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[民主主義の危機]キッチュな仏サルコジ現象と共鳴する日本「芸能(低脳?)政治」の混迷
http://www.asyura2.com/08/senkyo48/msg/320.html
投稿者 鷹眼乃見物 日時 2008 年 3 月 11 日 12:13:17: YqqS.BdzuYk56
 

[民主主義の危機]キッチュな仏サルコジ現象と共鳴する日本「芸能(低脳?)政治」の混迷


<注記0> お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080311


<注記1> 当記事は、<仏サルコジ関連の最新情報・追加>と<一部内容の加除・訂正>が発生したため、既出の記事(下記★)を【修正版】として再UPするものです。


★[2008-03-09付toxandoriaの日記/続、『心眼、アーキビズム、市民意識、ジャーナリズムの役割』についての考察]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080309


<注記2> キッチュ(独、Kitsch)
・・・1970年代に流行った概念で“俗悪・卑猥な考えや行為”のことを意味する。元の意味は、“目的から外れた使い方、まがいモノ、ニセモノ、イカモノ、俗悪なモノ”の意味。


【画像1】ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』 (右上の画像は浅草・浅草寺の風景、撮影=2008.3.8)


Vecelli Tiziano(1476-1576)「The Venus of Urbino」 before 1538 Oil on canvas  119 x 165 cm Galleria degli Uffizi 、 Florence
[f:id:toxandoria:20080310073322j:image]


[f:id:toxandoria:20080309213036j:image:right]


・・・3/7〜3/8と上京の機会があり、たまたま開催中の「ウルビーノのヴィーナス展」(会期、3月4日〜5月18日/国立西洋美術館)を鑑賞しました。この他にも、古代・ルネサンス・バロック期にわたるヴィーナス像にかかわる様々な作品が展示されています。このティツィアーノのヴィーナスは、フィレンツェ・ウフィツィ美術館所蔵の名品であるため、日本で鑑賞できる機会は非常に稀だと思われます。


・・・ティツィアーノはルネサンス期・ヴェネツィア派絵画の頂点を極めた画家です。また、バロック初期にさしかかる頃に活躍したため美術史上で重要な位置を占めています。そして、とても滑らかで流動的な色彩の変化が限りなく続くかのように艶やかに見えるのがティツィアーノ絵画の魅力です。しかし、その技術的特徴は、よく近づいて見れば実は殆ど意味をなさぬほど自由奔放な筆致で描かれているという点にあります。しかも、それに留まらず、その自由奔放な筆致こそが画家ティチアーノの個性的魅力を創りだしたと見なすことができます。


・・・その意味でティツィアーノは、近代美術史を300年以上も先取りした驚くべき画家です。また、理念的なフィレンツェ派のそれとは異なり、このティツィアーノのヴィーナスの魅力は現世的で官能的であること、言い換えれば、彼女の蠱惑的な眼差しこそが、紛れもなく現代的な意味での「リアリズムの眼とバランス感覚」(内心の自由を確保する意味での心眼)を先取りしていたのです。つまり、我われ鑑賞者は、天才・ティツィアーノが創造したヴィーナスの心眼によって見つめられているという訳です。


【画像2】映画『エリザベス、ゴールデン・エイジ』


Berlioz-Te Deum-Abbado1
[http://www.youtube.com/watch?v=fVDAIRmsvzg:movie]

[f:id:toxandoria:20080310062433j:image]


・・・当画像は、公式HP(http://www.elizabeth-goldenage.jp/)より/日比谷スカラ座ほかで上映中。


・・・同じく、3/8に日比谷スカラ座で鑑賞。史実に忠実な作り方で興味深い秀作でした。エリザベス(Elizabeth 1/位1558-1603/ティツィアーノの最盛期より10〜20年ほど後の時代、イギリス・チューダー朝の最後の王/イギリス国教会を確立してイギリス絶対王政の最盛期を実現)をジャンヌ・ダルク風に描いたところが些か気になりますが、1588年の大海戦(スペイン無敵艦隊・アマルダがイギリス海軍に敗れる場面)の大スペクタクル・シーンもあるうえ、緻密な時代考証など真面目な作り方がリアルな感動を与えてくれます。


・・・政治権力に纏わる「祈る人」と「戦う人」の過剰な癒着(祈る人のカルト化がもたらすファシズムへの誘惑)が「働く人々」を抑圧する構図を予感させるなど、現代の世界にも、そのまま通じるような多面的示唆に富んでおり、とても興味が尽きない内容となっています。


