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原田武夫  「国営ファンド国家」シンガポールと喧嘩するスイス勢
http://www.asyura2.com/08/senkyo48/msg/469.html
投稿者 新世紀人 日時 2008 年 3 月 16 日 16:01:11: uj2zhYZWUUp16
 

http://money.mag2.com/invest/kokusai/2008/03/post_54.html

「国営ファンド国家」シンガポールと喧嘩するスイス勢


日本でも始まった「国営ファンド」創設論議

中国、ロシアなどが、あり余る外貨準備を利用して昨年より始めたソヴリン・ウェルス・ファンド(政府系ファンド、SWF)。この「国営ファンド」を、日本でも創設すべきではないかという議論が高まりつつある。


本来、「国営ファンド」の運用には有り余る資金(カネ)のほかにもう1つ必要なものがある。それはファンドの運用にあたって、しかるべき情報を国家レベルで収集し、あるいは運用に先立って公然・非公然の「仕掛け」を行ってくれる国家情報工作機関である。


中国やロシアといった情報工作機関で有名な諸国で、真っ先に「国営ファンド」が立ち上げられたことが、国営ファンドと情報工作機関の切っても切れない関係を表しているといっても過言ではないだろう。


これに対し、日本は対外情報工作機関を持たない。警察庁の“外事”、公安調査庁、あるいは内閣情報調査室などはいずれも基本的に国内にとどまり、国内で主に情報収集をする機関である。もっとも外務省国際情報局を含め、これらの機関も外国で情報収集を全く行わないわけではない。しかし、それはあくでも情報収集にとどまり、相手国に対して「工作活動」を行うまでの能力を持たないのが実態なのである。


そうである以上、日本版「国営ファンド」がこのまま成立してしまうと、いわば丸腰になってしまう。ところがファンド推進派がこういった本当の論点を語ることは無く、単に「外貨準備を寝かせておくのはもったいない。運用してもっと増やすべし」という単純な意見だけが繰り返されてきている。このままでは日本の虎の子がまた1つ奪われるだけである。

「国営ファンド国家」シンガポールと喧嘩するスイス勢

日本までもがなぜ「国営ファンド」を創設すべしということになっているのかといえば、昨夏以来の「サブプライム・ショック」による世界的なマーケットの下げの中で、各国による「国営ファンド」の持つ意味合いが180度転換したからである。


それまで中国やロシアが国家戦略の一環として運用する国営ファンドに対する嫌悪感は、さしもの米国においても非常に強かった。ところが「サブプライムショック」による損失が拡大する中、米国ですら“背には腹を代えられない”状況へと追い込まれていったのである。


そこで颯爽と(再)登場したのが中国やシンガポール、そして湾岸諸国による「国営ファンド」なのだ。マーケットでは「某国の国営ファンドがカネを突っ込む可能性が出てきた」という噂が流されるたびに乱高下が繰り返される展開になっている。まさに「国営ファンドは救世主」ということなのだ。


しかし、ここに来て非常に気になる動きが1つある。それはスイス勢が「国営ファンド国家」の典型であるシンガポールを真正面から非難し始めた気配があるということだ。たとえば2月22日付フィナンツ・ウント・ヴィルトシャフト紙(スイス)は「時代遅れのモデルとしてのシンガポール」と題する論説を発表。次の諸点を掲げて、シンガポールの後進性を唱えている。


(1)シンガポールは民主化が不十分な、テクノクラートによる開発独裁国であること。韓国や台湾も90年代まではそうであったが、シンガポールはいまだにそうである。
(2)シンガポールは、技術革新によってその名を馳せるという意味で、世界ランキングに食い込むことのできる有名企業を輩出していないこと。
(3)人材についてみても、シンガポールはたとえばノーベル賞受賞者や世界的に有名な建築家なども輩出していない。


興味深いのは、以上のように述べた先の「結論」である。「結局のところ、“国営ファンド”とは国家の手先に過ぎない。今は歓迎されていたとしても、やがて投資を各国から引き上げる際に、必ずや“忌み嫌うべき存在”として嫌われることであろう。シンガポールの国家資本主義は未来型モデルではなく、時代遅れのモデルにすぎないのだ」というのだ。かなり手厳しい批判である。

システムの大転換はすぐそこから始まる

1月に上梓した『世界と日本経済の潮目 メディア情報から読み解くマネーの潮流』(ブックマン社)において、私は来る2008年がとりわけ金融マーケットにとって大転換の始まりであることを説明した。3月8・9日には福岡・神戸で、3月22日には横浜、4月5・6日には大阪・名古屋でそれぞれ開催する無料学習セミナーにおいても、こうした「大転換」の現状と見通しについてさらに詳しく語っていくつもりである。


スイス勢によるシンガポールに対する批判についても、この「大転換」の構図の中でとらえ、考えていかなければならないだろう。日本の大手メディアは例によってほとんど語ることが無いのであるが、実は今、欧州を中心として従来「タックス・ヘヴン」として知られた各国に対する風当たりが極端に強まりつつある。その際、追及の急先鋒となっているのがドイツである。そして最も追われているのが、これまで顧客情報の完全なる守秘で有名だったスイスなのである。またサブプライム・ショックによってスイス勢は相当弱体化しているともいわれている。マーケットでは攻勢どころか守勢に転じているというべきであろう。


これに対し、シンガポール勢は依然、鼻息が荒い。自らの「国営ファンド」を用いて世界中を買いあさっている。そうした姿を今や劣勢となったスイス勢が面白いと思うわけもない。当然、なんらかの形で「切り返す」ことを考えるはずなのだ。したがって、非常に手厳しい「開発独裁批判」「国営ファンド批判」を行うということになる、というのは考えすぎだろうか?


どうやら私たち=日本の個人投資家の多くが気づかない間に、ずいぶんと激しい争いが始まったようである。その中で上っ面だけを追った為政者たちが、無駄に私たち日本人の税金を投資ゲームのために用い、騙され、身包みはがされることのないよう監視すべき時が来ているというべきだろう。

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