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http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080202k0000m010170000c.html
岩国市長選：３日告示 米空母艦載機移転にどう判断 山口
３日告示される山口県岩国市の出直し市長選は、空母艦載機移転に反対して「民意を問う」と辞職した井原勝介前市長（５７）と、容認派が担ぐ福田良彦前自民党衆院議員（３７）の一騎打ちとなりそうだ。国が基地問題で進める「アメとムチ」手法への地元の反発は大きいが、建設業者などには「アメ」に期待があるのも事実。艦載機移転の是非を問う選挙で、有権者が１０日の投開票で示す意思に全国的な注目が集まっている。【大山典男、上野央絵、内田久光】
切り開かれた丘の中腹にプレハブの祠（ほこら）が建つ。岩国市街地南西の愛宕山。江戸中期から信仰を集めた愛宕神社のご神体を住民が山の頂から移した仮神殿だ。
「国のやり方はあまりにもひどすぎる」
近くの百合ケ丘団地に住み、自治会長を長く務めた書家の石田霞村さん（８１）は眼前の造成地を指さした。
約２４００億円を投じて海を埋め立て、岩国基地の滑走路を１キロ沖に移す事業。国は９７年に工事を始め、土砂は基地の西約３キロにある愛宕山から供給された。県と市が債務保証した約８５１億円で掘削、跡地１０２ヘクタールは人口５６００人の「夢のニュータウン」になると聞かされた。
石田さんは「騒音が小さくなるし、造成地に学校とかができて便利になる」と、周辺住民とともに発破の振動や、窓も開けられない粉じんに耐えた。
だが、愛宕山の造成は約２５１億円の借金を抱えて昨年、中止になった。造成地は今、米軍住宅の有力候補地と目され、「反対」の看板が掛かる。
山口県は戦後３首相を生んだ保守地盤。石田さんは「日本の繁栄は自民党政権だったからこそ」と思うが、岩国市の艦載機移転反対への「ムチ」として、国が新市庁舎の建設補助金３５億円を凍結したのは許せない。昨年１２月に開かれた１万人参加の抗議集会では、大きな「怒」の一文字を書き上げた。
基地に隣接する川下地区の住民は０９年春の沖合移設完了を待ち望んだ。自治会役員の６０代男性は「騒音軽減のはずが、艦載機移転の受け皿にされるとは……」と漏らすが、「基地がある限りは防衛省に頼るしかない」と語る自治会長もいる。建設会社社長も「艦載機移転を容認すれば市に再編交付金が入り、地場にも仕事が来る」と移転に期待する一人。
住民の間には「国は約束違反をした」との思いは強いが、移転受け入れで国との折り合いを求める考えも確かに存在する。
◇「アメとムチ」
「１自治体の意向で国の安全保障政策が左右されてはならない」というのが防衛省の立場だ。ただ、地元の意思を全く無視することもできない。そこで採用されたのが「アメとムチ」の手法だ。
「ムチ」で凍結した市庁舎建設補助金は、もともと「アメ」だった。９６年の日米特別行動委員会（ＳＡＣＯ）最終報告で決まった普天間飛行場（沖縄県宜野湾市）のＫＣ１３０空中給油機受け入れの見返りだったのだ。
凍結を実施した当時の防衛省担当者は「ＳＡＣＯの枠組みではなくなり、米軍再編の一環となったから」と釈明。その一方で「状況が変われば再び出すという含みも持たせた」と「アメとムチ」の側面を率直に認め、市長選後も姿勢に変わりがないことを強調した。
一方、福田政権発足後、普天間移設問題を中心に沖縄との「話し合い路線」に転換した首相官邸の姿勢は微妙に異なる。官邸筋は「『ノー』の人に『イエス』と言ってもらうのに札束で動かすような時代じゃない。当選した市長とはしっかり話をしながらやっていく」と語り、市長選後の柔軟対応の可能性を強く示唆している。
【米空母艦載機移転】 住宅地での騒音が深刻化している米軍厚木基地の空母艦載機５９機を岩国基地に移し、岩国の海自機１７機を厚木に移す計画。０５年１０月の在日米軍再編の中間報告に盛り込まれ、０６年５月に日米両政府が合意した。国は米軍再編に伴う施設や訓練を受け入れた自治体だけに再編交付金を支給する制度を昨年創設。受け入れを認めていない岩国市や神奈川県座間市、政府と協議中の沖縄県名護市などは指定から外れている。
毎日新聞 2008年2月2日 0時30分 （最終更新時間 2月2日 2時00分）
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