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『建築家が眺望するニッポン』−文化から見る日本人の底力−2007.12.09
メールマガジン『まぐまぐ』http://archive.mag2.com/0000150178/index.html
今、確認申請業務を行っています。その手続きには信じられない作業を求められています。
設計者の欄には当然まず、私の名前が入ります。住所、設計事務所名、一級建築士の登録番号、氏名です。ここまでは従来と変わりません。今回の改正でさらに一級建築士の免状のコピーを添付することを求められることになりました。理解できないこともありません。
しかしその下に長々と同じ住所、一級建築士の登録番号を書く欄が続いています。
要するにこの建物を設計するに当たって図面を書くことを手伝った人間の名前をすべて書けというのです。そのすべての人の一級建築士免状のコピーも添付しなければなりません。
また、それら手伝った人たちが具体的にどの図面を描いたかについても記入する義務が生じました。申請書にずらずらと「平面図」「立面図」「平面詳細図」「軸組み図」「給排水系統図」「日影図」などという記述が続くのです。
確認申請提出に当たり、私は設備設計と構造設計の専門家にも同席してもらいましたが、役所の担当者に、
「ここに名前を書けということは、問題が生じたとき、それはいったい誰の責任なのかを明らかにするためですよね。さらに役所には全く責任がない、ということも言いたいのでしょ? 僕が全責任を負いますから手伝った人の欄には、“なし”と書きます。いいですね」と言いました。担当者は
「まあいいですけど・・・」とあいまいな返事をしましたが、逆に同席した設備と構造の専門家が二人同時に、私の名前は記入してください、と言いました。
日本の技術者はそのほぼ100%が、責任逃れなどしようとは思っていません。それどころか責任を負うことに誇りを持っているのです。そういう昔ながらの技術者が、責任逃れで逃げ回る役人にあれこれ指図されることに私は著しい違和感を感じます。
役所の最前線で仕事をしている人たちのことを言っているのではありません。建設現場も設計のノウハウも知らずにそういう悪法を作ったキャリア役人のことを言っているのです。
前号で私は使用する材料や機器類の認定番号をすべて書かなくてはならないと書きましたが、実際は書くだけではなく、国交大臣の認定書の写しを添付しなくてはならないのです。誰もが日常的に普通に使っている石膏ボードの認定書までです。
今回私は増築と改築に関わる設計をしているのですが、今回の工事で全く手をつけない建物の部分についても、同じ作業をすることを求められました。増改築部分約70uに対してそれ以外の部分600uについて、採光や換気、排煙の計算をし、シックハウスのチェックをし、構造計算をし、自動火災報知機や非常用照明の配置を明らかにし、給排水や電気、空調の配管図を描き、使われたすべての材料や機器類の認定書の写しを添付しなくてはならないのです。事実上、600uの実施設計をするのと同じ労力がかかります。70uの工事に関わる設計料で、どうすればその手間賃を捻出することができるでしょう。また、施主にどう説明すればいいのでしょう。どこのどの施主が、70uの増改築で600uの新築並みの設計料を払うでしょう。
この建物はわずか3年前に竣工し、役所に工事完了届を提出して竣工検査に合格しています。役所が合格のお墨付きを与えた建物を増改築でもう一度チェックしろと言うのです。
責任を追及されることに対する恐怖心がいかに強いかが分かります。
あれをしろ、ここをチェックしろという新しい指示書が、建築基準法施工規則第一条の三にまとめられました。まだ本が出版されていないのでサイトからダウンロードした所、A4で259ページにもなりました。これが彼らの恐怖の総量です。
恐怖で怯えきっている役人を笑うのは簡単ですが、その恐怖心に振り回される建築業界にとっては大迷惑です。そもそもこの改正で建物の安全性が増すとは到底思えません。なぜならこの法律は国民の安全のためではなく、役人の安全のために作られたのですから・・・。
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