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イラクの前にパナマがあった、、、【みーぽんのカリフォルニアで社会科】
http://www.asyura2.com/08/reki01/msg/280.html
投稿者 tk 日時 2008 年 4 月 22 日 19:31:11: fNs.vR2niMp1.
 

http://miepong.blog81.fc2.com/blog-entry-69.html

週末にPanama DeceptionというドキュメンタリーのDVDを見ました。

Deceptionは要するにだますこと、ごまかすことの意味なので、パナマ謀略事件、とでも訳すといいのでしょうか。リベラルメディアでは、ちょっと前にWMD(大量破壊兵器)を揶揄して、weapons of mass deception (大量ウソ兵器)という言い方が流行ったことを思い出しました。

1989年にパナマのノリエガ将軍の独裁を終わらせる、という名目で、米軍がパナマに侵攻した事件がありました。(参照Wiki:パナマ侵攻)

メディアはノリエガを麻薬王として、また民主的な選挙を妨害する独裁者として描き出し、米軍を歓呼の声で迎える人々の姿を映し出しました。当時の記憶はあまりないのですが、この侵攻で民間人に死傷者が出た、というような報道があった覚えはほとんどありません。

ところが、実際は米軍は2万4千名の戦力を導入し、パナマ防衛軍に対してだけではなく、住宅地の爆撃、民間人に対する狙撃、その後家を失った人々を収容所に収容し、男性だけ拉致してその場で射殺したり、テレビ、ラジオなどメディア施設を接収し、アメリカのお墨付きを受けたエンダラ政権に反対すると思われる勢力、政治家や労働者運動のリーダーなどを嫌疑もかけずに逮捕拘束したりということを次々と行っていきました。

ペンタゴンによる公式発表によれば民間人の死者は250人前後とされていますが、独立調査グループや、パナマ人側の調査によれば1000人から4000人ぐらいの死者が出たといわれています。実際数年たっても行方不明者は数知れず、その多くは米軍によって秘密裏に埋葬され、その埋葬場所が次々と明らかになったのです。

ところでパナマのような小国の独裁者追放のために、アメリカはなぜこれほどの軍事作戦を行わなければならなかったのでしょうか。DVDではそれがパナマ運河の権益と関連するのだ、と主張しています。

もともとパナマはコロンビアの一部でしたが、フランスからパナマ運河建設の権益を買ったセオドア・ルーズベルト大統領は、パナマの分離独立を援けた上、パナマ運河を囲む地域に対する永久租借権を確保します。

ところがパナマからの高まる返還に対する要望に応え、1977年カーター政権の時に、新パナマ運が条約が締結され、租借権は2000年1月1日までにパナマに返還されることが決まりました。

イラン人質事件でカーターの再選を阻んだレーガンは「パナマ運河はアメリカのものだ!」と選挙運動中にも高々と宣言します。このレーガンを引き継いで大統領となった父ブッシュにとって、ブッシュがCIA長官だったとき以来金銭的に支援してきたノリエガは、パナマ権益の保険になってくれるはずでした。米国のエージェントとして働く見返りに、ノリエガの麻薬取引は黙認され、ノリエガは着々と手兵のパナマ防衛軍を強化していきます。

ところがノリエガは徐々に左傾してゆき、ついには中南米の首脳を集めた会議の席で、アメリカからの独立をぶつようになり、ブッシュにとっての目の上のタンコブになってしまったのです。米軍が1999年に引き上げた後の政権が、軍事的に無防備で、米国に恭順を示さなければならない、ということを知らしめる必要があったのです。

そこで1989年の12月20日、米軍はたんにパナマ防衛軍をたたくだけではなく、民間人(それも貧しい有色人種のみ住む)の居住地をも爆撃し、その力を誇示する必要があったのです。数々のインタビューが、「わたしの娘はノリエガを支持していたわけでもないのに撃たれて死んだ」という証言などを引き出し、「子供づれで親戚に会いに行くところだったのに」死体がバラバラになるまで戦車に破壊された乗用車の映像や、米軍に射殺された死体を撮影した直後に殺されたカメラマンの死体など、主要メディアに載らなかった事実が次々と明るみに出されます。

フィルム作成当時(1992年)、居住地を爆撃されて失った人々は、ホームレスだったり、飛行機格納庫に設けられた狭い収容所暮らしで、補償はされないままだ、と口々に訴え、カメラが入ることを阻止しようとする米軍兵士に詰め寄り、ついには自由なインタビューのために兵士をその場から追い出すことに成功します。

結局このあと米軍お墨付きのエンダラ政権はパナマ防衛軍を改組、実質的に軍事力をもたない国になります。これによって、パナマ運河の権益は紙の上ではパナマに返還されても、いつでも米国が接収できる状況になったといってもよいわけです。

日本の軍が解体されたこと、日本中に米軍の基地があることを思うと、規模の大小はあれ、パナマと日本の状況は実はそんなに違わないんだ、ということが胸に突き刺さってきました。

日本はアメリカにとって、太平洋の不沈空母として手放すわけにいかない重要な拠点なのだ、ということ。

メディアや政党にもCIAを通して資金が流れ、巧妙に国民の世論が誘導され、自民党の支配が続いてきたこと。(今は保険として民主党にも資金が流れているのでしょう。)

日本の軍事力はアメリカの戦略の一部となることのみが条件で存在していること。

アメリカ人にとってはパナマの謀略事件は、独裁者を育て、都合が悪くなると悪人のレッテルを貼って民間人を巻き込む攻撃をする、というシナリオにおいてイラク戦争のプレリュードとして捉えることができるわけですが、日本人のわたしにとっては、アメリカの日本に対する情報戦略、メディア戦略、米軍のプレゼンス、ここらへんの問題を考えさせる良いきっかけになったDVDでした。

最後に、このドキュメンタリーは興味深い内容ではあっても、音響や映像の質も悪く、エンタテインメント性はなく、あらためてマイケル・ムーアがドキュメンタリーの世界にもたらした影響の強さを思い知らされました。みなさん、ムーア監督の「Sicko」見ましたか?DVDも出ているので、こちらもぜひ見てみてくださいね。

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