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【アメとムチ、もう許すな!】「国と地方」に直面する岩国の新市長(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/08/senkyo47/msg/721.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 2 月 27 日 10:42:21: twUjz/PjYItws
 

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20080227ddm004070003000c.html

記者の目:「国と地方」に直面する岩国の新市長=内田久光(周南支局)

 ◇「言いなりにならぬ」貫徹を−−アメとムチ、もう許すな

 米軍再編に伴う岩国基地への空母艦載機移転を最大の争点に、「条件付き移転容認」を唱えた前衆院議員、福田良彦市長(37)が今月10日、移転反対の井原勝介前市長(57)を1782票の小差で破った山口県岩国市長選は、国と地方のあり方が問われた選挙でもあった。井原市政だった昨年1年間、国は新市庁舎建設補助金の支給凍結で揺さぶりをかけ続けた。財政基盤が弱い地方都市を力で従わせようとする国の態度は、市民に強い反発と不安を招いた。福田市長は「国の言いなりにならない」との約束を守ってほしい。

 選挙戦で、移転問題を最大の争点に掲げた井原氏に対し、福田氏は市の財政再建を前面に出し、移転問題については「騒音・治安問題解消のため国と具体的に交渉する」と繰り返した。そして「小中学校耐震化の5年以内の実現」「児童の医療費や給食費の値下げまたは無料化」を訴え、「市議、県議、国会議員の経験と人脈を生かす。補助金や交付金を引き出すために、省庁のどの扉をたたけばいいか知っている」と中央とのパイプを強調した。

 だが、この訴え方では、基地依存を前提とした旧態依然の「ばらまき型」との批判を免れないと思った。

 井原氏は市長時代、国に「補助金凍結は約束違反」として強く支給を求めた。というのも、補助金は96年の日米特別行動委員会(SACO)の合意に基づき、沖縄県の米軍普天間飛行場から空中給油機12機と米兵約300人を受け入れる見返りだったからだ。そもそも米軍再編とは無関係で、06年度までの2年間で計14億円が支給されていた。

 ところが、国は井原氏が“反旗”を翻すと見るや、急きょ補助金の名目を、米軍再編の協力自治体に払う「再編交付金」と同じ扱いに変え、艦載機移転を容認しない限り支給しないという強硬姿勢に転じた。

 これは、岩国市の苦しい財政に国がつけこんだ「兵糧攻め」に他ならない。

 予算に穴が開くのは避けたいと、井原氏は合併特例債で代替予算を組んだが、移転容認派が3分の2を占める市議会は4度にわたりこれを否決。昨年12月26日、窮地に立った井原氏が「私の首と引き換えに通してほしい」と5度目の予算案を提案し、修正可決後、市長を辞職して今回の出直し選挙になった。

 岩国市はもともと、米軍基地と共存する街だった。井原市長時代も、02年にハワイから米軍の大型輸送ヘリ8機と米兵約180人を受け入れるなど、基地に協力する姿勢を保っていた。

 その“蜜月”関係に亀裂が生じたのは、05年10月の米軍再編中間報告がきっかけだった。神奈川県の厚木基地から空母艦載機部隊59機、米兵約1900人などが岩国基地に移り、航空機が100機を超えるなど兵力が倍増する計画。井原氏は、歴代防衛庁(当時)長官が約束した「地元への事前の相談」を無視したことを問題視。「これ以上の基地機能強化は受け入れられない」と表明した。国と地方の信頼関係を先に崩したのは国ではなかったか。

 街を二分した市長選は、激烈だった。期日前投票率は16・20%と前回市長選(8・74%)の倍近くにはね上がった。印象深かったのは、全国から手弁当で井原氏の応援に駆けつけた地方議員らだった。広島県庄原市の元保守系市議、林保武さん(73)は車で片道4時間かけて何度も通った。「国は言語道断。こんなやり方は許せないと思った」。選挙事務所には「地方自治を守って」「子供たちにいじめの構造を渡したくありません」など全国から届いた激励の手紙や寄せ書きが壁一面に張ってあった。

 福田市長は初登庁2日後の14日、防衛省に石破茂防衛相を訪ね、新市庁舎建設補助金の凍結解除などを求めた。政府は艦載機移転の「受け入れ表明」と引き換えに支給する方針を固めているが、お金が出たから終わりではない。「国と地方のあり方」をこのままあいまいにしていては、岩国市や他の基地の街にとどまらず、全国の自治体にも禍根を残すのではないか。

 自治体が国と対等に交渉するためには、財政面で自立する姿勢が必要だ。とすれば、基地依存を前提とする福田氏の公約は「言いなりにならない」という約束と矛盾するのではないか。

 06年の住民投票と市長選で示された2度の「反対」の民意は一転したが、福田氏は、井原氏に投じられた約4万5000票の民意を忘れないでほしい。そして、補助金凍結に表れた国の「アメとムチ」の対応は今後も起こりうることを肝に銘じて、毅然(きぜん)とした態度で臨むことを求めたい。

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 ご意見は〒100−8051 毎日新聞「記者の目」係kishanome@mbx.mainichi.co.jp

毎日新聞 2008年2月27日 東京朝刊

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