★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK48 > 196.html
 ★阿修羅♪
予算案強行採決の裏(ヤフーみんなの政治 The Commons)
http://www.asyura2.com/08/senkyo48/msg/196.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 3 月 07 日 10:02:50: twUjz/PjYItws
 

http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20080306-01-1301.html

予算案強行採決の裏
2008年3月6日 The Commons

 平成20年度予算案と関連法案が野党3党欠席の中で可決され衆議院を通過した。2月29日に通過したことから、政府与党は「予算の年度内成立が確定した」としきりに喧伝している。
 
 しかし野党が欠席のまま予算案が強行採決されるのは極めて異例である。前例は二つしかない。一つは1976年のロッキード国会、二つ目は1988年のリクルート国会で、いずれも戦後最大級のスキャンダルが政治を直撃した時である。異常な状況であったがための異常な形での予算案通過であった。
 
 ロッキード国会で予算案が衆議院を通過したのは2月末日などという余裕のある時期ではない。野党の審議拒否が1ヶ月以上も続いた後の4月9日である。年度内成立どころか新年度に入ってからやっと衆議院を通過した。
 リクルート国会ではさらに遅れた。4月末になっても国会は空転し、時の竹下総理は自らの退陣と引き換えに予算を成立させる決断をした。それほどに異常な中での強行採決だった。
 
 それに比べると今回は全く異常な状態ではない。粛々と審議が続いていた。にもかかわらず野党欠席の中で予算を強行採決したのは何故か。強行採決をすれば野党が硬化し、参議院での審議が遅れ、波乱含みの3月末になる事は必定だ。政府与党はわざわざ事を荒立てたのである。ここはひとつ建前のベールをはがして見る必要がある。
 
 建前とは「3月末までに予算を成立させるため、2月29日に衆議院を通過させた」との主張である。
「ねじれ」国会では参議院で否決されると衆議院で三分の二以上の賛成で再議決をしなければならない。ただし参議院が否決もせずにズルズル引き伸ばして会期末になると、法案は継続か廃案になってしまう。それが政府与党には最も怖い。しかし予算だけは衆議院通過後1ヶ月が経てば自然成立する。だから3月末までの年度内に予算を成立させるため2月29日中に衆議院通過を図った。一見もっともらしいが全く嘘である。
 
 第一に、予算が成立しても関連法案が成立しないと予算は成立しないも同然となる。関連法案にはガソリン税の暫定税率のように3月31日までに成立しないと期限が切れてしまう歳入法案がある。期限が切れるとガソリン税は下がり、その分税収が減る。暫定税率の維持を前提として組み立てられた予算に狂いが出る。欠陥予算となれば執行はできない。従って大事なのは予算よりも関連法案の成立なのである。
 
 関連法案は予算と違って1ヶ月経っても自然成立はない。だから2月29日に通過させる意味はない。それどころか野党を硬化させて国会が空転すると、ズルズルと野党が否決せず、期限切れを迎える可能性がある。だから2月29日に強行採決したのは「年度内成立を確定させた」どころか、「欠陥予算の可能性を高めた」のである。
 
 もう一つ言えば、予算の年度内成立のタイムリミットは2月29日ではない。3月にずれ込んでも良かった。自民党の大島国対委員長が密かに考えていたタイムリミットは3月4日である。これなら野党の顔も立ち、野党に審議拒否の理由を与えない。太陽作戦の方が実は安全運転だった。ところが今回はその道を捨てた。何故か。
 
 29日中の強行採決を指示したのは福田総理である。自民党の大島国対委員長が最終決断を仰ぎに行くと福田総理は躊躇なく29日の採決を指示し、大島国対委員長を驚かせたという。例の「つなぎ」法案のときは中々うんと言わなかったのに、今回は強行採決に積極的だった。この話で分かるのは「つなぎ」法案は福田総理の考えでなく、おそらく道路族からの圧力で採決に同意せざるを得なかった。しかし今回の強行採決は自らの考えというか自分の路線のためだったと考えられる。福田総理の路線とは野党の要求を受け入れる修正路線である。
 
 前にも書いたが、福田総理は民主党の「3月決戦」を回避するため修正路線を決断していた。だから道路族のドンである青木幹雄前自民党参議院会長の要求を退け、1月末に予算関連法案を採決しなかった。そうなると問題は修正の中身である。原案に限りなく近い修正に留めようとする道路族と、修正どころか暫定税率廃止と道路の一般財源化を求める民主党との間で、どこに妥協点を見つけるかが焦点となる。
 
