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岩国市長選挙の結果から見えるもの(最終回)(天木直人のブログ)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 2 月 12 日 10:37:36: twUjz/PjYItws
 

http://www.amakiblog.com/archives/2008/02/12/#000710

2008年02月12日
  岩国市長選挙の結果から見えるもの(最終回)
 

 メディアを敵視してはいけない

 メディア不信が叫ばれている。確かに最近のメディアは保守化していると思う。権力批判を恐れているかのようだ。岩国市長選挙についても、メディアがもっと取り上げていれば、そして選挙の実態を正しく伝えていれば、それだけで選挙結果が異なったものになったと思う。

 リベラル紙とされてきた朝日新聞はすっかり様変わりした。保守派とリベラル派が分裂状態だ。岩国市長選挙の結果を報じる朝日にその姿を見た。他紙と比べても、社説がなかった。内容が乏しかった。岩国市長選挙の報道姿勢が定まっていないから書けないのだ。

 テレビの報道姿勢はもっと極端だ。活字に比べ画像は圧倒的に影響力がある。そのテレビの報道姿勢が権力批判を忘れて娯楽的に走れば、国民が劣化するのは当然だ。TV報道の責任は大きい。

 なぜメディアはこうなったのか。ジャーナリストがエリート集団(支配層)の集まりとなり自らを権力側に置くようになった、権力側の締め付けが強くなった、視聴率第一の営利団体になりスポンサー批判が出来なくなった、不勉強になり、調査報道の努力を怠るようになってり官製ニュースを安易に流すだけになった、などと、多くの事が指摘されている。いずれもそれなりに当たっているのだろう。

 そのテレビの内情を、TBSの報道局長である金平茂紀という人が講演でしゃべっていた。その記録がアジア記者クラブ通信2月5日号に掲載されていた。その言葉は示唆に富んでいる。

  彼はまず「テレビ不信」という批判が世の中に強まっている事はメディアも自覚しているという。そして、視聴者や市民の批判にさらされるところに行って話すような自分は例外的だと認める。テレビの報道関係者は、人を取材したり、批判する事は平気だが、自分が取材されたり批判される事にものすごく弱いという。その事はとりもなおさず権力者からの批判にも弱いということだ。批判されるような場に出て行くなという意見が多かった事を告白している。

  彼はまた昨今の民放の番組において報道と娯楽が一体したような番組が激増している事を認めている。その理由として制作費がかからないことをあげている。報道局の素材を利用して、知ったかぶりのコメンテーターを呼んできて、スタジオでおしゃべりをしながら、何かを言った気になって終わりにする。これが一番安上がりだという。

  金平氏はこの現状を、赤狩りのマッカーシズムに敢然と立ち上がった米国CBSのアンカーマン、エド・マローの1958年の伝説的演説を引用してつぎのように憂いている。
「テレビがエンタテイメントの享楽主義に走っていった場合、(それは)ただの真空管の詰まった箱に過ぎない」と。50年前にすでに今日のテレビの現状を警告していたマローはやはり格好いい。

  そして金平氏は米国と日本のメディアの比較を次のように述べる。

  「ブッシュ政権の全盛期には、ブッシュ大統領の軍歴疑惑を誤報したアンカーマンが降板したり、取材源を秘匿した記者が収監の危機に直面するなど、米国メディアは衰退した。しかしブッシュ政権が衰退してメディアが盛り返してきた。メディアが盛り返してきたからブッシュ政権がレームダック化したとも言える。それが僕らには羨ましい。9・11の後に硬直化した(米国)社会が変わってきた。日本との違いを考えると情けなくなる」

  彼が述べていた肝炎訴訟に際する女性記者の活躍の話は興味深い。最後の断言は面白い。

  「C型肝炎訴訟でテレビの女性記者が果たした役割はすごく大きい。この問題を掘り起こしてしつこくやったのはフジテレビの女性記者。会社の中でも孤立無援的なところから始めて、どんどんと人を巻き込んでいった。そして患者の全員救済に向けて国の譲歩を勝ち取った。厚生労働省にいる女性記者たちが原告団と密接に連絡を取りながらやっていた。大きな希望がもてる報道振りだった。(それにくらべ)男性はダメ」

  そして最後の金平氏の言葉は極めて意味深長だ。

  「憲法とかデモとか国旗国歌の話とか、そういうニュースがなかなか出なくて事件ばかりやっているのは事実だと思う・・・昨年の参院選の日に小田実氏がなくなった。選挙特番をずっとやっていた時だからその日はカメラを出せなかったのは仕方がないと思うが、葬儀のときぐらいカメラを出せと思うが出していない。生前親交のあった人たちが葬儀場からデモをした。その記録だけでも撮っておく必要があると思ったが、カメラ配置の打ち合わせで「(撮らなくて)いいよ」となった。本当に悔しい思いをした。そういうものに価値があるということを想像するだけの価値観が継承されなかった。僕らの責任なわけです。(撮らなくていいよと判断するような)人たちが多数派を占めているようなところで、国旗国歌で処分を受けた教師を取材しようなんて発想が出てくるなんて、到底思えない」

  引用が少し長くなってしまった。私がこのブログで言いたい事はメディア人も苦悩しているということだ。いたずらにメディアの保守化を批判してメディアを敵視してはいけない。彼らもまたこの世の中のあらゆる人間と同じように、敵にも味方にもなる中立的な存在に違いない。

  メディアの保守化、体制化は確かにその通りである。しかしメディアに生きる人たちも様々な考えの人がいるのだ。彼らが、あるいは組織の論理で、あるいは自らの生き残りの為に、自己規制、自粛することは、現実であったとしても、それもまた時代の中に生きる私たちと同様である。

  私たちが考えるべき事は、権力迎合的になったメディアをいたずらに批判する事ではなく、考えを共有するメディア関係者を見つけ、味方につけ、国民の心に訴えることのできる報道を、こちらから創っていく努力をしていく事である。そういう報道の積み重ねで世の中の動きも変えられる、そう前向きに考えなくてはならない。

 そのためには自らが魅力ある発信源にならなくてはならない。私はそう自らに言い聞かせている。


関連投稿:
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 2 月 11 日

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