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危機を深める福田自公政権打倒へ 新しい左翼政治潮流を作り出そう = 週刊かけはし
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投稿者 ダイナモ 日時 2008 年 1 月 15 日 00:19:41: mY9T/8MdR98ug
 

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7月G8洞爺湖サミット対抗行動を


自滅した安倍極右政権

 「戦後レジーム」から脱却した「美しい国」づくりを掲げ、憲法改悪と米国のグローバル戦争体制の一翼を担う「戦争国家」体制の構築に向けて突進してきた安倍政権は、無様な「自己崩壊」を遂げた。二〇〇七年七月参院選での自民党の歴史的大敗と参院での「与野党逆転」、それに続く九月臨時国会での「所信表明」演説二日後の安倍首相の退陣表明という前代未聞の醜態は、日本の政治地図を大きく塗り替えることになった。
 安倍政権が引き継いだ五年半に及ぶ小泉政権は、「改革なくして成長なし」「痛みを伴った構造改革」を掲げたパフォーマンス政治で新自由主義路線を猛進し、二〇〇五年九月の「郵政民営化」選挙で、党内の「抵抗勢力」を押しつぶして圧勝した。小泉政権は、同時に、政権発足の年の「9・11」同時テロを引き金にしたブッシュ「ネオコン」政権のアフガニスタン・イラク侵略戦争に無条件の支持を与え、インド洋ならびにイラクに自衛隊を派兵し、日本は参戦国となった。小泉元首相は、「靖国参拝」を繰り返して中国、韓国の反発を引き出しながら「嫌中・嫌韓」の排外主義を自民党内部に大きな勢力として結晶化させ、「有事法制」から「米軍再編」と憲法第九条廃棄へのルートを切り開いた。
 安倍政権は、「五年以内の新憲法制定」という課題を前面に掲げた。安倍は小泉の敷いたレールに乗って、教育基本法の改悪を実現し、二〇〇七年通常国会では強行採決に次ぐ強行採決で、改憲手続き法案=「国民投票法案」を成立させた。また防衛庁の省昇格、海外派兵を「本務」とする自衛隊法の改悪を実現するとともに、一月には歴代首相として初めてNATO司令部を訪問し、「日本政府は自衛隊の海外派兵をためらわない」と大見得を切った。五月には「集団的自衛権」の行使を違憲とする政府見解の変更を見直し、海外派兵にあたっての「制約」を取り外す「安保法制懇」を首相の私的諮問機関として発足させた。
 安倍は、参院選に敗北した後も、大敗の原因について自覚していなかった。安倍は政治資金をめぐる松岡農水相、松岡の後を引き継いだ赤城のスキャンダル、「消えた年金」問題、久間防衛相の「原爆投下はしょうがない」発言などの「逆風三点セット」のせいであり、内閣改造によって「戦後レジームからの脱却」に向けた強い決意を示すことで、この「逆風」を再び「順風」に変えることができる、と考えていたようだ。
 しかしそれがあさはかな楽観であったことは、参院選の総括をめぐる地方組織からの批判によって明らかとなった。地方からの批判は、何よりも小泉政権の新自由主義路線の強行がもたらした「格差と貧困」「生活基盤の解体」に関わるものであったからである。この現実に直面した安倍は、彼が「職責をかける」と意気込んだ「テロ特措法延長」による「切れ目のない給油継続」=日米軍事一体化の堅持路線が、参院第一党に躍り出た民主党・小沢指導部の対決方針によって頓挫せざるをえなかったことで、ついに政権を投げ出してしまった。