 道路族に近い修正だと民主党は納得せず「3月決戦」は息を吹き返す。しかし民主党の要求を飲めば今度は道路族が黙ってはいない。自民党執行部は古賀誠、二階俊博という道路族の代表によって牛耳られている。福田政権は自民党内部から潰される恐れがある。
 このように足して2で割る妥協が難しい時には、ぎりぎりまで交渉を引っ張って、自民党も民主党もこのままだと大変なことになると全員に思わせる必要がある。それではじめて妥協案を飲ませる事が出来る。企業の賃上げだって徹夜交渉をしないと決着しない。早めに妥協するとみんなに不満が残るからだ。政治もそれと同じである。
 
 従って福田政権としては「3月決戦」は回避するのだが、危うく「3月決戦」になりかねない状況を作り出すことが、道路族に修正を納得させるためには必要である。そう考えれば2月29日に強行採決をしてわざわざ3月の国会審議に波風を立たせた意味の説明がつく。福田総理は民主党の「3月決戦」を利用して道路族に修正案を飲ませようとしているのである。
 
 一方の民主党は暫定税率の廃止と道路の一般財源化を主張してきた経緯から容易に修正には応じられない。しかし妥協せずに突っ張るかというとそうでもない。例えば国民には最も分かり易くメリットのある暫定税率の廃止だが、予算案は既に暫定税率維持を前提に組み立てられている。廃止になれば予算の組み換えが必要になり大混乱する。その暫定税率廃止で民主党には強硬姿勢がみられない。「来年度以降の廃止」などの妥協に応じそうな気配がある。強硬姿勢を貫くのはむしろ一般財源化の方だろう。
 
 修正は、暫定税率廃止のタイムリミットぎりぎりまで行って最終決着が図られることになるが、予算以外にも日銀総裁人事とイージス艦の衝突問題を巡る処分が与野党交渉に絡まるので、修正には様々なバリエーションが考えられる。最後は福田・小沢の党首会談が用意される事になるのではないか。「つなぎ」法案の採決も、予算の強行採決も福田総理は小沢代表と連絡しながらやっているように私には見える。
 
 時の政権は野党と戦っているように見せながら、実は内部の敵と戦ったり、あるいは霞が関やアメリカと戦っている場合がある。むしろ日本の政治は与野党が戦うという単純な図式に当てはまらない場合が多い。それは政治に権力が与えられていないからである。
 アメリカでもイギリスでも選挙で国民の支持を得た政党が権力を握る事ができる。敗れた政党は次の選挙で権力を手に入れるため切磋琢磨する。従って選挙が権力を移動させる。
 
 ところがこの国には選挙で選ばれた政党よりもっと強い権力が存在する。それが明治以来140年間にわたって国を支配してきた官僚である。明治から戦前までの日本の政治史は天皇を後ろ盾にした官僚と議会を中心に国家運営を行おうとする政党との戦いであった。その戦いは政党の連戦連敗。ついには戦時体制の名の下に政党政治は消滅させられた。  
 
 戦後になると日本を支配したアメリカが民主化の名の下に政党政治を復活させるが、一方では官僚に権力を与えて占領支配に利用した。その名残がいまだに続いている。表面上は議会制民主主義の国と言い与野党が選挙でしのぎを削っているが、裏にはかつての支配者としてのアメリカと、そのアメリカによって力を与えられた官僚という権力が存在し、それが国民の見えないところで日本政治に影響力を行使している。
 
 これに対してかつての自民党は野党の反対を口実にアメリカの要求を拒否したり、官僚と対峙しなければならない時には裏で野党と手を組んだりした。いずれも政治以上の権力がこの国には存在するためのやむを得ない手法である。アメリカやイギリスの政治ではありえないことではないか。
 
 ところがこの国の学者やメディアは、政治改革というともっぱら小選挙区制とかマニフェスト選挙の導入を主張して選挙の重要性だけを力説する。選挙で選ばれた者が本当に権力を握れるのなら意味はあるだろう。しかし残念ながら日本の政治土壌では選挙で権力が移動することにならない。それ以前の状態にある事が問題なのである。それを脱するためには机上の理論や教科書どおりに行かない事が山ほどある。「民意を尊重せよ」とか「マニフェスト選挙だ」とか理想を叫ぶだけでは、政治の現状を理解することができなくなり、「今の政治はひどすぎる」という結論になる。そうやって政治改革を叫ぶ者が国民に政治を絶望させる役割を果たすことになる。
(田中良紹)

※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      HOME > 政治・選挙・NHK48掲示板

フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。