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February 17, 2008
『新左翼とは何だったのか』
『新左翼とは何だったのか』荒岱介、幻冬舎新書
ということで長らく元ブント戦旗派のドンだった荒岱介さんの本の二冊目。しかし、学生運動の指導者だった人たちの人生の軌跡というのは、みていて辛いといいますか、「素晴らしい人生だったな」と思わせるような人がひとりもいないというのはどんなもんなんでしょうか。後藤田元官房長官に「あいつらはみんな右翼になった」と言われた一次プントの指導者たちはいくらなんでも変節しすぎですし、かといって、いつまでもやっている人たちの中には観念のみ世界で生きているんじゃないのか…と思うような人も多く、しなやかに時代を駆け抜けているという感じの人はほとんど知りません。まあ、大変なんだろうし、人さまの人生についてアレコレ言えるほど偉くはないんですがね…。
この本も戦後の左翼の歴史から60年安保、70年安保の闘争を振りかえるあたりは、懐古趣味たっぷりすぎてついていけません。
ただ、ちょっと面白い見方だなと思ったのは、日本共産党が武装闘争路線とそれを180度ひっくりかえした「歌ってマルクス、踊ってレーニン」みたいな方向へ無反省に方針転換して人々の信用を失ったあとに五十五年体制がうまくリンクしている、という指摘でしょうか。50年のコミンテルンによる日本共産党批判、それを受けての51年の武装闘争方針がメインの綱領発表とその実践、それが大失敗したことによる53年の大方針転換とスターリンの死という流れになりますが、こうしたメチャクチャなやり方によって大衆の支持を失ったところに、五十五年体制が生まれて、左翼の受け皿として社会党・総評が1/3勢力として台頭したというあたり(p.34-42)。まあ、ひとつの見方だな、とは思いました。
あと、面白かったのは盛り上がりを欠いた80年代〜90年代を新左翼諸派がどうやって生き延びてきたのか、というカラクリが書かれていること。その秘密は、早稲田、法政、明治などマンモス大学の自治会や生協を握り、学内の保守派と手を握って日共系の進出を許さないという一点で野合する形で、資金を得ていたというシステムがあったからなんですね。明治の場合、自治会費だけで6000万円にのぼっていましたが、このほか、学祭などでの儲けや年商数十億円にのぼった生協からの利益あるいはそこから得られる給与などによって、どれほどの資金を得ていたのか。
荒さんは明治を例に、そのカラクリを詳しく書いていきます(以下の引用は一部アレンジ、p.129-132)。
明治大学においては一九六〇年代から、体育会系の人脈を背景にもつ保守派の理事や評議員たちと教職員労組を牛耳る日本共産党が、理事会のパワーバランスをめぐってせめぎ合ってきたのです。
その両者の理事会人事をめぐる攻防は、もっぱら保守派の主導権によって展開され、共産党が理事会を牛耳ることはありませんでした。その保守派の主導権とは、何だったのでしょうか。ここが問題かもしれません。保守派がつねに切り札として切ったカードは、学生会中執や学苑会中執を牛耳っていた新左翼だったのです。
新左翼と日本共産党の非和解的な関係を熟知している (明大の保守系の理事の一部も第一次ブントのOBなのです)保守派は、新左翼を自分のふところに取り込むことで、学内の平穏をはかり、共産党(民青および労組)の伸張を妨げる構造をつくっていたのです。
この構造があるとき壊されたのです。衰退と精鋭化のなかで、新左翼を抱えているメリットが当局になくなっていったからではないでしょうか。
こうして、明治大学の学生運動と生協運動は壊滅しました。早稲田における自治会非公認化と早稲田祭の中止、法政大学における自治会非公認化なども構造は同じです。早稲田や明治や法政に勢力を求めていた諸派は、どこも同じように予算の凍結に大衆的な反撃ができないまま、自治会支配というその華々しい歴史に終止符を打たれたのでした。
その意味では残念ながら、最末期の学生自治会運動というのは、カネ(自治会費)と場所(学生会館)、独占的な権益(学園祭)、自分たちの天下り先(大学生協)を獲得する利権の場になっていたという言い方もできます。
こらアカンわ…という感じですわな。荒さんは大学の自治会をとれるほどの大セクトじゃなかったから、あっけらかんと書けるのかもしれませんが。
新左翼諸派は21世紀に入って、続々と方針転換をして過激な行動スタイルから労働運動への浸透を目指しているといいますが、まさに下部構造が上部構造を規定するという唯物論的な結論になっているのは皮肉なもんです。
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