  読者が私の意図をどこまで正確に理解したかわからない。だから今日のブログでは、最近見つけたいくつかの証言を引用して再び述べてみる。

  これは、私がキャリア官僚であったから書ける事である。しかしキャリア官僚が官僚を辞めたからといって誰もが書けるわけではない。官僚組織から決別して生きる覚悟をした者だけが書けるのである。

  「潮」という月刊誌の4月号に、田原総一郎が極めて興味深い事を明らかにしている。小泉首相にインタビューした時の小泉首相の言葉を紹介しているのだ。

   すなわち、道路改革や郵政改革を成し遂げた小泉首相に、なぜ公務員改革を行わなかったのか、と聞いた時、小泉首相は次のように田原氏に語ったというのだ。正確な言い回しは忘れたが、小泉首相の言ったことは次のごとくである。

   ・・・そんなこと俺には出来っこない。官僚すべてを敵にまわすことになる。それにメディアをも敵にすることになる・・・

   小泉首相の、この後半部分の意味について、ご丁寧に田原氏は次のように解説して見せてくれている。

   なぜメディアを敵に回すことになるのか。それは、官僚組織がつぶれてしまうと情報源がなくなる、官製情報に依存するメディアが文句を言い出す、メディアの仕事の邪魔をすることになる、ということだ、と。

   私はこの小泉首相の言葉を知ったとき、私が抱いていた小泉政治の本質を見る思いがした。つまり小泉政権とは、官僚組織とメディアを味方につけた三者による合作政権であったということなのだ。

   確かに小泉首相は自分の政策に背くような官僚を、見せしめのごとく更迭したことがあった。しかし、それはあくまでも個々の官僚の更迭であり、しかも彼が更迭したのは中枢官僚ではなく傍流官僚だ。

   弱小官僚の首を見せしめのごとく切って抵抗勢力と戦う姿を演じ、その裏で官僚組織と手を結んでいたのだ。小泉首相は決して官僚組織と戦おうとしなかった。

   メディアも同様である。世論に迎合する形で官僚批判はしてみせる。しかし、決して官僚組織を怒らせるような記事を本気で書くことはない。官製情報から締め出される事を恐れるのだ。

   政治家もメディアも官僚組織との良好な関係を維持しようとしている。その現実を、最近の報道からさらに検証してみたい。

   17日の毎日新聞「風知草」で山田孝男編集委員が、元衆議院議員田中秀征の次の言葉を紹介している。田中は副総裁・武藤を総裁に昇格させる政府案に次のように反対する。すなわち財務省出身の武藤の総裁を阻むこと、そのものに意味があるというのだ。

・・・昇格といっても実態は最強官庁である財務省からの天下り。それを認めないことで、霞が関改革が期待できる・・・

  これが正しい。私が繰り返し言っていることだ。しかし政治家を離れ、もはや評論家に徹した感のある彼だから言えることであって、このような発言を本気で行う政治家やメディアはほとんど見当たらない。

  それどころか、次のような政治家の発言や新聞論調が、連日の報道で満ち溢れている。

  「政権を取った時に財務省を敵に回していいのかと躊躇した時期はあった。黒田氏でも渡辺氏でも(いずれも財務官経験者)個人的には認められる」(鳩山由紀夫民主党幹事長、16日のテレビ朝日番組)。

  「このままいってしまうと、経済も混乱する。国民生活にも影響が出てくる。福田総理も小沢代表も譲り合うところは譲り合い、少しでも国民生活を前進させる話し合いをしてほしい」(小泉元首相、13日の浜松市での講演−国民生活を無視して日本経済を米国に売り渡した男が、国民生活を大切にしろとはよく言ってくれるものだ)。

  「そもそも武藤氏の昇格への民主党の反対は、『財務省出身では財政と金融の分離に反する』という、まったく説得力のないものだ」(18日読売社説)

  最後に18日の朝日新聞「政態拝見」における星浩編集委員の次の言葉を引用してブログを終えることとする。これがギリギリの書き方であろう。

  ・・・新聞の社説は武藤氏の昇格容認が多数派だった。それに対しテレビ・・・は昇格に批判的な意見が多かった・・・社説を書く論説委員は経済の専門家の立場から武藤氏の力量を評価。(テレビの)キャスターは低金利に苦しむ庶民の感覚を重んじる・・・小泉政権で田中真紀子氏が外相に起用された時、新聞が冷ややかだったのに対し、テレビのワイドショーは喝采した。あれも外交の専門家と素人の反応の違いだった・・・

   その星浩編集委員もまた、その後に、「日銀人事問題を・・・政策論争に高めていく工夫が必要である」と締めくくって、問題の本質をはぐらかしている。

    日銀人事問題は、官僚組織を敵に回してまでも官僚支配を崩せるか、崩す覚悟があるか、の問題なのである。

    それは政治家やメディアでは出来ない。「素人」である世論が、「王様は裸だ」と叫んだ子供のように、「無能な官僚が日本を支配してきたから、ここまで日本がダメになったのではないか」と、言い出すかどうかである。

    小沢代表の政治生命は、国民にその事を言わせられるかどうかにかかっている。

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