森田さんの東奔西走のご活躍ぶりはホームページにて承知しております。小生も土日を利用して、郵政民営化という市場原理主義・拝金主義の成り行きを観察しながら、地域社会で呻吟する郵便局長や職員を何とか激励すべく微力を尽くし全国を巡るようにしております。

先々週は北九州から奄美大島、そして、先週は沖縄本島の南部を訪れました。北九州では、刺客選挙で落選した元郵政大臣の自見先生が、その後の参議院選挙で復活して喜んでいるという地域住民の話を聞きましたし、奄美大島の先のカケロマ島では、郵便局の建物が次々と買い上げられ、分社化で郵便貯金や簡易保険もなくなった上に、外勤の職員がいなくなって不便になってしまったとの怨嗟の声を聞きました。高齢者が年金を受け取るために一日がかりで、バスに乗り山越えをして港町の郵便局に出かけるという改悪の現実を見てきました。民営化で良かったかと、郵便業務の職員に尋ねましたら、職員の数が減って、超勤が増えてその分の実入りが良くなったと、笑えない答えが返ってきました。各所に監視カメラが入り、小さな郵便局の中を壁で仕切って職員相互の交流とシナジー効果の発揮を遮断するという、統制色の強い経営実態も見ました。

先生、郵政民営化は、ほぼ失敗したのではないでしょうか。郵便局の保険に入る人も、貯金の利用者も激減しているそうです。数百億円の施設を、わずか数億円で売却したり、駅前の郵便局の再開発での土地ころがしや、私物化が本質であることが露呈してきたように思います。ある政令指定都市にある支社を訪れましたら、玄関にはにこやかな受付職員の姿に変わって、威圧するように腕組みをした警備員が、来客に誰何（すいか）するというものものしい体制に変わってしまっていました。労働組合の委員長や幹部ですら、職場に自由に入って職員の声を聞いたりすることができなくなったそうです。民間企業でもありえない官僚主義の支社の体制になっていました。郵政民営化で良いことは何もなかったというのが、郵便局関係者の本音の声ですし、利用者国民の側からも、サービスの低下に対する不満の声が上がっています。ばら色であったはずの民営化が、かくも過酷なものであったとは予想していなかったようです。サブプライムローンの問題を発端にして世界の金融が動揺する中で、国民資産の郵便貯金や簡保資金を利用してひと稼ぎするという論理はすでに破綻したように思いますが、いかがでしょうか。

大ニュースです。ドイツポストのクラウス・ツムヴィンケル会長が、脱税容疑で逮捕され、失脚しました。同氏は、2005年の１月に来日して、官邸で基調講演をして、日本の郵政の民営化を声高に主張した人物で、世界の郵政民営化論の寵児でした。ドイツポスト、ドイツポスト銀行を相次いで株式上場させたのですが、最近では外資による買収の噂がしきりで、ご当人が莫大な金額を国外に逃がして脱税をしていたとの容疑ですから、コンプライアンスなどがまったく根拠のないものであったことになります。文字どおり晩節を汚したことになります。来日の時には、新聞社や通信社の一部や経済界の関係者は、ドイツの郵政民営化を成功例として誉めそやしたわけですから、皮肉な結末です。

ドイツでは国家の信用にかかわる大事件になっており、他の欧米諸国のメディアも詳細に報道していますが、どういうわけか、日本では報道が少ないのは残念です。市場原理主義の暴走に歯止めをかけたドイツの当局にあらためて驚いております。

３年前の官邸での会議での、当時の閣僚の発言要旨は、民営化の目的は、利用者の利便が向上すること、職員がより意欲をもって職務に取り組めるようにすること、行財政改革や経済の活性化に資する、税金を納めるなど国全体にプラスになるようにするなどと整理していましたが、いずれも逆の結果になり、郵政民営化は失敗の気配です。憲法違反の解散・刺客選挙までして強行された郵政民営化を、民主主義の基本に立ち返って政治で修正することが大切になってきたように思います。

2008.3.4