・・・いわば『絶対王権の確立期(キリスト教を王権維持のための稠密な組織として取り込みつつある時代)における審級的な権威づけのための修辞学』(=国王の名において、一般民衆に対し無限の負債感覚(被支配者としての負い目の感情/王の身体の一部と化すことによる一種の安住感)を植えつける舞台装置)を映像化したような作品です。


【画像3】鎌倉・東京、春・三月の風景/2008.3.7-8 (一、二枚目=鎌倉、三枚目=浅草・浅草寺)


[f:id:toxandoria:20080310064230j:image]


[f:id:toxandoria:20080310064315j:image:right]


[f:id:toxandoria:20080310064414j:image] & others.


・・・この2日間の東京は好天気に恵まれたこともあり、合間を縫って『上野公園、鎌倉』(3/7)と『本郷界隈〜日本橋(日銀・貨幣博物館ほか)〜浅草・浅草寺〜銀座・日比谷』(3/8)を巡ることができました。このプロセスで撮った画像を下のギャラリー(◆)に纏めましたので、ご笑覧ください。


◆『画像ギャラリー、鎌倉・東京、春・三月の風景/2008.3.7-8』、http://picasaweb.google.com/toxandoria/2008378


・・・・・・・・・・以下、本論・・・・・・・・・・


[f:id:toxandoria:20080310061303j:image]「シュピーゲル誌(国際版/2008.3.3号)」が報じるところによると、今や、フランス・サルコジ大統領の商務優先の軽挙盲動(トップセールス・パフォーマンス)ぶりが独仏関係に深刻な亀裂をもたらしつつあり、ベルリンとパリの間では久しぶりに異様な冷たい緊張感が生まれているようです。とはいえ、それは「サルコジ大統領のエリゼ宮」と「メルケル首相のベルリン」の間に冷たい空気が存在するということであり、決して、ドイツ国民とフランス国民の間に冷たい空気が生まれたということではありません。ここには、紛れもなく欧州の人々(各国市民層、欧州市民層)の成熟した民主主義意識の存在が見られます(反面、フランスでのサルコジ大統領の支持率が“過激に”下がりつつあるようです・・・/ 参照、→『2008.3.10付・AFPニュース:フランス統一地方選挙、与党大敗へ、サルコジ政権に打撃、http://www.afpbb.com/article/politics/2362021/2717739』)(画像は、http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,539003,00.htmlより)。


思い返せば、「EUの原型」は、“一国社会主義経済の道に見切りをつけた”仏ミッテラン大統領と、“EU創設への貢献でナチスドイツの反省を実行する決意を固めた”独コール首相が、1984年9月に仏独軍の激戦地であったヴェルダン(Verdun/フランス北東部、ロレーヌ地方ムーズ県)で合同の戦没者慰霊式典を行ったとき、本格的にスタートしています。これは、見方しだいでは、欧州の中枢にノブレス・オブリージュが確固として存在することを世界中に示した瞬間ではなかったかと思います。おそらく、この7月のEU大統領選出のクライマックスへ向かって何らかのドラマが生まれるのではないかと思われます。


[f:id:toxandoria:20080310061414j:image:right]ところで、このように「メルケル首相のベルリン」と「サルコジ大統領のエリゼ宮」との間に冷たい空気が生まれつつあるにもかかわらず、おそらくEU(欧州連合)そのものにヒビが入るまでの深刻な事態にはならないだろうと思われます。なぜなら、ヨーロッパには絶えず民主主義意識を成熟させてきたEU(欧州)市民の存在があり、フランスの周辺国には独メルケル首相らノブレス・オブリージュの眼差しもあります。が、問題はサルコジ氏が、これらの“歴史的な眼差し”に気づいていない節(=心眼が曇っている可能性?)があることです。その何よりの証拠が、あのサルコジ氏が発した暴言<消え失せろ、ばか野郎!(Casse toi Pauvre Con !/直訳すると、恐ろしく下劣なコトバ=知恵不足のガキが使うような女性蔑視の卑猥な表現/参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080304の中にある動画>です(画像は、http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,539003,00.htmlより)。


