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2008.2.12(その1)
森田実の言わねばならぬ【90】
平和・自立・調和の日本をつくるために[87]
脱アメリカで日本は必ず甦る《1》――2008.2.10岩国市長選の意味と岩国の悲劇について思う〈その1〉あえて岩国の米軍基地拡張容認派に物申す
「現代は本質的に悲劇的な時代である」(ローレンス、英作家、1885-1930)
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岩国市長選において米軍基地拡張容認派の市長が誕生した直後に、おき猶(ママ)においてまたも米兵による少女暴行事件が起きた。このことを、基地拡張容認を選択した岩国市民はどう考えているのだろうか。聞いてみなければならない。
2月10日夜11時過ぎ、私が乗った東海道新幹線が新横浜を過ぎたところだった。胸のポケットに入れていた携帯電話のマナーモードが振動した。待ちに待った電話だった。取ると「残念な結果です。だめでした」の家内の声が耳に入った。「ありがとう」と小声で言いすぐ切った。
そして、私が心から尊敬している井原勝介市長候補(元市長)の無念さを思った。良妻賢母の見本のような井原夫人と善良そのものの多くの支持者の方々の気持ちを慮った。
電話を切った直後、またマナーモードが振動した。すぐに取ってデッキに移動した。広島で知り合った同世代のHさんからだった。「残念な結果になりました。いま、NHKが相手候補の当確を出しました。私も井原事務所にいて結果を知り、事務所の皆さんと一緒に泣きました。また電話します」。
「ありがとうございました。お体をお大事にしてください」と言って電話を切った。
家に戻って書斎に入った瞬間、またマナーモードが振動した。Hさんからだった。
「いま、帰途につきました。途中の宮島から電話しています。残念なことです。相手陣営の締め付けと大宣伝を乗り越えることができませんでした。相手側の中心にいたのは経済界とJC(青年会議所)の若い経営者でした。彼らにやられました。彼らは空母艦載機を受け入れて政府・防衛省から補助金をもらって岩国経済を活性化させたいと訴え、われわれよりほんの少しだけ多くの支持を得たのです。それと一部の労働組合にやられました。相手側の事務所に岩国連合の大幹部がいたのがテレビに映り、驚きました。小差でも選挙は勝たなければだめです。負けは負けです。オール・オア・ナッシングです。岩国はむごいことになりました。岩国市民が自らの判断で米軍基地の拡張を求め、米軍艦載機の増強を受け入れたいというのです。米軍や政府・防衛省はこれからしたい放題やるのではないかと心配です。岩国の沖縄化です。つらいことです。では、森田先生、失礼します。私はこれから自宅に帰ります。おやすみなさい」。
2008年2月10日の岩国市長選挙は、政府・防衛省の理不尽な「アメとムチ」を拒否し米軍基地拡張に対して反対の意思を示すか、それとも政府・防衛省の「アメとムチ」という理不尽を容認し、米軍基地拡張を受け入れて政府からカネをもらうか、の岩国市民の選択だった。
私は井原勝介候補の苦戦を知っていたが、最後には勝つと信じていた。岩国市民が自らの意思で米軍基地拡張を受け入れるとは考えられなかったのだ。私があった岩国市民はすべて善良そのものの人たちだった。
しかし、選挙結果は私の期待と逆になった。岩国市民は自らの選択によって米軍基地の拡張を受け入れた。「岩国の沖縄化」である。
たしかに岩国市民の多くは空母艦載機の爆音のすさまじさを体験していないかもしれないが、あの爆音を目の前のカネほしさのために自ら受け入れたというのは、いまだに信じがたい気持ちである。今回の岩国市民の選択は、岩国の未来だけでなく、周辺地域の未来をも犠牲にする間違った選択だったと言わざるを得ない。
今回の岩国市民(多数派)の選択によって、米軍・政府・防衛省は理不尽な「アメとムチ」をこれからも使うことにためらわなくなるだろう。むしろ、したい放題するだろう。悲劇が繰り返されるおそれ大である。日本国中、いたるところで、これから米軍・政府・防衛省による「アメとムチ」の理不尽が罷り通るおそれが出てきた。
私は、2008年1月と2月、自らの意思で岩国市に入り、一ボランティアとして井原勝介元市長を応援した。井原氏は立派な尊敬すべき人物である。岩国市民のために真に役立つ人物なのだ。本当に惜しいと思う。
岩国市民(多数派)は、政府・防衛省の「アメとムチ」を受け入れ、岩国を米軍の大軍事基地にする道を選択した。繰り返すが、「岩国の沖縄化」を選択した。その罪、浅からずと言わねばならぬ。岩国大悲劇である。(つづく)
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