「底辺への競争」を断ち切れ

 参院での自民党の大敗北の要因は、第一に、バブル崩壊以後の日本資本主義の危機を背景に、小泉・安倍の新自由主義的「構造改革」路線を通じて、地方の商工業・農業が壊滅的打撃を受けたことにより、「成長」の果実を還元してきた利益配分型の自民党の選挙基盤の崩壊が加速していったことである。地方の一人区での自民党の「6勝23敗」という結果はその端的な表現であった。自民党は選挙総括で「改革の負の側面」を指摘せざるをえなかった。自民党を「ぶっこわす」と宣言して、官邸主導のトップダウン方式で新自由主義政策を加速させた小泉政権によって「ぶっこわされ」た自民党の地域組織の疲弊が、この大敗をもたらした。
 さらに、注目しなければならないのは、二〇〇五年総選挙で「既得権」への攻撃に唱和して小泉・自民党の圧勝の一つの要因となった青年層が、自民党から離反する傾向に転じたことである。そこには、マスコミも取り上げざるをえなかった「格差社会」批判にとどまらず、雇用の「規制緩和」、労働の全般的「非正規化」が社会的に拡大し、「底辺への競争」=低賃金化のらせん現象が、青年、母子家庭、高齢者を直撃している現実に抵抗する流れが着実に発展していることである。
 「自由で多様な働き方」や「雇用の柔軟化」というキャッチフレーズの下に大資本による「雇用ダンピング」の攻撃の中で権利を剥奪された派遣労働者など非正規労働の比率は全労働力人口の三〇%を大きく超え、青年、女性の間では五〇%を上回っている。一方、正規労働者に対しては、「日本型ホワイトカラー・エグゼンプション」に示される労働法制の改悪を通じて、無制限の不払い時間外労働の導入がもくろまれている。
 とりわけ「スポット派遣」に代表される過酷な搾取の実態が注目を集め、「ネット難民」に代表される「生存」すら困難な年収百万円台の「ワーキング・プワー」の実態が暴き出された。この中で、青年ユニオン、フリーター全般労組、人材派遣業最大手グッドウィルなどの「日雇いスポット派遣」でのユニオンの結成をはじめ、非正規の若者のユニオンが広がっている。多様な形で非正規の若者の組織化をめざす「ユニオンYES」キャンペーンも発足した。こうした闘いは派遣労働法の抜本的な改正をめざす闘いを当面の焦点としている。
 それだけではない。雇用と賃金の破壊、権利の剥奪をもたらした資本の新自由主義的独裁は、同時に医療、教育、年金、生活保護などの破壊と軌を一にしている。生活保護については自治体による「申請」段階での不法な拒否が頻発し、受給資格そのものがきわめて厳しく制限されているだけではなく、昨年度に老齢加算が廃止されたのに続き、二〇〇九年度には母子加算も廃止されることが決定されている。さらに小泉内閣最後の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(骨太方針06)に基づき、二〇〇七年十一月三十日には生活保護基準引き下げを容認する報告書が厚労省の検討会議によってまとめられた。その理由は「低所得家庭の収入には生活保護支給額を下回る例も見られる」というのが理由だ。
 生存できないほどの低賃金の広がりを理由にして生活保護基準そのものを引き下げ、さらに生活保護水準の切り下げを根拠にして最低賃金の引き上げを抑えるという悪循環がつくり出されている。まさに露骨な引き下げレースである。石油価格、食料価格の高騰に追い打ちをかける消費税の二桁台への大幅な引き上げの企図は、下層の労働者・市民にとって生存そのもののいっそうの困難としてのしかかっている。このようにして戦後の労働組合運動の闘いの成果でもある「日本型福祉社会」の残滓そのものが、資本の新自由主義的攻勢のターゲットになっている。
 この攻撃に対して、非正規労働者、生活保護受給者、ホームレスの人びと、シングルマザー、多重債務被害者などが「反貧困」ネットワークを結成し、「人間らしい暮らし」を求めてつながりはじめた。ここに示される抵抗の表現が、小泉―安倍政権の「改革」の実相をさらけだすギリギリの訴えとして、参院選での自民党の大敗北の底流となっていることを確認しなければならない。

