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NHKにおけるインサイダー取引の再発防止と責任追及のあり方を考える(醍醐聡のブログ)
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投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 1 月 22 日 10:38:47: twUjz/PjYItws
 

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2008年1月22日 (火)
NHKにおけるインサイダー取引の再発防止と責任追及のあり方を考える

 求められるのは実効性のある再発防止策


 橋本元一NHK会長は1月21日、記者会見をしてNHK記者ら3人によるインサイダー取引疑惑の責任を取って辞任する意向を古森重隆・NHK経営委員長に伝えたという。また、コンプライアンス(法令順守)担当の畠山博治理事と報道担当の石村英二郎理事も22日付で辞任すると報道された。

 このほか、経営計画担当の中川潤一理事は、次期5ヶ年経営計画が経営委員会に却下された責任を取って、今月7日に辞表を提出しているという。他の7人からも橋本会長宛てに進退伺が出されたが、橋本会長は「連帯責任はあっても、業務の空白は避けなければならない」として、7人の理事は辞任させない意向という。

 それにしても、3人の職員は勤務時間中に自宅へ戻ってインサイダー情報を利用した株の売買注文にふけったというから、あさましいかぎりである。しかし、今回の事件はNHK職員が私生活の領域で起こした放火や痴漢などとは違って、NHKの取材・報道番組制作の業務に密着した犯罪だけに根は深い。それだけに、個人の倫理を問う精神論だけでは済まされず、NHKが保有する公的な情報が不正な私的利益の追求のために利用されない具体的措置を講じる必要がある。

 私は証券取引やM&A情報等を取材する部署の記者、それら記者から出稿される原稿を扱うデスク職員、放送前のニュース原稿にアクセスできる職員については、その家族も含め、あれこれの例外を設けず、包括的に株式取引を禁止する内規を定めるのが一番、わかりやすい措置だと思う。また、放送前のニュース原稿にネット上でアクセスできる職員が5,000人もいるというのは必要限度をはるかに超えたルーズなシステムである。放送後のニュースでもその後の取材の参考に供することは十分可能なはずである。

 不祥事に便乗した経営委員会の越権行為は許されない


 ところで、NHK経営委員会は今回の不祥事を受けて、24日に急遽、臨時の会合を開き、今回のインサイダー取引の責任をとって、全理事に辞表を提出するよう促す方向で検討に入ったと一部で報道されている(『日本経済新聞』2008年1月20日)。しかし、 誤解を恐れずに言えば、私はこうした経営委員会の動きが事実とすれば、NHKの不祥事を大々的に報道するマスコミとその影響を受けた世論のNHK批判に便乗した、越権行為だと考えている。

 そもそも、放送法上、経営委員会には会長及び監事の罷免権はあるが、副会長以下、理事を罷免する権限は会長にあり、経営委員会は会長の罷免案に同意するかしないかの権限があるだけで、自ら副会長、理事の罷免を発議する権限はない。以下、関係する放送法の条文を示しておく。

第29条 経営委員会は、会長若しくは監事が職務の執行の任にたえないと認めるとき、又は会長若しくは監事に職務上の義務違反その他会長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを罷免することができる。
2 会長は、副会長若しくは理事が職務執行の任にたえないと認めるとき、又は副会長若しくは理事に職務上の義務違反その他副会長若しくは理事たるに適しない非行があると認めるときは、総営委員会の同意を得て、これを罷免することができる。

 このような権限配分の下で、会長から罷免案が示されない段階で、経営委員会が現職理事の辞任を促すのは放送法で定められた経営委員会の権限を逸脱した行為であり、許されるものではない。インサイダー事件に関して経営委員会が果たすべきは、NHK執行部が示した再発防策の実効性をチェックし、防止策の浸透をNHK執行部に促すことである。人事面ではコンプライアンス担当と報道担当の理事の辞任が適度な引責であり、他の理事まで辞職という形の責任を追及するのは「連帯責任」に名を借りた「みせじめ的な懲罰人事」といわなければならない。

 さらにいえば、正副会長が交代するこの時期に、まだ残任期間がある現職理事全員が辞任するとなれば、1月25日以降、NHKは正副会長以下、理事全員が新任となり、業務の継続性に大きな障害が起こる懸念がある。まして、このように正副会長以下、現理事全員を執行部から一掃することが、福地―古森の財界コンビで副会長、理事について意中の人事を行う布石であるとすれば、人事権の乱用以外の何者でもない。

 視聴者も報道関係者もNHK執行部が職員のインサイダ−取引の再発防止のために実効性のある措置を講じるかどうかを厳正に監視すると同時に、不祥事にまぎれて経営委員会が職権を逸脱した「見せしめ人事」を強行しないよう、監視の目を注ぐ必要がある。

 日銀総裁としての信任を失墜させた福井日銀総裁の利益相反責任はどこへ行ったのか?


 今回、発覚したNHK職員によるインサイダ−取引事件に関連して、思い起こしたいことが2つある。

1.今回のインサイダ−取引が行われたのは昨年3月8日である。それから約11ヶ月後の、橋本会長の任期切れを1週間後に控えたこの時期に不正取引が公表され、事件化されたのは偶然なのかどうか? 

2.2006年6月、日本銀行の福井俊彦総裁が村上ファンドに対し1000万円を投資していたことが発覚し、国会でも取り上げられた。その後、福井氏が提出した資産公開から、同氏が民間にいた1998〜2003年の間に社外取締役を務めた民間企業数社の株式を取得し、日銀総裁在任中も保有していることが明らかになった。また、福井総裁が村上ファンドへの投資から得た利益は総裁就任後急増し、投資利回りは年率32.5%に達していた。

 日銀総裁といえば、金利政策の決定に直接関わる当事者であるから、インサイダ−情報を利用し得る立場にいたというだけでなく、インサイダ−情報を生み出す地位にいた人物でもある。福井氏がこのような地位に就任後も株取引を自ら行っていたことは、「インサイダー取引が可能な格好のポジション」に身を置いていたことを意味し、公私のけじめのなさは今回のNHK職員の比ではない。

 しかし、小泉首相(当時)は、福井氏の村上ファンドへの投資は「ルールにのっとっていれば問題ない」と語り、責任追及のそぶりさえ見せなかった。こうして福井氏は日銀総裁の座にとどまり、マスコミから真相解明を迫られることもなく、まもなく任期を終えようとしている。

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