★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK46 > 381.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://critic3.exblog.jp/7966469/
最低気温が零度近くまで下がり、東京も極寒の中にある。部屋の中にいても朝は手が悴むほど寒い。思いが自然に及ぶのは、路上生活者の人たちのことで、『ワーキングプアV』に出ていた池袋の彼は大丈夫だろうかと気になる。ホームレスの問題が日本で大きな問題になって十年ほど経つが、昔はそれほど気になることはなかった。自分が年をとり、体も弱くなり、冷暖房のない路上で人が暮らすことがどれほど厳しいことかを想像するようになった。そう言えば、子供の頃、田舎で、年寄りはよく天気の話をしていた。「今日はいい日和だね」と、よく年寄り同士が天気の話を言い合っていた。それは、単に無意味な話題で間を持っていたわけではなく、高齢者は健康の不安と向かい合っていて、急な気温の変化で体調を崩しやすく、だから、「いい日和」が何よりの安心であり、生きる毎日の喜びだったのだ。健康でいられる天候への嬉しさが言葉になっていたのだ。そのことがようやく分かる年になってきた。
昨夜(1/21)の『クローズアップ現代』では、貧しくて保険料を払えず、医療費を10割負担させられる「資格証明書」被交付者となり、そのため病気が重くなっても病院に行けずに命を落としている貧困者の問題が報道されていた。高血圧を我慢をしながら仕事を続けて死んだ40代の男性、末期癌の痛みに苦しみ抜いて死んだ50代の女性。NHKの独自の調査で、5県500余りの医療機関で40人ほどの事例があった。厚生労働省は全国調査すらしておらず、問題に全く目を向けていない。逆に、地方自治体に保険料徴収率を上げるように言い、特例で病気のある貧困者に救済の方途がある制度適用を窓口で教えさせない。一昨夜(1/20)の『NHKスペシャル』では、認知症の患者と家族がスタジオに来て悲痛な叫びを上げていた。特に、夫を介護した妻の壮絶な言葉が印象的で、医者の誤診と冷酷な言動によって患者と家族が絶望に追い詰められる様子が生々しく切々と告発されていた。他人事とは思えず見入った。
どの番組も胸が痛む。胸が痛むけれども、それをNHKが取り上げて放送してくれていることに最後の救いを感じる。見るのは気分が重くて辛いけれど、NHKに感謝をして見なければいけないと思い、そして必死で生きようとする弱者の国民の言葉を胸に浸み込ます。こんな放送をしてくれるのはNHKだけだ。民放は4局も5局もあるのに、どの放送局もこんな現実を視聴者である国民に知らせようとしない。きっと、竹中平蔵や松原聡や大田弘子もNHKの『ワーキングプア』や『クローズアップ現代』を見ているに違いないのだ。そして新自由主義の司令本部でNHKの報道を叩き潰す対策を協議しているのである。NHKの今の報道が一般の人々の共感を呼び覚ませば、新自由主義は根本から思想的立場を掘り崩される。イデオロギーの正当性を喪失する。彼らは看過できない。あのインサイダー取引事件も新自由主義者の謀略として疑って見る必要は十分にある。スパイを局内に放っているのではないか。買収した工作員を忍ばせているのだ。
さて、昨日の議論の続きだが、政治状況は刻々と変わっている。政治は生きものと言うけれど、まさにそのとおりで、今はもう半年前と同じ生きものの姿ではない。自民党も変わっている。民主党も変わっている。その二党の周囲で大きな地殻変動が起こっている。自民党の中は選挙を控えて動揺が始まった。それは、改革という名の新自由主義の政策路線を続けるのか修正するかの動揺である。改革継続派が必死で数集めを展開している。一方で、中川昭一の財政出動論のような動きも出始め、派閥の合従連衡とポスト福田の党内権力闘争も絡んで複雑な政治状況が生まれている。福田首相には特に一言で振りかざす政策方向性はなく、あるのは、恐らく、小泉純一郎の外交とは性格を異にする外交であり、小泉純一郎とは立場を別にする内政である。それが動機で、後は、衆院現有勢力を利用して、低支持率に耐えて、極限まで解散を先延ばししたいという願望だけだろう。定見はなく、ブレーンもいない。だが、票への配慮の低姿勢だけは崩さない。
