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http://www.yukan-fuji.com/archives/2008/10/post_15679.html
名参謀、西武・黒江透修ヘッドコーチ勇退を惜しむ
■江尻良文編集委員「球界に直言!」
ソフトバンク・王貞治監督が今季限りで勇退することになったが、「オレはON超えをしている」と自負する、もう一人の元V9巨人戦士がユニホームを脱ぐことになりそうだ。4年ぶりのリーグ優勝を果たした西武・黒江透修ヘッドコーチだ。「1年契約だから、今年で終わりだろう」とサバサバした様子で語る。
43歳の渡辺久信監督、41歳の大久保博元打撃コーチら若手内閣のお目付役が69歳の黒江ヘッドコーチの役割だったが、ジェネレーションギャップは埋めようがなく、浮いた存在になってしまったようだ。が、「今年の優勝で選手、コーチとして通算21度目の優勝になる。川上さん、森さんには負けるかもしれないが、ONを超えているからね」と胸を張る。
V9選手として9回。コーチとして長嶋巨人第一次政権下で2回をはじめ近藤中日で1回。さらに広岡西武で1回、森西武で5回、王ダイエー2回。そして今季で通算21回目の優勝になる。ともに18回のONを確かに超えている。『参謀学』なる著書もある。「クロちゃんは選手に好かれようとしない、嫌われてもズケズケモノを言うのが一番いいところだ」とは王監督の弁だ。
万年Bクラスのダイエー再生に悪戦苦闘していた王監督が助監督として黒江ヘッドコーチを招き、就任4年目にAクラス、5年目に初のリーグ優勝を果たしているが、選手からの嫌われ方は半端ではなかった。00年のリーグ連覇の際に「今年でダイエーを辞めるから優勝が決まったら、思い出に胴上げしてほしい」と選手会に異例の申し入れ。ところが、「どうする?」「嫌だよ」「胴上げして落とすか?」「最後だし、仕方ないから胴上げしようか」と選手会はカンカンガクガク、最終的に仕方なく胴上げしたエピソードがある。
森西武時代のこんな話を本人から直接聞いたこともある。「遠征先で森さんが『選手の部屋の冷蔵庫にお酒が入っていないかどうか調べてくれ』と言うから、選手の部屋に行って調べたんだ。翌日、選手たちが森さんに文句を言った。そうしたら、森さんが『それはひどいな。そこまでやったのか、クロちゃんは?』と言っているんだから、これには参ったよ」。監督命令とあらば、ここまでやれるコーチは確かに希少価値があるだろう。
西武時代のこんな逸話があるのに、森祇晶氏が横浜の監督になった時にも誘われ、ヘッドコーチとして入閣している。
「コーチとして行く先々で優勝している。一度だけ一軍の監督をやってみたい」というのが、黒江氏の夢だったが、これはついに叶えられそうにない。一度だけチャンスはあった。96年にロッテの二軍監督として優勝。一軍はAクラス入りしたものの、広岡達朗ゼネラルマネジャーとバレンタイン監督が正面衝突。ケンカ両成敗で双方が退団することになったが、「広岡GMが連れてきた人には辞めてもらうが、黒江さんだけには残ってもらう」とフロント首脳からお墨付き。球団からの呼び出しに「今度こそ一軍監督だ」と勇躍、担当記者を引き連れて行ったら、「申し訳ないが、広岡ファミリーは全員退団してもらうことになりました」と予期せぬ逆転解雇通知だった。
それでもめげなかった参謀人生。長嶋vs森、広岡vs森といった修復不可能な球界冷戦人脈図も関係なし。天敵の巨人・長嶋茂雄監督と横浜・森監督を試合前に顔合わせさせた時には、「黒江さんにしかできない芸当だな」と驚かされたものだ。こういう異色の人が本当に現場から去るとしたら、寂しい。