ともかくも、ヨーロッパでは『心眼、アーキビズム、市民意識、ジャーナリズムの役割』(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080304)が絶えず活性化し続けているという現実があります。このように見れば、“サルコジ現象”なるものは例外的で奇矯なプレゼンテーション行為なのかも知れません。また、近年のフランスでは軍需産業(ダッソー社、ラガルデール社)が過半のフランス国内の新聞社・出版社(アシェット・グループ等)・書店などのジャーナリズム資本への支配力を強めてきたという、まことに望ましからぬ現実があることも事実ですが(参照、http://www.diplo.jp/articles06/0610-2.html)、それにめげることもなく、現在のフランスでは<編集権の反撃>が活発化しつつあるようです(具体例は後述)。


ところで、(『心眼、アーキビズム』についての詳細は下記記事(★1)を参照願うこととして・・・)、フィリップ. C. シュミター(Philippe C. Schmitter/1936- /元シカゴ大学・スタンフォード大学各教授、現フィレンツェ・ヨーロピアン大学名誉教授)が再定義した「ネオ・コーポラティズム」(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050327)の実現を目指すEU(欧州連合)には、とうてい日本では見られぬような高い市民意識の存在があります。そして、その水準の高さを例示するならば、それは<「相対的貧困」(一領域内での極端な貧富格差の拡大)のみならず、「絶対的貧困」(各国に局在する悲惨な絶対的極貧)の救済も明確な課題としてEU市民の視野に入っている>ということです(参照、下記記事★2)。無論、このことが欧州各国のエスタブリッッシュメントに共有されていることは論を待ちません。


★1[2008-03-04付toxandoriaの日記/『心眼、アーキビズム、市民意識、ジャーナリズムの役割』についての考察、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080304]


★2[2007-12-27付toxandoriaの日記/市民の厚生を見据えるEU、軍需利権へ媚びる日本/リスボン条約の核心、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20071227]


次いで、『ジャーナリズムの役割』についての刮目すべき事例を見ておくならば、それは「株主の編集介入問題」で厳しい綱引き状態に嵌ったフランスのル・モンド紙のケースがあります。しかし、これは『ル・モンド新社長にフォトリノ編集局長』のニュースが伝えるとおり(情報源:2008.2.17付・産経新聞ネット・ニュース、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080126-00000914-san-int)、編集権側の勝利に終わったことは耳新しいところです。この辺りのフランス・ジャーナリズム界の空気には、「軍需利権・道路利権等の醜悪で怪異な利権顔(ヅラ)」と「阿呆顔(ヅラ)を売りモノとする芸能・タレント議員」のための提灯記事に現(うつつ)を抜かす我が国の『乞食ジャーナリズム』(=乞食マスコミ/特に民放テレビ局の薄汚いホイド(=寄生、たかり)ぶり!)と比べて雲泥の差が感じられます。


・・・・・・・・・・


[参考資料1]


[「仏サルコジ大統領のエリゼ宮」と「独メルケル首相のベルリン政府」間の冷たい空気]を伝える独・シュピーゲル誌(2008.3.3号)の内容(例の如く、意訳ならぬ“直感訳”なので誤訳の山デス!)


◆シュピーゲル誌(国際版/2008.3.3) 『パリからの挑発』 PROVOCATION FROM PARIS/Sarkozy Strains French-German Relations by Hans-Juergen Schlamp、 Stefan Simons and Alexander Szandar、http://www.spiegel.de/international/germany/0,1518,539003,00.html


(独仏関係を緊張させる仏サルコジ大統領)


予定されていた独メルケル首相との首脳会談が、突然、仏サルコジ大統領によってキャンセルされたことは、両国の関係にただならぬ波紋を呼び起こしており、その結果として、独仏関係に亀裂が入りつつある。しかも、以前から、ベルリンでは仏サルコジ大統領の外交政策に関する諸提案に熱意が感じられないことが指摘されてきた。


サルコジ大統領のまさに自らの政策に関するこのような傾向は、以前から折にふれ目についていた。2005年7月に、パリでアンゲラ・メルケル独首相が、当時の仏内務相であり大統領候補でもあったサルコジ氏と会ったとき、彼女はサルコジ氏との真剣な議論を期待していた。その時のメルケル首相は独首相としての仕事に没頭していたが、サルコジ氏はまるでフランスの人気スターのように見えた。誰でもが、そう思うことだが、当時のこの二人にはドイツとフランスの未来関係、あるいは彼らの政治的諸経験など、話し合うべきことはいくらでもあったはずだ。


