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http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20080127.html#no_1
沖縄タイムス社説(2008年1月27日朝刊)
[ジュゴン訴訟判決]
拙速手続きへの警鐘だ/米国法を適用した判決
ジュゴンが二頭、寄り添いながら悠々と辺野古沖を泳いでいる。どことなくユーモラスで、今風に言えば、めちゃかわいい。テレビ・ニュースでおなじみのこのシーンは、絶滅の危機にひんしている生き物への慈しみの感情をかき立てずにはおかない。
子どもたちは、この島の自然の豊かさや命の尊さをジュゴンの映像を通して、親子の語らいの中で、学ぶことができる。ジュゴンは、環境教育、情操教育の生きた教材だ。
米軍普天間飛行場の代替施設建設がジュゴンにとって大きな脅威であることは言うまでもない。
大規模埋め立てを伴う巨大な基地建設は、ジュゴンの生息にどのような影響を及ぼすのか。ジュゴンはほんとに大丈夫なのか。誰もが感じるであろう危惧に、アメリカの連邦地方裁判所が独自の立場から明確な答えを出した。
日米両国の自然保護団体などが米国防総省を相手に起こしていた「沖縄ジュゴン訴訟」で、米サンフランシスコの連邦地裁は国防総省に対し、基地建設によるジュゴンへの影響を考慮するよう求めるとともに、ジュゴンに関する環境影響評価(アセスメント)文書を九十日以内に提出するよう命じた。
画期的な判決である。
米国の文化財保護法(NHPA、別名・国家歴史保存法)は、米政府による海外での行為に対し、他国の文化財への影響を考慮するよう義務付けている。一方、ジュゴンは日本の天然記念物であり、環境省はジュゴンを絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧1A類」に指定している。
これらの事実に着目して提起されたのが「沖縄ジュゴン訴訟」である。判決のどこが画期的か。
第一に判決は、海外における米軍基地建設に米国の国内法を適用し、沖縄周辺海域のジュゴンを保護対象として認定した。第二に、判決は、米国防総省のこれまでの取り組みが米国の文化財保護法に違反していることを認め、是正措置を求めた。
基地建設によってジュゴンにどのような影響が生じるのか、きちんと調査し、事前評価をせよ、と国防総省に求めているのである。
アセス方法書書き直し
この判決を誰よりも重く受け止めなければならないのは、事業者である防衛省と、許認可権を持つ県である。
防衛省の環境影響評価は、方法書を作成して県に送付する最初の段階から手続き上の問題があり、内容面でも、故意に伏せられている部分が多く、不備が目立った。
県環境影響評価審査会が方法書の書き直しを求める意見を知事に提出したのは、当然だといえよう。
だが、仲井真弘多知事が沖縄防衛局に提出した知事意見は、差し戻しを求めず、政府への配慮を強くにじませた。
徹底して工期にこだわり、二月からのアセス調査着手に向けて動く政府。この問題を早く片付けたいと常々、主張している仲井真知事。双方の主張は「早く」という部分で一致するようになった。
気になるのは、日米両政府が決めた工期と日程にあわせて事を進めるあまり、肝心の環境アセス手続きが骨抜きにされるおそれがあることだ。
米連邦地裁での今回の判決は、拙速への警鐘、と受け止めるべきである。
アセス方法書に対する知事意見は、ジュゴンについて「複数年」の調査実施を求めているが、沖縄防衛局が公示した環境現況調査の入札内容を見る限り、複数年実施も疑わしくなった。
ここにも「アメとムチ」
米連邦地裁による判決を機会に、あらためて問題にしたいのは北部振興事業費と環境アセスの関係について、である。本来、両者の間にはなんの関係もないはずだ。というより、政治的に関係付けてはならないのである。
環境アセスは、環境影響評価法や県環境影響評価条例に基づいて、法の趣旨に沿って、進めなければならない。
ところが、方法書に対する知事意見提出の際に、政府サイドから伝わってきたのは、アメとムチの発想だった。
「知事が方法書の差し戻しを求めたら、普天間移設に関する政府と地元の協議が円滑に進まなくなり、(北部振興事業費予算は)執行できない」。そんな趣旨の発言をしたというのだから、あきれて物が言えない。
天然記念物のジュゴンや、かけがえのない自然環境が大規模な基地建設によって、どのような影響を受けるのか。環境アセスへの対応に慎重すぎるということはない。
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