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http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090101-OYT1T00010.htm
急変する世界 危機に欠かせぬ機動的対応、政治の態勢立て直しを(1月1日付・読売社説)
◆新自由主義の崩落◆
新自由主義・市場原理主義の象徴だった米国型金融ビジネスモデルの崩落が、世界を揺るがせている。
急激な信用収縮は、実体経済にも打撃を与え、世界は同時不況の様相を深めつつある。
「100年に1度の危機」とさえ言われ、1929年に始まった「世界大恐慌」が想起されたりもしている。
だが、もちろん、現在の世界は、80年前とは大きく異なる。
先進諸国は、歴史的教訓を踏まえて、さまざまな政策手法を積み重ねてきた。危機発生後、直ちに協調利下げを実施したのを始め、その後もさらなる金利の引き下げや、通貨供給量を増やすための量的緩和および公的資金の注入、財政出動などを進めている。
日本は世界第2位の外貨準備から国際通貨基金(IMF)に10兆円を拠出し、新興・途上国支援に充てる方針だ。外貨準備高世界一の中国などにも協調を促して、IMFの機能拡充への外交努力を強めるべきだろう。
ただし、足元の日本経済自体も、揺らいでいる。
世界金融危機の発生当初は、日本の傷は世界で最も浅いとの、楽観論、強気論もあった。
ところが、戦後最長とされる景気拡大を牽引(けんいん)してきた外需・輸出が、にわかに変調を来した。
「トヨタショック」といわれた自動車業界を始め、輸出関連業界の急速な業績悪化を引き金に、雇用、企業倒産、消費動向など、様々な経済指標が、日々、急速に悪化している。
◆内需拡大に知恵絞れ◆
世界経済の混迷は、数年間は続くという見方が多い。早急に、新たな商品の開発、新市場開拓などによる輸出戦略の立て直しに取り組まなくてはならない。
景気の底割れを防ぐため、内需拡大を急ぐ必要がある。ただ、少子高齢化、人口減少が進行する中で、従来通りの公共事業を中心とする手法では限界がある。財政事情も厳しい。
日本の強みは、減少したとはいえ、まだ1467兆円もの個人金融資産があることだ。
このうち、150兆円から170兆円が平均的な個人のライフサイクルから見て「余剰貯蓄」といえるとの、総合研究開発機構(NIRA)による試算もある。
また日銀は、いわゆるタンス預金だけでも30兆円、投資や利殖より安全を志向する当座・普通預貯金としてほぼ眠っている資金が、120兆円あると見ている。
こうした“眠れる資金”を掘り起こして活用することは、重要な政策課題だ。
内需拡大に向け、社会保障や、雇用対策などを中心とする景気振興に使途を限定すれば、国民も納得するに違いない。
できれば超党派で知恵を絞るべき課題である。
◆日米同盟の維持が重要◆
世界経済が混迷する中でも、日本の国際社会への関与、協力の在り方は、引き続き、見直しを迫られよう。
当面は、対外関与の軸足をアフガニスタンに置くとするオバマ米次期政権が、日本にもアフガン本土の治安回復活動への自衛隊参加を求めてきた場合にどう応えるか、という問題がある。
これに対し、過去の惰性で、憲法問題など国内政治事情を名目に協力を断れば、米国にとっての日米同盟の優先順位が低下していくことになるだろう。
日本は、たとえば、北朝鮮の核開発問題にしても、日米同盟関係抜きに、単独で解決することはできない。
急速に軍備増強を進める中国との関係を考える場合にも、緊密な日米同盟の継続が前提となる。だが、米国にとっても、軍事大国化、経済大国化する中国との関係は、ますます重要になっている。
国連が各国に求めているソマリア沖の海賊対策に中国も軍艦を派遣するのに、日本関係船舶が多数通航するにもかかわらず明確な方針を打ち出せないでいる日本を、米国はどう見るか。
米国にとっての日米同盟の優先度を、高い水準に維持するためには、日本が信頼できる同盟国だと思わせるだけの能動的な外交・安全保障戦略で応えていかなくてはならない。
しかし、現実には、その責任を担うはずの政治は、事実上、“空白”状態に近い。
衆参ねじれ国会の下、麻生政権は、民主党の政局至上主義的な駆け引きに揺さぶられ、緊要な内外政策の決定・実行ができなくなっている。
景気対策に必要な第2次補正予算案も、関連法案の成立がいつになるか不明で、早急には実施できそうにない。
まして、2009年度予算案をいつ実行に移せるようになるかは、見通しがつかない状況だ。
与野党が国内政局次元の争いに明け暮れていては、日本は国際競争から落伍(らくご)しかねない。
◆「党益より国益」を◆
9月の衆院議員任期切れまでには確実に総選挙があるが、党益より国益、政局より政策を優先し、できるだけ早く“政治空白”を解消して、政治の機動性を回復しなくてはならない。
しかし、次回総選挙では、自民党、民主党とも、単独過半数を獲得するのは難しいとみられている。すでに、与野党を通じ、そうした選挙結果を想定した政界再編、連立絡みの動きもある。
結果として、それがいかなる形の政権になるにせよ、肝要なのは、世界の先行きについての中長期的展望を踏まえた政策を、迅速かつ強力に推進できる政治態勢であることだ。
政治家も、国民も、世界と日本が険しい難所に差し掛かっているのだということを、常に心しておきたい。
(2009年1月1日00時27分 読売新聞)