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http://hochi.yomiuri.co.jp/book/news/20081222-OHT1T00024.htm
官邸の次は護送船団メディアを実名批判…上杉隆著「ジャーナリズム崩壊」
「現場にいる記者からは反応がない」と自著について話す上杉隆さん ベストセラー「官邸崩壊」で、安倍政権の崩壊を的確に予言したジャーナリストの上杉隆氏(40)が、また牙をむいた。「ジャーナリズム崩壊」(幻冬舎、税込み777円)では、記者クラブに代表されるメディアの護送船団ぶりを徹底的に攻撃。陰では現場の記者から「ふざけんな」の大ブーイングを浴びているという上杉氏だが、全くめげることなくスポーツ報道や麻生政権をもメッタ斬りしてくれた。
2007年8月に出版した「官邸崩壊」(新潮社)は、安倍政権の内幕を暴露し、1か月後の退陣までも“予言”。政治本としては異例のベストセラーとなった。以来、休日はほとんどなし。テレビ出演や雑誌の連載を多数抱え、今、一番注目されているジャーナリストといっていい。そんな上杉氏に「崩壊」シリーズ第2弾のオファーが舞い込んだ。
「ニューヨーク・タイムズでの経験、日米ジャーナリズムの比較を編集者に話していたら『書いてほしい』と。編集者の首の皮がつながる程度に締め切りを延ばし、何とか書きました。『官邸崩壊』が出版されてからの話だったので、幻冬舎が新潮社のタイトルをパクったのではないかという疑念もありますが…」
「官邸崩壊」と同じように今回も批判対象は、ほとんど実名で書かれている。上杉氏によれば、当然のことだという。
「ブッシュ大統領の元報道官のスコット・マクレランの書いた『偽りのホワイトハウス』(朝日新聞出版)。これ全部、記者の実名を書いています。これが普通。書いたことで、干されるんじゃないかという声もありました。増えた仕事も整理できるし、それもいいかなと。でも、政治家や官僚、地方紙の幹部やテレビ関係者からは『よく書いてくれた』と言っていただいた。ただ、不思議なことに第一戦の現場にいる記者からは反応がありません。事実関係をめぐり、抗議は1件。裏で『ふざけんな』と言っているのは、1万5000件聞きましたが(笑い)」
日本のメディアの特殊性を象徴する「記者クラブ制度」には、「過去の遺物」と厳しい批判を加えている。
「同業者が同業者をせん滅して、既得権益を守ることで権力を守っている。そのことを認める時期にきたと思う。97年の金融危機で証券会社、銀行が倒れ、官僚や政治もスキャンダルが明るみに出ることによって、自浄作用が働くようになったと思う。03年のWTOでは農業も変わった。だが、記者クラブだけは変わらなかったですね」
かつて上杉氏が鳩山邦夫氏の秘書を務めていたころ、新聞社やテレビ局などの記者クラブ所属の記者は「安全パイ」だと教えられたという。気をつけるべきは週刊誌やフリーの人間。当時、このアドバイスには違和感を覚えたというが、取材者の立場になった今、妙に納得できるという。
ダメなのは政治記者だけではないようだ。「日本のスポーツジャーナリズムはどこまで腐り果てるのか」(「諸君!」08年1月号・文芸春秋社)との挑発的なタイトルで問題を提起している。
「海外でゴルフの取材をした経験がありますけど、他の国の記者から言われるのは『何で日本の記者は、日本の選手しか取材しないのか』ということ。ミックスゾーンに日本人選手が来る。日本人記者は群がる。海外の記者はあわてるわけですよ。『ホールインワンでもしたのか』と。でも違う。理由は日本選手だから。海外のスポーツ記者は、原稿を出し終えたら言葉は通じなくても、パブで飲んでみんなでワイワイやる。だけど日本人記者は、近くの中華料理でテークアウトしてホテルのロビーで黙々と食べている。異様に見えるわけです」
紙面では、予定調和的な報道を繰り返し、結論の縛りがあるようだと指摘する。
「例えば、メジャーリーグ。2007年のポストシーズンで、明らかにレッドソックスの松坂は不調だったにもかかわらず、どのスポーツ紙も扱いは破格だった。リリーフの岡島が好投を続けたにもかかわらずです。大相撲の八百長問題も同じこと。真偽はともかくとして、疑惑はあっても八百長についての問題提起は行われずにきた。週刊現代の記事が出るまで、ほかの記者は『書かない』という選択をしてきたということ。長い目で見た場合、こういうことがスポーツをダメにすることにつながるのではないでしょうか」
「崩壊」といえば、支持率が暴落した麻生内閣はどうなのだろうか。苦境を招いた原因は「スピンドクター」(情報操作の専門家)の不在だという。
「側近を含め、政権運営のイロハのイから間違えている。例えば、メディア対策。麻生内閣にはスピンドクターをできる人がいません。結果、政権の恥部がどんどん流れている、裸の状態が続いている。さらに周囲の人間が、手柄を取り合い始めました。総務省から来た岡本全勝秘書官が、首相と直接やり取りする。結果、本来の政務秘書官である村松一郎さんとの連絡がうまくいかない。岡本さんは『筆頭秘書官』を名乗り、これにほかの秘書官は『ふざけんな』と。もはやメディア対策どころではありません」
任期満了を果たした小泉元首相を除き、1年も持たずに退陣を繰り返す最近の政権。これが出ると崩壊必至という「共通事項」があるという。
「自民党総務会と内閣、そして内閣記者会という3つの現場を取材すると、首相の置かれている立場がよく分かる。まず、総務会で若手から突き上げを食らう。結果、首相の尊厳は失われる。そして、内閣の閣議で大臣が私語をやめず、首相が来ても起立しなかったりとナメ出す。そして某閣僚としておきますが、鳩山邦夫氏(笑い)ら側近から突き上げを食らう。首相の周りは東大卒ばかりですから。『あの程度の漢字も読めないのは信じられない』『バカと言われている人に使われたくない』という意識が働きます。最後に若手の総理番記者がナメだすと、収まりがつかない。森、安倍、福田内閣では、半年くらいでそんな兆候が見え始めた。麻生さんは2か月ぐらいでそろってしまった。これはもう終わったな、と」
◆上杉 隆(うえすぎ・たかし)1968年5月3日、福岡県生まれ。40歳。NHK報道局勤務、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局記者を経て、02年にフリーに。安倍政権の内部を描いた著書「官邸崩壊」(新潮社)がベストセラーに。週刊誌などの連載やテレビ出演多数。