「靖国」派の自己矛盾

 参院選での自民党政権の大敗北、安倍政権の無残な自爆の第二の要因は、安倍首相の極右国家主義的「靖国」イデオロギーそれ自身の自己矛盾である。
 周知のように安倍晋三は、新人議員時代から「靖国・遊就館」史観に立った「歴史修正主義」派のホープとして活動してきた。彼は、天皇制賛美と「大東亜戦争は自存自衛の戦争」という主張を繰り返し、二〇〇〇年十二月に行われた女性国際戦犯法廷を報じたNHKのドキュメンタリー番組に改ざん圧力をかけた張本人だった。また彼は、北朝鮮・金正日軍事独裁体制の日本人拉致という国家犯罪やミサイル実験・「核実験」を最大限に利用し、「制裁」「圧力」の強硬論によって、ポスト小泉の「国民的人気」を獲得したのである。安倍政権の中枢は、「日本会議」「新しい歴史教科書をつくる会」の極右人脈によって固められた。
 しかし、彼の「戦後レジームからの脱却」論の決定的な弱点が、この点にこそ存在したのである。小泉の「靖国参拝」によって最悪の状況に陥った中国・韓国との外交関係を改善することが、彼の政権の最初の課題だったことにそれは示されている。
 米ブッシュ政権にとって、日米同盟関係を強化してアジア・太平洋地域のアメリカの戦略的覇権を維持し、二十一世紀の国際政治の中で急激にその位置を浮上させた大国・中国を「責任ある利害共有者」に組み入れるためには、東アジア・太平洋地域におけるパートナーとしての日本が、アジア諸国への影響力を行使することが必要である。そのためには日本と中国・韓国との外交関係を改善させることがアメリカの帝国主義的国家利害にとっても不可欠だった。アフガン・イラク戦争の泥沼化と失敗、対イラク開戦の口実が全くの虚偽であったことが明白になるに及んで、米ブッシュ政権におけるネオコン派の勢力が後退したことが、「東アジア外交関係」改善に向けた日本への圧力を強めることになった。
 安倍政権のイデオロギー的中核だった「日本型ネオコン」の国際展望は、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官らの「文明の衝突」的な対中強硬路線に支えられたものだったのであり、彼らの退任あるいは孤立化は、「日本会議」らの極右国家主義路線の基盤を奪うものだった。
 ブッシュのイラク、アフガニスタンにおける「対テロ戦争」戦略の破綻がもたらした、対北朝鮮外交のドラスティックな転換によって、安倍政権の「制裁」強硬路線は国際的にも孤立した。北朝鮮の核兵器をめぐる「六カ国協議」から日本政府は蚊帳の外に置かれた。米ブッシュ政権は北朝鮮との外交交渉を積み重ね、「拉致」問題を棚上げしたまま「テロ支援国家」規定を外す方針を決定づけた。
 また安倍自身の政治信条でもある「歴史修正主義」は、米国の保守本流とも激しい矛盾を作りだした。一九九三年の河野官房長官談話を修正して、軍隊「慰安婦」連行において官憲による「狭義の意味での強制はなかった」という安倍自身の発言は、米国内で「慰安婦」問題における日本政府の公的な反省と謝罪を求める議会決議の成立に拍車をかけた。訪米した安倍首相は何とブッシュに対して発言を「謝罪」せざるをえなかった。
 ここでは米国への絶対的依存に基づく改憲・戦争国家体制づくりと、その中での「大東亜戦争=正戦」論的歴史認識の前面化という矛盾が表現されている。安倍政権はこのジレンマによって自縄自縛に陥ってしままったのである。
 極右のイデオローグたちは、安倍の「無責任な退陣」に絶望し、「日本の保守思想」はしばらく立ち直れないほどの打撃を受けたと慨嘆している。しかし安倍政権の無様な倒壊は、決して安倍の「お坊ちゃん」的優柔不断さに帰せられるものではない。それは米国に従属的に依存した「日米同盟」の枠組みの下での極右ナショナリズムの呼号という、戦後右翼と「象徴天皇制」イデオロギー自身の固有の矛盾の発現だと言わなければならない。