(精力的なサルコジ氏はアイディア・マンだが、その全てがベルリンで歓迎されている訳ではない)


“二人の持ち時間はもうなくなった”と言って、突然、ホストのサルコジ大統領が立ち上がった、それは、メルケル首相にとっては彼女が座ってから、それほど時間が経っていないときだった。そのときサルコジ氏は、メルケル首相へこう言った・・・“予定していた記者会見があり、表には新聞記者らが待っている。”それに対してメルケル首相は言った、・・・“私たちは、未だ三つか四つの問題を話し合っただけです。”しかし、サルコジ大統領はこう答えた・・・“いやいや、私は全てを計画通りにやっているので、これで十分です。”


このことで、仏サルコジ大統領は、滅多に得られない両国の未来を導くための希少な意見交換の機会をピーアール・イベントの場に変えてしまった。そして、大統領になってから未だ1年に満たないサルコジ氏が、すなわちエリゼ宮殿の責任者であるサルコジ氏が、ドイツから完全に信用された存在ではなかったことが明らかになった。このようにフランスの大統領がドイツ政府の厳しい忍耐力を試す場面を迎えるのは、本当に久しぶりのことである。


(ドイツからすれば、このようなサルコジ氏は友人に相応しいとはとても思われない)


サルコジ氏の外交政策への対応を見るかぎり、そこには「自分を売り込むこと」以外の何も見られない。そして、ベルリンのドイツ政府と外務省の高官らは、そのサルコジ氏の遣り方には“またかの思い”を抱いている。例を挙げるなら、サルコジ氏は、「EU(欧州連合)の新リスボン条約」について、それは主に自分の優れた交渉技術の賜物だと主張している。また、彼は、「昨年の夏にリビアの監獄から5人のブルガリア人看護師を救出できたこと」の功績は専らサルコジ氏自身にある(そう、世界が見なしている)と確信している(下記の記事★を参照乞う)。サルコジ氏は「メルケル氏との偉大なる友情」(彼は親愛なるアンゲラ氏と友情で結ばれていると、サルコジ氏は主張しているのだが・・・)を引き合いに出すのが好きだが、そのようなときにサルコジ氏が語り、実行することは、少しも友情を感じさせるようなものではない。少なくともドイツ人からみるかぎりでは・・・。


★『リビア児童エイズ感染事件の犯人とされたブルガリア人医療関係者がリビアから救出された事件』、http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2259196/1885373
・・・実は、この救出に尽力したのはサルコジ氏と離婚したセシリア・サルコジ(Cecilia Sarkozy)元・サルコジ仏大統領夫人であった。その後すぐに、サルコジ氏がカーラ・ブルーニ(Carla Bruni/ファッションモデル、歌手)と再婚したことは周知のとおり。


(某雑誌が報ずるところによると・・・)


ところで、サルコジ氏の直情的な性格は本当にドイツ人たちを激怒させてしまった。最初はこの月曜日にバイエルン州の都市シュトラウビングで行われることが前から予定されていた独メルケル首相との会合をサルコジ氏がキャンセルしたため、ベルリンの独政府関係者らの多くは、本当のところ、サルコジ氏がドイツの隣人たちと良好な関係を持とうとしているのかどうか疑わしいと思うようになってしまった。彼の側近たちが言うには、サルコジ氏は、過密スケジュールゆえにその会合に出ることができなくなったそうだ。しかし、それでは、ドイツ政府との会合などはつまらぬものだと言わんばかりではないか。そう言いつつサルコジ氏は、計画通りに南アフリカ旅行に出かけたのだ。そして、彼は、自らの過密スケジュールを何とか遣り繰りしてチャドへの観光旅行に行ったのだ。そして、シュトラウビングでの首脳会談の代わりに、サルコジ氏とメルケル氏の二人は、次の月曜日の夜にハノーバーで行われる「ITフェアー、CeBIT」の開会式の後の簡単な夕食会で会うことになっているのだ。


しかも、ドイツの財務相ペール・シュタインブリュックとそのフランス側のパートナーであるクリスティーヌ・ラガードの二人だけの会合(先週の火曜日に設定されていた)もキャンセルされることになった。それは、直前に立てられたフランス国内の数箇所の工場を訪ねるという理由でのキャンセルであり、サルコジ大統領はラガードをペール・シュタインブリュックとの会合へ出させる代わりに自分の供として連れて行ってしまった。


