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「経済コラムマガジン08/3/17(519号)
・積極財政への障害
・忌み嫌われる財政出動
本誌の主張を端的に言えば積極財政の実施である。これは貯蓄・投資のバランスで、日本が過剰貯蓄に陥っているからである。理想的なのは国内における民間投資と消費が増えて、この過剰貯蓄を解消することである。しかし消費性向が大きくなることは現状では難しい。また投資は、採算との兼合いで自ずと限界がある。このような状況では、日本経済は輸出に頼らざる得ない。そしてこの輸出と資金の海外流出が日本の経常収支の黒字を巨大化させてきた。
しかし経常収支の大きな黒字は最終的に円高として跳ね返っている。これまで大きな為替介入や資金の海外流出によって、かろうじて円安が維持されて来た。ところが経常赤字を一手に引受ていた米国の経済が変調し、この資金の流れに変化が生じた。来るものが来たという印象である。今のところ米ドルの独歩安であるが、いずれ日本円(正確には円と人民元)の独歩高となると筆者は見ている。カギはECBの利下げと中国の為替政策の変更である。
円高になると政府は内需拡大策を模索する。諮問機関に政策を提案させるのもその一つである。しかしろくなアイディアは出てこない。「休日を増やす」とか「規制を緩和する」といった類である。「念力」で内需を増やすような話ばかりである。まさに時間と労力の無駄である。
消費を増やすため「年金問題の解決」を訴える者もいる。もっともらしく主張するが、公的年金の積立金の取崩しには言及しない(筆者は05/6/13(第393号)「日本国民全員がばん万歳の政策」http://www.adpweb.com/eco/eco393.html他で述べてきたように、積立金の取崩しによる年金改革を主張)。年金改革はやり方によって、逆に内需をさらに冷やしかねない。このように現状では内需拡大策にめぼしいものは無いということになる。そして内需拡大策として唯一考えられる方策が冒頭に述べた積極財政であり、財政出動であると筆者は考える。
ところが内需拡大のための財政出動という声がほとんど聞こえて来ない。昔の自民党なら、円高に際して積極財政を訴える勢力があった。しかし07/10/29(第502号)「日本再生会議の話」http://www.adpweb.com/eco/eco502.htmlで述べたように、積極財政を唱える中核勢力が自民党から追出されたのである。今、自民党の中で積極財政を主張している者はこの残党だけである。ここに小泉郵政改革騒動の本質が現われている。
金融政策はほとんど限界に来ている。政治家も、もはや財政政策しかないと薄々感じている。しかしこのことを口に出すことはない。積極財政なんて口に出せば、マスコミから袋叩きになると感じているからである。ほとんどの官僚は法律家であり経済には疎い。また平均的なマスコミ人は経済の素養が全くない。さらにメディアに登場する経済学者やエコノミストは嘘つきばかりである。このような日本の状況では、「財政出動」ではなく、「規制緩和」や「外資導入」などで内需が拡大するといったカルトめいた主張ばかりがまかり通る。
そこで今週は財政出動が忌み嫌われている理由を取上げる。筆者はこの原因は二つあると見ている。一つは日本の財政が危機だという真っ赤な嘘が蔓延し、ほとんどの国民がこの話に洗脳されていることである。ところがこれが間違っていることを本誌はずっと取上げて来た(日本の財政状態は先進諸国と遜色はない。以前はずっと良かったが、橋本政権の構造改革運動以降むしろ悪くなった。)。しかしこれについては今週はこれ以上言及しない。
・「全く無駄の無い財政」は100万年経っても無理
日本では積極財政や財政を膨らませることに対して異常に抵抗が強い。景気に陰りが見られたら他の国では財政支出を増やすことが当り前であるが、今日の日本ではこれが非常に難しくなっている。この原因は前段で触れた財政の状況だけではない。「財政」そのものに対する人々の不信感がピークに達していることが挙げられる。この不信感が積極財政実施の二つ目の障害である。
本誌が積極財政の必要性をどれだけ説いても、賛同する者が少数派であるとを筆者も承知している。マスコミの関心事は、深刻なマクロ経済の現状ではなく、スキャンダラスな財政支出の中味である。「道路特定財源が豪華な財団法人の職員旅行に使われている」とか「市営バスの運転手に民営のバスの運転手の何倍もの給料が支払われている」という話の方が視聴者にアッピールする。国会議員の「豪華宿舎」や「議員年金の厚遇」も話題になった。
無駄な道路や補助金という話題になるとマスコミは張り切る。公務員の天下りがいつもやり玉に上がる。実際、この手の話はきりがない。まさに国や地方の財政は、悪の温床であり、不効率の象徴とみなされているのである。
本誌ではこの種の話をほとんど取上げてこなかった。しかし筆者がこの種の話に興味がないということではない。またマスコミが追求することに異論はない。ただ筆者は、日本においてはマクロ経済の方がずっと重要と考えている。
理想を言えば、公正で効率的な行政組織が出来上がり、そのような状況のもとで財政支出を増やすことである。しかしそのような理想的な行政組織が簡単に出来るとはとうてい思えない。大体、誰も行政組織が「公正で効率的」になったと判断ができるはずがない。例えば公共物を造っても、有益と思う人がいる一方で無駄と考える人が必ずいるものである。
「行政の無駄がなくならない限り、財政支出の増加はまかりならぬ」という意見は通りやすい。しかし筆者は、全く無駄のない行政組織なんて未来永劫できるはずがないと思っている。100万年経っても無理である。これはユートピア信仰の一種である。
筆者は「公正で効率的な行政組織が出来るまでは財政支出を増やすことを認めない」という意見を暴論とみなす。しかしこの暴論に振り回されているのが、今日の政治家であり、国民である。このような状況では、日本がデフレ経済から脱却することは無理である。
長く続くデフレ経済によって、日本の経済的地位が下がっただけでなく、多く人が不幸な目に遭っている。しかし経済が成長しなくなると、人々の関心は国全体の経済から富の分配に移る。「公務員だけがうまくやっている」という具合である。このように人々は、デフレ経済による痛みを忘れ、公務員の不正の報道で溜飲を下げている。これでは何の解決にも繋がらない。
日本経済は一段と深刻になりそうである。しかし日本中が「財政出動は無理」という考えに呪縛されている限り、有効な政策が実施されることはない。また為替介入という声が出ている。そんな資金があるなら財政支出に回すべきである。ちなみに過去の為替介入の平均レベルは115円くらいであり、外貨準備には既に大きな評価損が出ている。
今週は市場が大きく動きそうである。来週はこれを取上げる他はないであろう。
サブプライムローン問題の最終局面は今年の夏場であるが、これによる市場の混乱は今がピークと見ている。しかし米国の経済問題は、このサブプライムローンだけが問題ではない。次の段階に入っていると考える。
日経平均は、12,000円近辺まで下がっている。一つの注目点は12,000円あたりにノックイン価格が設定されている投信(ノックイン債)が多いことである。一度でもこの価格を割込むと元本が保証されないのがノックイン債である。したがって日経平均が12,000円を割込むかどうかが問題である。
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