自民党の戦略「練り直し」

 本紙二〇〇七年新年号の巻頭論文は、発足直後の安倍政権の高支持率にもかかわらず、数カ月のうちに支持を低下させたことを捉え、安倍政権の「再チャレンジ計画」の幻想性が短期間のうちに暴き出され、安倍政権の政策展開の余地を縛るものとならざるをえないこと、それは政権基盤を浸食するものとなるだろう、と予測した。
 「安倍は前任者の小泉のような『パフォーマンス』による大衆煽動を駆使した強力なリーダーシップに欠けることともあいまって、より与党内『調整』的手法に依存することになるだろう。それは、また小泉によって抑えられてきた諸派閥勢力からの『抵抗』を広げ、政権の安定性を奪うのである」。
 こうしてわれわれは安倍政権が「脆弱な天皇制極右国家主義」政権ともいうべき特徴を持っていると指摘した。安倍政権の自己崩壊はあまりにも突然だったとはいえ、この分析は基本的に正しかったのである。
 安倍の突然の首相辞任によって成立した福田康夫内閣は、参院での「与野党逆転」という「ねじれ現象」を受けて、きわめて困難な政権運営を強いられている。福田は首相としての初の所信表明演説で「野党の皆様との対話」を前面に押し出し、改憲や「集団的自衛権」行使の容認などの「安倍カラー」を払拭した。「安保法制懇」「美しい日本懇」などの私的諮問機関も空中分解してしまった。
 北朝鮮に対する「圧力」重視の対決外交をはじめとした「東アジア外交戦略」もブッシュ政権の政策転換に合わせて修正せざるを得なかった。テロ対策特措法は期限切れとなり、新テロ特措法案が衆院で可決されたとはいえ、海上自衛隊はインド洋から撤退せざるをえなかった。改憲手続き法が規定した「憲法審査会」の実質的発動は止まっている。
 財界が求める「ホワイトカラー・エグゼンプション」など労働市場での規制緩和政策、高齢者医療負担の増額などの一連の新自由主義的な社会保障切り捨てプログラムの導入は「延期」され、自己負担制に基づく「障害者自立支援法」は「見直され」ようとしている。小泉・安倍政権の一連の新自由主義と改憲に向かう政策プログラムは一時的にではあれ後退したのである。
 こうして福田政権は、二〇〇八年に確実に行われるだろう総選挙までの「過渡的政権」「緊急避難政権」としての性格を持っている。総選挙に至るこの時期は自民党にとって小泉・安倍戦略に代わる新たな戦略のための「練り直し」の時期である。しかしその「練り直し」はどのような内容なのだろうか。
 ブッシュ政権の「対テロ戦略」はいたるところで破綻している。二〇〇七年二月の「イラク急派」による三万人の追加派兵にもかかわらず、米軍による「武装勢力掃討作戦」は完全に失敗した。二〇〇七年中の米兵の死者は過去最高を記録し、開戦以来の死者数は四千人を目前にしている。イラク市民の死者は数十万人に達し、国内・国外への難民は数百万人に上っている。シーア派主導のマリキ政権と米軍との矛盾・亀裂も拡大している。櫛の歯が抜けるようにイラクの戦場から離脱した「有志連合」諸国のリストに、新たにポーランドとオーストラリアが加わろうとしている。「テロとの戦争」にとって重要な同盟国であるパキスタンの政情不安は、ブッシュ戦略にとってのさらなる困難を加重することになる。二〇〇八年の米大統領選挙の結果によっては、米軍のイラクからの撤退も日程に上ることになるだろう。ブッシュと共和党が、あくまでもイラクにおける長期駐留と多国籍企業の石油利権に固執しようとしてもである。
 また米ブッシュ政権は「地球温暖化」対策をめぐってEU諸国との対立を深め、資本の生産活動を擁護するために二酸化炭素ガス排出規制の目標設定にあくまで抵抗して集中的な国際的な批判を浴びている。中米、南米で相次ぐ反米左派、中道左派政権の誕生と前進、資源の国有化や「南の銀行」などに表現される社会的公正を体現した地域的秩序への模索は、新自由主義的グローバル化に対決する民衆運動の前進と米帝国主義のヘゲモニーの衰退を印象づけている。
 さらにサブプライムローンの破綻に端を発したアメリカの住宅バブルの破裂、それがもたらしたグローバルな金融市場の不安定化と景気後退は、石油・原料資源、農産物価格の急騰によるインフレの昂進ともあいまって、「ファンド資本主義」と言われるグローバル経済の混乱と危機をあらためて暴露している。
 こうした経済的要因は、新自由主義的な規制緩和戦略の強行的推進による社会的不安定、絶対的貧困化ともあいまって、小泉―安倍の「成長率押し上げ」戦略の見直しを強制している。それは「財政再建」重視による消費税率の大幅な引き上げをもたらすだろう。
 しかし、自民党の小泉・安倍路線に代わる「新しい戦略」は、まさに「手直し」「尻拭い」以上の意味を持ちえない。高度成長時代の利益配分構造と「終身雇用・年功賃金」にもとづく企業内の安定的労使統合構造の余地は存在しない。日本経団連に代表される支配階級の意思もまた、どんなことがあっても新自由主義的なグローバル資本主義の枠組みを堅持し、日米同盟を通じた国際的な階級的支配秩序を維持する一角を担うところに収斂されている。