(サッパリ訳が分からない)


しかし、それは直前になって付け足しのようにつくられた予定に過ぎないはずだ。この仏サルコジ大統領は、外交政策の最前線にかかわる恥ずべき行為(それは、十分に考え抜いたブレーン・ストーミングの賜物か?それとも精神錯乱の賜物か?)について何ら分かりやすい説明をしてこなかった。ベルリンでは、彼の考えることの多くはドイツへの挑戦と受け取られている。一つ例を挙げれば、それはサルコジ大統領の『地中海連合』(Mediteranean Union/下記の記事★を参照乞う)についての提案だ。おそらく、それは北アフリカ諸国及び中東諸国とフランスとの結びつきを強化するものとなるであろう。ドイツの外交官らは、それはフランスが主導する「EUの二次的拡大方向」(東ヨーロッパ方向へのEU拡大とバランスさせるための錘)だと見なしている。なぜなら、東ヨーロッパ方向へのEU拡大は地理的に見てドイツに利があるからだ。ともかくも、フランス人たちは、彼らが心に描くことの意味を正確に説明することを避けてきたし、この2月半ばにドイツへやって来たアンリ・ガイノ
(仏大統領アドバイザー)も何ら明快な説明はして行かなかった。


★『地中海連合(Mediterranean Union)』、http://www.invest-link.net/89voc/mediterranean-union.html


(ベルリンはサルコジ氏が提案する『地中海連合』の熱烈なファンではない)


サルコジ氏が指導力を発揮した直近の事例は様々な外交政策の分野で見られるが、その中には、ドイツ軍のアフガニスタンでの展開にかかわる困難な問題(メルケル首相が取り組んでいる)がある。この7月に、もしフランスがEU大統領職を引き受けることになるなら、そのときサルコジ氏は本物のアイディアを繰り出すことになるのだろう。例えば、より良いエネルギー安全保障、より高度な環境浄化、より良い移民融合政策などを促進することになるのだろう。しかし、最も重要なことは、彼が、EUの諸機関を十分に活用しつつ、ヨーロッパが如何にしてより安全になれるか、如何にしてその敵対者たちからヨーロッパを守ることができるかを考えることである。


今までのところ、その形はハッキリしないが、今までブリュッセルから漏れてきた情報によると、その精力的なフランス人(サルコジ氏)は、様々の大きな計画を持っているとされる。例えば、サルコジ氏は、EUの防衛システムを根本的に構成し直すことを考えているようだ。そうであるなら、恐らく、その組織は、ヨーロッパにおける六つの大国(ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スペイン、ポーランド)が一つの「精鋭軍」を形成するため各国軍を参加させることになるだろう。つまり、サルコジ氏は新たな「ヨーロッパ中核軍」の創設を考えているようだ。それは、国境を越えた自由な移動が保障されているシェンゲン協定やユーロ通貨体制などとは異なるフレーム・イメージであるらしい。


しかし、この軍事力を合体させるとい計画は、すでにかなり時間をかけて進められてきたことであり、メンバー六カ国が、各約1万人の兵力を参加させることになっており、今までのところ各国の参加数が不均衡にならないよう努力が続けられてきたはずだ。だから、このアイディアは、新しいものだとは殆ど言えない。1999年まで遡れば、EUは6万の兵力から成る「欧州連合軍緊急即応軍」(European Rapid Reaction Force)の創設に合意していた。しかし、この計画は、各国の不十分な参加意欲が原因で次第に縮小されてきた。


(EUパートナーの費用負担が安くないことは分かるが・・・)


その代わり、英仏の強い主張に基づき、EUは、主にアフリカでのミッションを想定した「EU戦闘群(Battle Groups)」(メンバー六カ国が各1,500人の兵力を出す)を創設した(参照、下記の注記★)。しかし、この計画も本当に成功したとは言えない状況となっている。それは、パートナー各国の参加意欲が弱く慢性的な人材不足状態に襲われたからだ。


★「欧州連合軍緊急即応軍」(European Rapid Reaction Force)
・・・2003年12月12日、ブリュッセルで開催された欧州理事会は、「よりよい世界における安全な欧州安全保障戦略」(A Secure Europe in a Better World, European Security Strategy)と題する政策文書を採択した。これに基づく政策の一環として、2004年02月 に、英仏独が協同で「戦闘群(Battle Groups)」構想を提出した。


サルコジ氏の「新しい欧州軍構想」には二つの付随的な目的がある。その一つは、フランス軍のNATOへの再統合の仕事を有利に進めやすくすることであり、もう一つは、他のEU加盟国の人々をフランスの旧アフリカ植民地での軍事観光ツアーへ誘い出すことである(『地中海連合』構想の一環?)。前者は、それが、仏大統領としての彼の重要な目標の一つであると以前から宣言していたことで、後者は、彼が計画してきたフランス軍の人員削減(近代装備充実による少数精鋭化が目的)に役立つという訳である(他の加盟諸国の兵役志願者数を増やすことで?/欧州諸国では、徴兵制(とはいえ、これも事実上の志願制に近い/その理由については、下記の注記★を参照乞う)のドイツを除き、殆どの国が志願兵役制、http://ms-t.jp/Statistics/Data/System.html)。


★「ドイツの徴兵制」
・・・ドイツの徴兵制は1957年から始まったが、ナチスのファシズム・軍国主義(自ら“神”(≒日本の神格・天皇)になろうとした男、ヒトラー)への反省からドイツ国民の間で徴兵制は(その制度が存在するにもかかわらず)不人気な状態が続いている。つまり、ドイツでは権力構造における“祈る人(事実上、宗教と政治の分離が永遠の課題として圧し掛かっている!)”、“戦う人”、“働く人”の<構成比に癒着と狂い>が生じることへの警戒感が強いため、また現実的には「良心的徴兵拒否の制度」(軍役に代わり、病院・老人ホーム・障害者施設など社会的弱者を支える施設で働くか、あるいは文官として義務的に働くことを選択できる制度)があるため、事実上、ドイツ軍の構成では失業率が高い旧東ドイツ系の国民等の占める割合が大きい。従って、現在のドイツでは、軍隊経験のない人々が知識層の多くを占めるようになっており、平和主義と反戦・反軍国主義の精神が社会をリードする空気となっている。このため、仏サルコジ大統領が提案した仏独両国による核戦力の共有管理の提案(参照、http://mukke1221.exblog.jp/6180205/)もメルケル首相によって即座に拒否された。


つまり、このサルコジ氏の意図は他のEU加盟諸国にEUのパートナーであることが決して安くはつかぬことを意識させることだ。このサルコジ・プランによれば、それぞれの軍事的な努力目標の実現のため、メンバー六カ国は、それぞれが国内総生産(GDP)の2%を差し出すことが求められることになる。しかし、フランスとイギリス以外の四カ国は、国防の中核的軍事予算を現在よりも規模縮小することを考えている。例えば、ドイツはGDPに占める軍事予算の割合を1.2%の範囲に押さえたいと考えている。現在のドイツの社会情勢下では、サルコジ・プランの要求どおりに、現在の国防予算規模290億ユーロ(約4.6兆円)から500億ユーロ(約7.9兆円)まで拡大する予算案が議会の支持を得ることは困難だ。今まで、ベルリンは、同じようなワシントンからの要求も拒否してきている。


そんなことは大した問題でないと言う人もいるが、実は当面のところ、NATOは、ヨーロッパ社会の一員たるフランス国民が彼らの利益(国益としての国民の利益)をこれからも享受し続けることを、どうやって邪魔しないようにできるかという困難に直面している訳だ。1966年にシャルル・ド・ゴール大統領の命令でNATOの軍事同盟から脱退したフランス軍(参照、下記の注記★)が、どのような方法でNATOへ再統合できるかについての処方箋は依然として見えていない。しかしながら、既にフランス軍の調査チームは、16,000人のフランス人部隊を配置する場所選定(近い将来に)の調査にとりかかっている。その行動によって、フランス軍の調査チームは、サルコジ大統領が三番手・四番手のNATO内のポジションでは満足しないということを明らかにした訳である。


◆「1966年、フランス軍のNATO同盟からの脱退」
・・・NATOの発足時(1949)の本部はパリにあった。しかし、アルジェリア紛争(1954-62)で集団防衛体制を求めたフランスにアメリカが反対したこと、スエズ危機(1956-57)でアメリカが英仏出兵に介入してきたことなどが背景となり(これ以降、イギリスはアメリカの政策に同調する方向へ向かう)、ド・ゴール大統領は、次第にNATOと距離を置くようになり、フランスの地中海艦隊、海峡艦隊、大西洋艦隊をNATOの統合司令部から離脱させた。そして、ド・ゴールは、1966年3月、フランスがNATOの軍事機構から脱退することを表明した。その後、ド・ゴール下のフランスは、原水爆による独自の核抑止力を構築してきた。


