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ガソリン税、自民も民主も大間違い。「暫定税率を維持し、一般財源化せよ」【篠原 匡】
http://www.asyura2.com/08/senkyo48/msg/322.html
投稿者 tk 日時 2008 年 3 月 11 日 14:28:45: fNs.vR2niMp1.
 

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080310/149503/?ST=nboprint

ガソリン税、自民も民主も大間違い

「暫定税率を維持し、一般財源化せよ」

* 2008年3月11日 火曜日
* 篠原 匡

 それぞれの思惑が絡み合っているからだろうか。シンプルな議論が複雑になっている。

 ガソリンにかかる暫定税率の維持を盛り込んだ道路特定財源関連法案。2月29日に衆院本会議を通過したが、修正協議を巡って与野党が対立。日銀の正副総裁の同意人事も相まって、国会は空転している。参院の過半数を押さえる民主党は審議拒否の構えを崩しておらず、修正協議の糸口は見えていない。

 焦点に上がっている道路特定財源制度とは、受益者負担の考え方に基づき、燃料の利用者や自動車の所有者が道路の建設や維持費用を負担する制度のこと。その対象は揮発油税や自動車重量税などである。現在、揮発油税は1リットル当たり約54円と、本来の税率のおよそ2倍の税金がかけられている。財源不足を理由に、税率が引き上げられてきたためだ。

 この暫定税率の期限が切れる3月末を前に暫定税率の引き下げが議論に浮上。暫定税率維持を主張する与党に対して、民主党は暫定税率の延長拒否や道路特定財源の一般財源化を主張しており、両者にはなお隔たりがある。

 この暫定税率を巡る論議について、財務省OBで、安倍政権で内閣参事官を務めた高橋洋一氏(現早稲田大学講師)は、「理屈だけなら議論の余地はない。どちらの主張もナンセンス」と一刀両断に切り捨てる。同氏はまず、そもそも論を説く。「暫定税率を下げるという議論はグローバルでは通用しない」。

「暫定税率引き下げはあり得ない」

 公害のように、他人に迷惑をかけるものに対しては税金を課し、その行為に制限をかける必要がある。これは、英国の古典派経済学者、アーサー・ピグーが考案した「ピグー税」の考え方。税金をかけることで、環境問題のような外部不経済を市場の中に取り込むわけだ。

 ガソリン税はこの典型。ガソリンを消費すればするほど、温室効果ガスが排出され、地球温暖化の原因になる。ピグーの考え方に基づけば、「ガソリン消費を抑えるためにガソリンにより高い税金を課すべき」という解が導き出される。

 ガソリン値下げ隊を結成し、全国を行脚した民主党。彼らは税負担の軽減という観点から暫定税率の引き下げを主張しており、議論の立ち位置は異なる。ただ、「世界各国が温暖化防止に力を入れる中、日本だけが税率を下げるという選択肢があるのか」という高橋氏の疑問ももっとも。民主の主張は、大衆には受けるだろうが、世界の動きには逆行している。

 そして、もう1つの論点として、道路特定財源の一般財源化が浮上している。この点については、「作るべき道路は何か、ということを第一に考えるべき」(高橋氏)という。

 道路建設など使途を限定した道路特定財源の存在が、無駄な道路が建設される要因の1つだろう。そのため、道路特定財源を一般財源化し、社会保障などに回すべきと主張する識者は少なくない。もちろん、真に必要な道路は作るべき。では、作るべき道路とは何か。

 「B/C≧1」。これは、公共投資の最適解を示した基準のこと。ベネフィット(B)をコスト(C)で割った数値が1以上であれば作り、1を下回ればやめる。費用対効果を数式で表したものだ。

 この「B/C」には、「事前」と「事後」の考え方がある。事前というのは、需要やコストなど完成前の推計を用いた費用対効果。事後とは文字通り、実際の需要やコストに基づいて計算した費用対効果である。実際の交通量が予測を大幅に下回っている東京湾アクアラインのように、事前のベネフィットは過大に、そしてコストは過小に算出されがちだ。

腹に一物を抱える自民と民主

 冬柴鉄三・国交相は、2月の衆院国土交通委員会で「(B/Cで)1を超えるということは当然の話」と発言している。先に触れたように、事前の B/Cは甘めになりがち。高橋氏によれば、事後の「B/C」を1以上にするために、事前の「B/C」を3以上で見ることが多いという。冬柴大臣の委員会での発言が事前を指しているのか、事後なのか、議事録では定かではないが、ここでの「B/C」は事後であるべきだろう。

 政府は高規格道路1万4000キロを整備する構想を持つ。そのうち約9300キロは整備済みだが、約4700キロが未整備。昨年、国土交通省がまとめた道路整備中期計画の素案では、2008年度から10年間、約23兆円をかけて基幹ネットワークを整備するとしている。この整備計画に「事後の B/C≧1」という基準を厳格に適用した場合、すべての道路を計画通りに建設できる保証はない。

 「国土交通省や自民党の道路族は『事前のB/C』と『事後のB/C』を一緒くたにしている。事後の『B/C≧1』で道路建設を見直し、下回る道路は建設をやめる。それで、余った分は一般財源にすればいい。何も難しい話ではない」と高橋氏は指摘する。

 その言によれば、暫定税率を維持しようという自民党は間違えていない。ただ、地元に公共工事を持っていきたいがために、公共投資の最適解を無視している。民主が主張する一般財源化も正しいが、暫定税率を引き下げるというところがナンセンスである。

 暫定税率はそのままに、高速道路の建設計画を厳密に見直す。そして、余った財源は一般財源に繰り入れる――。非常にシンプルな結論に思えるが、自民党、民主党ともにそれぞれの思惑を腹に抱えている。その思惑に振り回されて、シンプルな結論が捻れ、複雑になっているのだろう。ガソリン税を巡る春の陣。どういう結論になることやら。

(日経ビジネスオンライン 篠原 匡)

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