福田政権と「大連立」の企み

 参院での「与野党逆転」による自民党の統治能力のマヒ状況は、資本の階級的支配のための効率的な政策展開を阻害する要因であり、早急に克服しなければならない。新自由主義は「強い国家」を必要とするのである。したがって、参院選直後から保守政界のフィクサーである読売新聞社主の渡辺恒雄や中曾根康弘ら「長老」たちの間で、民主党をふくめた「大連立」の構想が練られることになったのは必然であった。ブルジョア支配階級の安定的な政治支配は、同一階級の二つの政治分派=ブルジョア二大政党による政権交代システムの形成を必要とする。
 現在の衆院における「三分の二」の与党勢力、そして参院における野党・民主党の第一党という「ねじれ」構造は、この「ブルジョア二大政党システム」の、きわめて変則的な現れであり、衆院と参院の意思が大きな争点的法案ごとに異なるこの「変則」性そのものが「大連立」を緊急の課題として要請することになったわけである。
 十月末、民主党の小沢一郎代表は、福田首相との党首会談を通じてこの「連立」要請を受諾した。しかし民主党指導部は「時期尚早」として、小沢の提案に反対した。十一月四日の小沢の「党首辞任」表明とその撤回というドタバタを経て、自民・民主の二大政党による「大連立」は次期総選挙までは「お預け」となった。しかし、この枠組みは新しい「政界再編」をふくめて総選挙後に再浮上する可能性が大きい。
 「大連立」構想の最大のテーマが、テロ特措法の期限切れの中で、自衛隊の新たな海外派兵と武力行使の「原則」をめぐるものであったことは象徴的である。それは小沢の論理では「国連決議」を前提にした自衛隊の参戦国化=恒久的派兵法と「集団的自衛権」の行使を定めるものであった。そしてこの点では、安倍政権の下での「安保法制懇」の論議とクロスしているのであって、自民党と小沢・民主党の違いは大きなものではない。
 実際、小沢一郎が「世界」07年11月号に発表した論文「今こそ国際安全保障の原則確立を」は、自民党との「大連立」を想定した綱領的立場を明確にするものであった(「国連の決議でオーソライズされた国連の平和活動に日本が参加することはISAFであれ何であれ、何ら憲法に抵触しない」という同論文の主張については本紙07年10月22日号の平井「小沢一郎のISAF派遣論批判」参照)。民主党「防衛族」の一人である長島昭久衆院議員は「国連の要請」に基づく自衛隊派兵を、厳格に「国連決議」によるとして解釈するのではなく「国連決議の実効性を確保するための国連加盟国が行う活動」にまで拡大すれば、「与野党の溝はそれほど大きなものではない」ので、「あとは、与野党のリーダーが『政争は水際まで』と腹を決めて国益重視の政治決断を下すのみだ」と政策合意の必要性を強調している(「毎日」07年12月2日、「発言席」欄)。
 今回の「大連立」に向けた動きは、根本において九条改憲と恒常的海外派兵法を軸にした両院三分の二の多数派形成を射程に入れたものである。われわれはこうした流れを批判し、その流れにくさびを打ち込み、逆転させるための闘いを推進していかなければならないのである。今年こそがその正念場である。