約60年前にNATO同盟軍が設立されてから、伝統的にアメリカ合衆国の将軍がNATO欧州最高同盟軍司令官(SACEUR)を務めてきた。ベルギーのモンズ(フランスとの国境近くにあるベルギーの小都市、エノー州の州都)にあるNATO軍司令部のトップはジョン・クラドック司令官(元・米南方軍司令官)であり、一人の英国人が彼の補佐官を務め、もう一人のドイツ人が幕僚らに伝える仕事を担当している。そして、この三人はすべて四つ星の将軍だ。最近のことだが、このドイツ人の補佐官がフランス軍幕僚の一人であるジャン・ルイ・ジョルジュランへこう聞いたことがあった・・・“NATO軍への復帰が認められたとき、パリ(サルコジのエリゼ宮)は准補佐官の地位を求めるのだろうか?”と。すると、彼は怪訝な顔をして、こう言った・・・“補佐官って、どういう意味だい? 当然、、我々は“SACEUR”(NATO欧州最高同盟軍司令官)を要求するよ!”と。


・・・・・・・・・・


[参考資料2]


[2008-03-04付toxandoriaの日記/『心眼、アーキビズム、市民意識、ジャーナリズムの役割』についての考察、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20080304]へのコメント&レス


海舌 2008/03/05 17:25 『toxandoria の日記、アートと社会』
2008-03-04 『心眼、アーキビズム、市民意識、ジャーナリズムの役割』についての考察


(一部、抜粋)


「塩爺」(シオジイ)・・・“現行の年金制度はもう崩壊しているから新しいものを作らないとどうにもならん。政府は国民の前でそのことを一日も早く正直に 認めたほうがいい。・・・また、自分はそんなモノは初めから当てにしてないから、年金など一度も受け取ったことがない。”という主旨の発言していたようで す。


以下、海舌のコメント


toxandoria氏の濃厚で、要点を得た自民党批判の中の文章である。 海舌は、塩川氏に御会いしたことが何度かある。塩川氏は、財務大臣経験者であり、長く、大蔵省・財務省畑であり、小泉氏、福田氏、安倍氏の先輩であり、日 本の財政状況について、現場感覚で実感しておられる数少ない識者の一人であることを誰も疑わないだろう。


だから、「現行の年金制度はもう崩壊している」という事実認識は、体制の中枢部が持っている事実認識なのである。


問題は、この事実認識を、政府与党・自民党が、いつ頃から持っていたかである。もっと言えば、年金の崩壊を、官僚、特に、厚生官僚と大蔵省、財務省の主計局が、いつから抱いていたかである。


なぜなら、政府与党と官僚機構は、「年金・・・百年安心」と言い続けているからである。


これが、騙し、であるなら、いつでも、早く、国民に真実を曝け出すことは、官僚の倫理上、当然であり、隠蔽しているなら、隠蔽者の処罰も当然である。


こうした隠蔽官僚で、テレビまで出て、隠蔽工作に加担した官僚が、自民党から国会に出ているのではないか?


公定歩合を上げないのも、政府の赤字額が一気に膨らむために、上げられないのではないか?


また、海舌が数年前から指摘しているように、政府与党と国民自身が、特に、団塊の世代が、「安楽死」を望む政策を熱烈に支持し、外科手術を可能にする体力を消耗しつくしている。


塩川氏の一番の罪は、何故、もっと早く、「現行の年金制度はもう崩壊している」と公表しなかったのか?ということである。団塊の世代が、年金を貰う逃げする制度の継続のみが、行われているだけである。団塊の世代は、ロスジェネを見殺しにしても、「怠惰と快楽」を追及し続けるのである。

toxandoria 2008/03/06 08:07 海舌さま、懇切なコメントありがとうございます。


「現行の年金制度はもう崩壊している」という事実認識が“正しいこと”(というより、もう大分前から崩壊したことは分かっていた)、だからといって“現行の年金制度を無責任に崩壊するに任せることなど到底できないこと”はtoxandoriaも全く同感です。


そ して、おっしゃるとおり問題なのは、そのことを“体制の中枢部がいつ認識していたのか?”ということです。それが、現在のように<パフォーマンス優先の小 泉偽装劇場>の『惨憺たる後遺症』(極端な格差拡大=就業者構造、就業のあり方、資産構造などの甚だしい劣化)で苦しむことになる前に・・・。


