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ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
12月19日(金) 9時39分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20081219-00000000-natiogeo-int
最新の研究によると、地球の磁場の内側に予想外の太陽粒子の厚い層が存在していることが判明し、太陽に対する地球の防御体制に大きなほころびが存在する可能性があるという。
可能性が現実になった場合、太陽活動が活発化する時期になると、地球では過去数十年で最悪の太陽風が吹き荒れることになる。次の太陽活動極大期は2012年に始まると予測されている。
太陽から流れ出る荷電粒子は太陽風と呼ばれ、ときおり地球の極地上空に美しく輝くオーロラを作り出す。しかし、激しい太陽風が生じると人工衛星の動力源で干渉が発生し、船外活動を行う宇宙飛行士は危険にさらされ、場合によっては地上の電力網が全滅する可能性もある。
アメリカのメリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターに所属する宇宙天気の専門家デイビッド・シベック氏は、「次のような事態が予想される。太陽粒子が侵入してエネルギーを蓄えると、巨大な磁気嵐が吹き荒れ、見たことのないほど美しいオーロラが輝き、地球の放射線帯に大きな乱れが生じる。すべてが本当に起きたら、極大期を迎えた後の11年間は非常に厳しい時代となるだろう」と話す。
NASAの観測衛星テミス(THEMIS)のデータにより、地球の磁場が作る球状の防御壁である磁気圏の最も外側の部分よりも内側のところに、厚さ6500キロほどの太陽粒子の層が形成されており、急速に成長していることが明らかになった。通常、磁気圏は時速約160万キロで太陽から流れ出る太陽風のほとんどを遮断する。
サンフランシスコで今週開催中のアメリカ地球物理学連合2008年秋季集会でシベック氏は、「太陽風は絶えず変化している。そして、地球の磁場は、強風にもまれる吹き流しのように太陽風の流れに応じて前後に大きく揺れ動く」と話している。
地球の磁場線は地域によって向きが異なるが、太陽風の影響を最も受ける赤道付近では磁場は北向きになっている。一方、太陽風も磁場線を地球に送っており、太陽からの磁場線の向きは11年周期の太陽活動に合わせて変化する。
従来の学説では、太陽からの磁場線が北向きの場合、地球の北向きの磁場に対する補強材となり、太陽風に対し“盾を掲げる”効果があると考えられていた。南向きのときにオーロラの輝きや宇宙天気由来の災害が増すという事実がこの説の1つの根拠となっている。
しかし、観測衛星テミスは真実が逆であることを示した。この事実に初めて気付いたカリフォルニア大学バークレー校に所属するテミス研究員のマリート・ウエロセット氏は、「テミスのデータにより、2つの磁場が同じ方向に向いているときの方が、太陽粒子の層がはるかに厚くなることが判明した。このとき、地球の磁気シールドを通過する粒子の量は20倍以上になる」と話す。
この発見の裏にあるメカニズムを解明するため、ウエロセット氏とシベック氏はテミスが観測した状況をシミュレーションするコンピューターモデルを構築した。アメリカのニューハンプシャー州ダーラムにあるニューハンプシャー大学の物理学者でシミュレーション構築のサポートを行ったジミー・レーダー氏は、「コンピューターモデルにより、北向きの磁場線と地球の磁気圏が結び付いてこの現象が引き起こされている可能性が高いことがわかった」と話す。
磁場線は地球に接近すると極地に取り付き、タコが獲物を捕らえるように地球を包み込む。磁気再結合として知られるこの現象は、磁気圏を切り裂いて大きなほころびを作り出し、太陽プラズマが流れ込む手助けをする。ただし、太陽粒子の厚い層があっても、それ自体では地球に対して地磁気上の問題を生み出すことはない。
現在、太陽活動は極小期にあるが、磁気圏の内部では太陽風に運ばれた北向きの磁場線により着々と太陽粒子の層が作られている。次の太陽活動サイクルにおいて、太陽風が運ぶ磁場線の向きは南向きに変わることが予測されている。その磁場線は地球の磁気圏と結び付いて地球の磁気シールド内部のプラズマを荷電する。
レーダー氏は次のような例えを用いて起こりうる事態を説明する。「旧式のガスストーブのようなものだ。ガス栓をひねってすぐに火を付ければなにも問題はないが、栓をひねった後しばらく放置してから火を付けたらどうなるか?“ドカン!”となるだろう」。
Victoria Jaggard in San Francisco for National Geographic News
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