「ねじれ国会」と民主党

 民主党は自民党新憲法草案とは異なった形ではあれ九条をふくむ「改憲」を承認し、ある意味では自民党以上に新自由主義的な「規制緩和」、「官から民へ」を掲げた「小さな政府」を主張するブルジョア政党である。そしてその内部には、前原・前代表のような「親米防衛族」や、「日本会議」国会議員連盟に所属する「靖国派」を抱えた政党である。この点でわれわれは民主党の基本性格について労働者・市民に対し一つ一つの具体的事態に即した批判を強める必要がある。たとえ民主党が社会民主主義的傾向からウルトラ新自由主義派、九条護憲論のリベラル平和主義から「日本会議」の極右国家主義者までの「幅」をもった文字通りのつぎはぎ的存在であり、最大の労働組合ナショナルセンターである「連合」に支援された政党であったとしても、現実の政治において果たす機能、それを突き動かすイニシアティブが、資本の利害、ブルジョア国家の「国益」であることについて、われわれはあいまいにすべきではない。
 しかし同時にわれわれは、民主党が「生活重視」を掲げ、小泉・安倍の新自由主義路線がもたらした「格差社会」の現実を批判して参院選に勝利し、「政権交代」のために自民党の対決路線を強めてきたことも注視するべきある。また小沢の「国連重視」戦略には、ブッシュ政権の「対テロ戦争」の破綻とアメリカの単独覇権主義の衰退の中で、米大統領選挙の結果をも見据えながら、従属的な対米関係を相対化させようとする模索も含まれている。
 われわれは「自民党も民主党も同じ新自由主義の改憲政党」というそれ自身「正しい」規定を繰り返すだけでは不十分である。とりわけ、共産、社民の護憲勢力が民主党の圧勝との対極で議席を減らし、その政治的比重をさらに後退させている現実において、国会での法案審議をめぐる攻防や、資本の新自由主義的攻勢を押し戻す具体的な改良的要求や「戦争国家」化への歩みに歯止めをかけ、独自の運動を発展させていくプロセスで、与党の政策展開がスムーズに機能しない「ねじれ国会」をどう活用できるか、という課題も問われることになるだろう。
 共産党は参院選後、「たしかな野党」という自強路線を修正し、民主党との院内「野党共闘」を作りながら、総選挙においては従来の「全選挙区での候補擁立」を変え、多くの自民・民主対決区で事実上民主党候補の当選に道を開く方針をとることになった。社民党もまた「護憲」の立場から民主党を批判しつつ、実際には大部分の選挙区で民主党候補に投票することにならざるをえない。多くの市民団体、NGOなども固有の要求を制度・政策的に実現するために民主党への依存を強める対応に向かっている。
 総選挙を通じた民主党を中心とする「野党連合政権」の可能性、というこの特殊な局面の中でわれわれは、労働者・市民の闘いをどのように作り上げるべきかを論議の俎上に載せていかなければならない。
 とりわけ非正規労働者の低賃金・無権利、生活保護切り捨てなどの深刻な「貧困」問題に関する法改正を実現していく課題、日本軍「慰安婦」の戦後補償の法制化、障害者自立支援法の根本的見直しなどの切実なテーマにおいて、参院での「与野党逆転」状況を活用していくことがきわめて重要である。
 さらに「新テロ特措置法案」の阻止、イラク特措法の廃止、さらに辺野古への米軍新基地建設反対などの「米軍再編」プログラムの撤回を求める闘い、守屋・軍産疑獄の徹底究明と「防衛機密」に守られた軍事予算にメスを入れ、その大幅な削減を求める運動などにおいても、同様の努力が問われることになる。
 言うまでもなくこうした闘いは、民主党から政治的に独立した労働者・市民の議会外的な大衆運動の構築なしには不可能である。政府・文科省の沖縄戦教科書記述の検定意見に抗議して、昨年九月には十一万人を結集する「県民大会」が開催された。十二月一日には岩国で、米空母艦載機の移転を住民投票で拒否した井原市政と市民への見せしめとして市庁舎建設のための交付金を政府がストップしたことに抗議する怒りの一万一千人集会が大成功を収めた。
 座間、岩国、沖縄など「米軍再編」の負担を一方的に強制される自治体での闘いと結びつけ、「米軍再編」と密接にからんだ守屋・軍産疑獄の徹底的究明とリンクさせながら、新テロ特阻法案の成立阻止、自衛隊のイラクからの撤退などの国会行動のダイナミズムを作りだすことが求められている。
 「改憲多数派」の形成に向けた「大連立」あるいは「政界再編」に反対する闘いの強化と、資本の新自由主義独裁に対する抵抗の広がりに向けて、この「ねじれ国会」状況の中でどう闘うかという問題を、具体的な政治的分岐点を意識的に作りだしながら論議を深めていく必要がある。

