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【町田徹の“眼”】時代に逆行する哲学なき「消費者行政庁」構想の拙劣
2008年01月25日11時06分
福田康夫首相は18日の施政方針演説で、消費者行政を一元化して、その新組織に強い権限を付与する方針を打ち出した。これを受けて、自民党の消費者問題調査会(野田聖子会長)は、「消費者行政庁」設置構想を取りまとめた。
政府・与党は、この構想を、年金、独立行政法人、規制改革と失策が続きで急落した世論の支持を回復する起爆剤にしたいという。しかし、その唐突な印象の通り、中身はあまりに稚拙でお粗末な内容だ。なぜ、各省庁が従来、消費者無視の業者行政を優先してきたかの分析を怠っているうえ、現状の「消費者行政庁」設置構想は「小さな政府」という行政改革の流れにも逆行する。言い換えれば、哲学なき愚策に過ぎないのだ。
「今年を生活者や消費者が主役となる社会へ向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を見直していきます。(中略)各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織を発足させます。併せて消費者行政担当大臣を常設します。新組織は、国民の意見や苦情の窓口となり、政策に直結させ、消費者を主役とする政府の舵取り役になるものです。すでに検討を開始しており、なるべく早期に具体像を固める予定です」
1月18日の金曜日。年初から世界的な同時株安を先取りする形で東京株式市場の急落が続き、景気後退懸念が一段と高まる中で、福田首相は、国会で、所信表明演説を行い、この「国民本位の行財政改革」という構想を打ち出した。構想は、抜本的な景気浮揚策や成長力回復策、あるいは株価対策を望んでいた市場の期待を見事に裏切った。そして週明けの東京市場は日経平均株価がたった2日間で実に1300円近くも下落する事態に直面した。
単に、政策センスや眼の付けどころが悪いというばかりでなく、消費者行政庁構想は、航空、電力をはじめ多くの業者行政が抱える最大の問題の一つを見過ごしている。それは、それぞれの業法が、目的条項で「健全な事業者の育成」を掲げる一方で、「健全な市場」や「公正な市場競争」の推進を掲げていないという問題だ。
言わずもがなだが、「健全な市場」や「公正な市場競争」は、事業者が、より多様で、より低廉な商品やサービスを消費者に提供しようと考える最大の原動力になり得る。
ところが、数多ある日本の業法には、これらの市場と競争に着目した目的条項がなく、ただ、健全な事業者の育成だけを目的条項に掲げているため、各省庁は事業者と馴れ合い、消費者無視の焼け太りを繰り返したうえ、天下りの受け皿の供出を要求するといった癒着が罷り通ってきたと言える。
ちなみに、業法の目的条項に「競争促進」を盛り込むことの重要性は、2001年春の通常国会で、主要な業法のトップバッターとして「公正な競争の促進」を目的条項に盛り込む改正を行った電気通信事業法の成果を見れば明らかだ。
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