結局、日本の体制中枢にあるエスタブリッシュ議員(塩爺、小泉、安部、福田らもそのメンバーですが)らのノブレス・オブリージュの劣化・退廃という問題がこの状況に先行したのではないかと思っています。


しかも、彼らの劣化・退廃の傾向が重症化するばかりとなっているうえに、彼ら自身の“自浄力・免疫能力”までもが劣化しており、更に国民自身の危機意識がこの点へシッカリ向いていないことが問題だと思います。


ここで再び取り上げた<小泉偽装劇場の問題>は、いま欧州で注目されている<パフォーマンス優先のサルコジ問題>に重なるような気がします。


特に、仏サルコジ大統領の商務優先の軽挙盲動ぶりが独仏関係に深刻な亀裂をもたらしつつあり、ベルリンとパリの間では、本当に久しぶりに異様な冷たい緊張感が生まれつつあります。


というよりも、それは「サルコジ大統領のエリゼ宮」と「メルケル首相のベルリン」の間に冷たい空気が存在するというこであり、決して、ドイツ国民とフランス国民の間に冷たい空気が生まれたということではありません。


ここには、紛れもなく欧州の人々(各国市民層)の成熟した民主主義意識の存在が見られます(反面、サルコジ氏の支持率が“過激に”下がりつつあるようです・・・)。


おそらく、この7月のEU大統領選出のクライマックスへ向かって何らかのドラマが生まれるのではないかと思っています。


翻れば、「EUの原型」は、“一国社会主義経済の道に見切りをつけた”仏ミッテラン大統領と、“EU創設への貢献でナチスドイツの反省を実行する決意を固め た”独コール首相が、1984年9月に仏独軍の激戦地であったヴェルダン(Verdun/フランス北東部、ロレーヌ地方ムーズ県)で合同の戦没者慰霊式典 を行った時に本格的にスタートしています。


これは、紛れもなく欧州の中枢にノブレス・オブリージュが確固として存在することを世界中に示した瞬間ではなかったかと思います。


今、仏サルコジ大統領はカーラ・ブルーニとの新婚生活に熱中するあまり、この原点を忘却しているようです。が、いずれ独メルケル首相の呼びかけとフランス国民の批判などによって我に返る時が来ると思われます。


なぜなら、専らパフォーマンスに明け暮れるサルコジ氏は、その年齢から考えても一時的な「集合的精神錯乱状態(brainstorm)」の可能性が高いからです。


一方、我が日本のエスタブリッシュメント議員らには「本格的な認知症」の疑いがあり、国民の多くにも“ソレ”が伝染している節があります。この意味で、日本の劣化・老化現象の方がより深刻ではないかと懸念しております。


海舌 2008/03/06 14:17 toxandoria様


丁寧なフォロー・アップありがとうございます。メイク・アップと言った方が正確かもしれません。


所謂、<小泉偽装劇場の問題><パフォーマンス優先のサルコジ問題>、アベシ、「そのまんま・トンマ」「馬鹿下(橋下)、石原時代錯誤都知事など、この一 連の「軽薄な嘘ラッパ吹き政治」を、同じ日本人の中の多くが支持していることが、世界的な嘲笑の的でしょう。軽薄に装っているのは、本当に軽薄で、墓掘り 人に貢ぐことを嬉々として行う庶民が存在するからです。


「馬鹿と心中するのか」 ここまで踏みつけにされて目覚めない国民に何が期待できるでしょう。


EU諸国の首脳は、緻密に、計算を行って国際政治と国内政治を実行しています。サルコジ氏のパフォーマンスは、フランス国民の利益の範囲内で認められる範囲に限られているでしょう。


日本とは比較になりません。日本は国民の多大な犠牲を、国民が歓喜して支持するのです。もはや、引導を渡す時が近づいていると思います。


多くの破産者と失業者が累積しています。


人心も荒廃しています。政府機能も麻痺しています。古い体制の崩壊は、徹底的に崩壊させるべきです。長期の重圧によって、忍耐のバネは極度に縮きっています。何時でも、屋台骨を完膚なきまでに破壊可能でしょう。


これによって、太平洋戦争の深層部も赤裸々になり、新しい世界の創造が果たされると期待します。

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