オルタナティブ左翼の旗を

 福田政権の下での自民・公明連立政権の危機の広がり、民主党が参議院で主導権を握った状況での闘いの「可能性」と、「大連立」や政界再編を通じた「改憲三分の二勢力」形成の動きという複雑な政治状況の中で、われわれは新しい左翼的オルタナティブ潮流をめざす闘いの飛躍を勝ち取っていかなければならない。この複雑で不安定な政治情勢の中で、自らの階級的独立性を確立しながら、急変する事態に機敏対応した運動方針を築いていくためには、たとえ少数派であったとしてもきわめて自覚的・組織的な闘いが求められるからである。
 われわれは、国会選挙において自民・民主の二者択一に反対し、改憲と新自由主義に対決する「第三極」の形式に積極的に関与していく。しかしわれわれの課題は、そこに限定されるものではない。新自由主義的な資本主義システムを根本的に変革し、オルタナティブな社会主義を目指す政治潮流を、労働者市民の運動に根ざして作り上げることにわれわれは挑戦する。
 こうした中・長期的展望を射程に入れた課題に挑戦していくための闘いが直面する主体的状況は言うまでもなく決して容易なものではない。しかし、左翼に向けた新しい政治的スペースは確実に作りだされていることに、われわれは確信を持つべきである。
 第一は、参院選でも示された青年層をふくむ政治意識の流動化が端緒的にではあれ確実に始まったことである。その多くは、自民党政治に対する批判と危惧を民主党への投票として示した。しかし同時に、東京選挙区で六十八万票以上を獲得した川田龍平候補の当選は、人権・環境・平和を体現する新しい政治への期待が存在していることを示している。
 小泉・安倍の新自由主義政策が引き起こした格差と差別、貧困と無権利、不正への怒りは、いまだダイナミックな社会運動へと発展しているとはいえないにしても、今日のグローバル資本主義の危機は、そのための条件を不断に醸成している。
 第二は、憲法九条改悪や自衛隊の恒常的海外派兵に反対する「平和主義」的政治意識が、国際的な人権と民主主義意識、差別や環境破壊に抗議する意識と結び付き、グローバルな「変革」を求める方向性を示していることである。二〇〇三年のイラク反戦運動にデモ・デビューした人びとの多様な運動の持続の中にそれは表現されている。
 これらの可能性は、世界社会フォーラムの運動がそれ自身、多国籍企業との妥協の下で、より「人間の顔」をしたグローバリゼーションを求める傾向と、ラディカルなオルタナティブを求める潮流との間での対抗の場となっていることに示されるように、それが反資本主義的な変革の意識へと発展していくためには、左翼の側の意識的でねばり強い挑戦が必要なのであり、今こそその時である。
 第三は、第四インターナショナルの運動の歴史的・国際的教訓の蓄積と、大衆運動に根ざした経験が、この激変する情勢に立ち向かう上で、有利な位置を与えていることにわれわれが確信を持つからである。スターリニズムの歴史的犯罪、社会民主主義が資本の新自由主義的攻撃に同化している国際的現実にもかかわらず、新左翼運動を出自とする一部のグループは、政治運動から召還し、あるいは中核派に代表されるように内ゲバ主義の犯罪的誤謬を克服しようともせず「世界革命情勢」といった観念的ドグマにはまりこみ、社会主義革命派として果たすべき責任を放棄している。
 われわれはこの間、全世界の第四インターナショナルの同志たちの闘いを共有しながら、複数主義的で民主主義的な反資本主義左翼政治潮流の形成に向けた挑戦を具体化するための努力を自らに課してきた。それは決して、資本と帝国主義国家に対する集団的な抵抗の大衆的復権を待機する姿勢によっては実現できない。抵抗の初歩的段階から、人びとと共に闘い、働きかけ、獲得するための闘いが存在しなければならない。それを通じて新しい左翼オルタナティブの旗を具体化していくのである。
 総選挙が確実に予測される二〇〇八年は、「政権交代」「大連立」「政界再編」などをめぐる政党間の攻防と駆け引きが目まぐるしく展開されることになるだろう。われわれはこの激しく揺れる政治の流れの中で、イラク反戦と自衛隊即時撤退の闘い、改憲阻止・米軍再編反対の闘い、G8洞爺湖サミットへの対抗行動、そして新自由主義がもたらす貧困と社会的排除に抗する運動を一から共同して作り上げながら、積極的かつ柔軟に、新しい左翼政治潮流への歩みを継続していく。
 われわれは自らの責任を自覚し、「社会主義革命運動の再生」への道のりを多くの人びとと論争し共同しながら共に歩んでいきたいと決意している。 (平井純一)
 

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