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「経済コラムマガジン08/2/25(516号)
・虚言・妄言を見破る方法
・常識を磨く
日本には経済に関して数限り無い「虚言・妄言」が、メディアを通じて世間に流されている。これによって経済対策に関して、正しい世論の形成が阻害される。ところが多くの政治家はマスコミが作る間違った世論に迎合する。この結果、日本ではいつまでたっても正しい経済政策が行われないことになる。
したがって経済に関する発言が、「虚言・妄言」なのかを見極めることが重要になってる。筆者は、話が嘘なのかどうかを判断する基準を「常識」と考える。悲しいことにこれしかないのである。
しかしメディアは常識外れの話を持出して視聴者を翻弄している。常識に乏しい者は簡単にこの嘘話にひっかかる。メディアの「虚言・妄言」を見破るためには、正しい常識を持つ他はない。
先日、テレビで中国製食料問題を取上げていた。番組では街のそば屋に取材し、「テンプラ蕎麦」の原材料を全て国産に替えると、値段が現在の800円から2,700円にもなると説明していた。ところで飲食店の材料費は、常識では売上高の3〜4割といったところであろう。2,700円にもなるということは、材料費が8倍くらいになるという話である。しかしこれはよほど特殊なケースであろう。国産えびでもよほど高級なものを使わない限り、2,700円なんてなるはずがない。
同じく中国製食料問題に関して、2月17日の日経3面の「けいざい解説」で英国調査会社の数字を用いていた。それによると2007年の豚肉1kgの平均小売価格は、北京で370円、東京で2,280円となり、東京の豚肉は北京の6倍になるという話である。しかしこれは1kgというから分かりにくいのであり、100gにすれば北京37円、東京228円となる。ところが筆者の常識では東京の228円が異常に高いのである。この値段は高級食料店で豚の高級部位を購入した時の値段である。
筆者の感覚では、豚肉も最近少し高くなったが、昨年なら平均的小売価格なら120〜170円くらいのものと感じている。もも肉なら黒豚やゴールデンポークと言った銘柄豚でも150円以下、普通の国産豚の小間切れなら100円以下が普通と見る。とにかく日経が用いている英国調査会社の数字が相当おかしい。
また為替操作によって中国人民元が異常に安く維持されていることに日経の記事は何も触れていない。筆者は購買力平価を考えれば、人民元が5分の1と過小評価されているとずっと主張している。もっとも最近の中国の物価上昇でこれが4分の1くらいになっていると思われる。これらの要因を全て調整すると、北京と東京の豚肉の値段はほとんど変わらないということになる。日本と中国の物価を比べる時には、異常に人民元が安く抑えられていることに言及しなければ全く意味がない。
「テンプラ蕎麦」の話にしても、「豚肉」の話にしても、マスコミは途方もない価格を用いることによって、日本が食料の自給率を上げることは無理と言いたいのである。これは視聴者や読者に対する一種の悪質なマインドコトロールである。実際、マスコミが示す数字が正しいのなら、食料の自給率を上げる努力はほとんど無駄である。
マスコミは自分達の台本に沿った話を作りたがる。この目的のためには平気でいかがわしい数字を用いる。メディアに登場するエコノミストも台本通りの解説を行う。これが正しいと自分の考えで発言するエコノミストや専門家は、直にマスコミ界から追放される。マスコミによく登場する日本のエコノミストや専門家は、テレビタレントと変わりがない。このような日本の状況で「虚言・妄言」に対抗するには、我々の「常識」を磨く他はないと筆者は考える。
・桁違いの話
日本の経済不調からの脱却策が迷走している。あまりにもいい加減な「虚言・妄言」が跋扈していることが大きな原因である。政府は来年度予算に「300億円の医療費支出の増加」「800億円の農家に対する所得補償」を盛込んだ。ところがマスコミは、急に騒ぎだしこれを「改革の後退」と一斉に激しく攻撃した。しかし500兆円を越える日本経済の規模を考えれば、300億円や800億円がどれだけのものか知れている。今日、不況脱出に必要な財政規模を論じるべきなのに、本当に日本のマスコミは経済の素人のような主張を続けている。
真面目な顔をしてエコノミストが、「外国人の旅行客を増やせ」とか「日本にもカジノを開設せよ」と言っている。冗談を言っているのかと思われる。「外国人の旅行客」が少々増えたくらいで、日本経済にどれだけの影響があると言うのか。本来なら国民の所得を上げて、日本人が旅行できることを考えるのがエコノミストの務めであろう。しかし日本のエコノミストにはこの常識が欠落している。
常識で物事を考えるには、問題になっている経済事象の規模を具体的な数字で見ることが良い。例えば米国のサブプライム問題と米国経済の今後を考える時にもこれが有効である。このため関連すると思われる経済の数字を列記することが参考になると考える。
今問題になっているサブプライムローンの総額は1兆ドルと言われている。しかし米国の住宅ローンの総額は11兆ドルもある。サブプライムローンはその1割にも満たないのである。そしてサブプライムローンだけが異常で、問題があり、その他の住宅ローンは全く健全で問題がないという話はおかしい。住宅価格の下落がこのまま続けば、当然、この健全と言われている住宅ローン10兆円の部分にも問題が生じるものと見られる。
さらに不動産担保融資と言った場合、住宅ローンだけではない。商業用不動産向けの融資がある。この残高はなんと3兆ドルもある。サブプライムローンの3倍である。最近この商業用不動産の価格の下落が明らかになってきており、これが次に注目を集めると思われる。商業地の地価はずっと高騰して来ており、特に2年前には年間で3割も急上昇している。
また米国の住宅時価総額は20兆ドルを超えると言われている。そしてここ数年で3割ほど下落するという見通しがある。しかし筆者はこれよりもっと下落すると見ている。仮に3割としても630兆円となり、米国国民の富が630兆円減ることになる。当然、厳しい逆資産効果が起ると思われる。
米国政府とFRBは、先月、サブプライム問題に端を発する経済危機に対して、減税と利下げを決めた。ただ減税の規模は15兆円であり、これで富の減価630兆円に対処できるとは誰も思っていない。当然、数十兆円規模の追加の対策が出てくるものと見られている。
一方、日本ではあまりにもばかげた「虚言・妄言」がマスコミから垂れ流されている。これまで本誌で取上げただけでも「ガソリン税の減税2兆7千億円が景気対策になる」「投資不足に対して外資を導入しろ」「日本も政府系ファンドを創設して稼げ」「外国人の旅行客を増やせ」などである。しかしこんなもので日本経済がどれだけ浮揚すると思っているのだ。「300億円の医療費支出、800億円の農家の所得補償は改革の後退」に到っては、金額の桁数をいくつも間違っている。
来週は、今週号の後半の話を踏まえ、米国経済の行方について述べる。
先週金曜日、モノライン会社アムバックの救済策がまとまったという報道(ニューヨーク市場終了30分前)を受け、大きく下落していたニューヨークダウは200ドル以上も急騰し、最後は97ドル上昇で終わった。しかし救済策の具体的な内容が明らかになっていない。またサブプライム問題はモノラインの問題だけに集約されるわけでもない。さらに今週号で触れたように、商業用不動産担保融資など次から次と米国経済には問題が出てくると思われる。 」
http://adpweb.com/eco/eco516.html
関連
「またもや虚言・妄言・・その1(経済コラムマガジン513号)」
http://adpweb.com/eco/eco513.html
「またもや虚言・妄言・・その2(経済コラムマガジン514号)」
http://adpweb.com/eco/eco514.html
「またもや虚言・妄言・・その3(経済コラムマガジン515号)」
http://adpweb.com/eco/eco515.html
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