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http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20080408dde012070035000c.html
けんかは美学、と心得ている。例えば火事とけんかは江戸の華。何しろ、全国から血気盛んな「単身赴任の男たち」が集まるから、何かにつけてけんかが絶えない。大工職人、町火消し、魚河岸の若い衆、それに支配階級の旗本まで……それぞれに「誇り」があるから引くに引けない。
「江戸っ子は、張りと意気地だよ。けんかするな!とは言わないよ。でも、けんかを売って、負けて帰って来たら家に入れないよ」と、べらんめえ調のお袋に教えられた。僕の実家は隅田川沿いの花柳界で、代々料亭を営んだ江戸っ子の血筋である。
張りと意気地と言っても、けんかに強いだけでは「いい男」と言わない。子供のころ、お袋に連れて行ってもらった歌舞伎十八番「助六由縁江戸桜」。主人公の花川戸の助六は吉原一のモテ男。フィクションではあるが「いい男」の条件がそろっている。(1)けんかに強く権力に屈しない(2)荒っぽいが、身なりは地味(3)それでいて裏地、下帯に色を入れ(4)男に強いが女に弱く(5)細かいことは気にしないが、配慮は行き届き(6)少年のような素直さ−−そんな「男ぶり」はザラにはいない。
石原慎太郎さんが都知事になったころ、都民は彼に「助六」を感じた。キレの良いたんか。けんかはめっぽう強く、(目をパチパチさせるが)取りあえずダンディーで、女性に甘い?のは有名だ。(配慮はすこぶる欠けるが)細かいことは気にしない素直さ……久しぶりの江戸っ子知事と、一度は期待した。
ところが石原さん、次々にメッキがはげ、致命的なセリフを吐いてしまった。1日の入都式。門出の席で新銀行東京騒動を蒸し返し「いろいろ会社に関する法律があって(都が)遠慮して、民間の方に任せた結果、こうなった。私も大きく自戒した」とひとくさり。「民間に任せるとダメだ。みなさんの感覚でやってもらいたい」とまたけんかを売った。
お祝いの席で長々と愚痴を言うなんて……他人に責任をなすり付けるなんて……。第一、民間は早くから「無担保無保証の設立理念そのものが不良債権の温床」と指摘していたんじゃないか?
石原さん、冗談は顔だけにしてくれ。「盗っ人に追い銭」みたいな400億円の追加出資を都民に頼んだのはどこのどいつだ!
アンタのけんかは「醜学」。モウロクした「助六」なんか二度と見たかねえや。(専門編集委員)
毎日新聞 2008年4月8日 東京夕刊
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