民主党の方も半年前と決して同じではない。国民の生活を第一の政策課題としていると言っているが、その中身だけでなく、外面もかなり変わってきた印象を受ける。民主党の「生活第一」政策のメッセージが、外見上最も真に迫ってリーチされたのは、私の感覚では一昨年秋の「生活CM」である。広告代理店の製作者の腕を誉めるべきだろうが、民主党が本気で格差問題に取り組む姿勢を示しているように感じられた。その後、昨年の参院選以来、民主党のメッセージは小沢一郎の口から発せられるものが中心になり、何が政策の方向なのか徐々に意味不明になり、権力を奪るという政権目的性だけが濃厚に感じられ、大連立騒動の後はそれもよく分からなくなった。そして現在は、小手先財政政策競争の、官僚がExcelのワークシートを弄り回すような、重箱の隅をつつく政策論議の党に変わっている。それは民主党の従来からの体質でもあった。官僚が得意とする微細な行財政項目を並べたてて「政権担当能力」の証明とする。それを誇示する。元の民主党のイメージに戻った。
一昨年の民主党のCMのメッセージは、まるで社民党か共産党かと見まごうようだった。こうして二党は少しずつ変貌を遂げつつあり、その周囲でさらに大きな地殻変動が起き、改革新党がリアルなものになりつつある。1/20の「せんたく」の動きも、明らかに改革新党に呼応する動きであり、政界再編を睨んで、危機にある新自由主義が権力を固め直そうとする動きである。この場合、特に、「せんたく」は、佐々木毅と北川正恭が音頭を取っているところからも窺えるが、例えば、小沢一郎が再び大連立を仕掛けて、自民と民主が一つの大政党になった場合、すぐにそれに対抗する保守政党の立場を明らかにして、二大政党の一翼を担う政党としてマスコミと国民の支持を得ようとするだろう。つまり、大連立で二大政党制が崩壊しないように、二大政党制を支える次の保守政党のスペアなのである。政策は新自由主義で、大連立後の自民・民主の合同党が地方の方に顔を向けるのと対照的な位置取りをする。小沢一郎と福田首相に対して、「いつでも大連立していいですよ」と言っているわけだ。当然、民主から前原Gが、自民から改革派が合流する。
この新二大政党の予想は一つのシミュレーションだが、政治の嗅覚が鋭い人間であれば、背後で大連立が足音を忍ばせて接近している気配に気づくだろうし、目前で改革新党の動きが姿と形を明らかにしている状況も分かるだろう。いずれも衆院選を睨んでいる。このままでは、自民も民主も政権公約で格差是正を掲げざるを得ず、選挙後に改革路線は大きく後退して修正を余儀なくされる。それに対する新自由主義の側の危機感と焦燥が政治の流動性を加速させるのだ。そうした変化の中、半年前のスローガンである「自民党政治を終わらせる」は、すでに陳腐なものに変わりつつある。その標語は、自民党に対して格差是正を標榜して対決姿勢で挑み、政権交代を迫った民主党への支持表明に他ならない。圧倒的な状況優位の中で民主党が徐々に格差是正に対して曖昧な姿勢になり、自民党の中枢が票を危惧して格差対策で動揺する様相を呈し始めたとき、政治目標としての「自民党政治を終わらせる」はどこまで有効な意味があるのか。政治は一寸先は闇だ。闇の中と闇の先がどうあろうと、われわれにとって必要なのは格差是正の政権と政策である。
すなわち、自民の政策も、民主の政策も、選挙前まで可能なかぎり改革是正へと動かしておかなければならない。選挙がどのような結果になっても、選挙後の新政権が改革から離脱し改革を放棄するようにしなくてはならない。それが真の果実であるとすれば、半年前のスローガンは古く、プリミティブな二項対立の構図が固定的に前提されていて、政治の実質を有効に衝いて方向を示したものとは言えない。
by thessalonike4 | 2008-01-22 23:30 | 福田政権・2008年総選挙
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK46掲示板
フォローアップ: