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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20080804-01-1301.html
福田と麻生の共通の色
2008年8月4日 The Commons
今回の内閣改造人事のポイントは麻生幹事長起用の一点に尽きる。これは「福田おろし」の主役になる役者を芝居が始まる前に引き抜いてしまったようなものだ。「福田おろし」を仕掛ける側は当面芝居を打てなくなった。福田総理が麻生氏をどのように口説いたかは知らないが、「近く貴方に総理の座を譲る」と言ったとしてもおかしくない。
麻生氏は2度目の幹事長就任である。1度目は1年前、参議院選挙惨敗後の安倍改造内閣の時であった。「自民党をぶっ壊すと言う人(小泉純一郎)を選んで、事実(自民党は)ぶっ壊れたので、立て直すのが使命だ」と就任の弁を語った。参議院選挙惨敗は小泉元総理に責任があると明言した訳で、それまで誰も言えなかった「反小泉」を自民党執行部が初めて公言した瞬間だった。
麻生氏はさらに安倍総理に官房長官を与謝野馨氏にするよう進言した。「反小泉」の財政政策を推進するためである。安倍総理はそれを受け入れ、幹事長も官房長官も総裁派閥でない人間が就任する事になった。幹事長と官房長官はカネを握るポストである。どちらかは必ず総裁派閥が押さえるものだ。それを他派閥に明け渡した総理は極めて珍しい。そのせいでもないが安倍総理はすぐに政権を投げ出す事になった。麻生氏は「反小泉」政治を実現する機会を失った。
今回再び麻生氏は幹事長就任の条件として与謝野氏の処遇を求めた。従って経済財政担当大臣に与謝野氏が就任した事は、麻生氏にすれば去年出来なかった事を実現する機会が再び巡ってきた事になる。そして大事な事は福田総理も同じ考えであることだ。それが麻生幹事長起用となり、また改造人事の随所に現れている。福田カラーは麻生氏と同様に「反小泉」の色なのだ。
福田総理は自民党執行部と重要閣僚に郵政造反組、すなわち「反小泉」の人材を起用した。政調会長に保利耕輔氏、消費者行政担当大臣に野田聖子氏を充てたのである。小泉総理によって党を追放された人間を党の中枢と福田内閣の重点政策の担当大臣に起用した事は、福田カラーが明確に「反小泉」である事を示している。中でも保利耕輔氏の起用には小泉元総理とは対照的な「福田好み」がにじみ出ている。けたたましく「改革」を叫んでテレビでもてはやされる政治家は「嫌い」だが、地道にこつこつ実績を積み上げるタイプの寡黙な政治家を福田総理は「好き」なのだ。
今回の人事で福田総理は小泉元総理周辺以外には満遍なく目配りを施した。敵を小泉周辺だけにして、他はなるべく敵を少なくしようとする人事配置である。山崎派や古賀派はポストの数で優遇し、津島派には総務会長を、小派閥は領袖クラスを入閣させた。隙間風が言われる公明党にも配慮を欠いてはいない。麻生幹事長には目障りだろうが公明党の味方である古賀選挙対策委員長を留任させた。ただ古賀派の入閣者数が多いのは裏側で古賀氏に譲歩させた何かがあるのかもしれない。選挙対策委員長の役割の何かか、或いは道路特定財源の一般財源化を巡る部分での取引があったとしてもおかしくない。
民主党が選挙で特定郵便局長会の支援を受ける体制が出来つつあり、また郵政造反組が結集する平沼新党の動きなどを見ていると、自民党は「反小泉」にシフトせざるを得なくなってきているのだろう。今回の麻生幹事長の就任の弁を聞くと、権力から脱落しかかっている政権与党の危機感がにじみ出ている。
そこでこれからどうなるかである。「政局が大好きな」小泉元総理は7月初めに「改造は難しい。失敗すれば総辞職せざるを得なくなる」と語ったが、麻生幹事長を取り込んだ事で改造の失敗による総辞職の可能性はなくなった。受け皿になる総裁候補がいないからである。まさか小池百合子では悪い冗談もいい加減にしろという話で党内はまとまらない。
また小泉元総理は「改造をやれば福田総理が自分の手で解散するとみんなが思う」と言い、「解散は来年の春まで」と言ったが果たしてそうだろうか。
「今回の改造の目的は安心、安全の政策実現のためだ」と福田総理は言った。それならば政策が実現される前に解散するわけにはいかない。そして改造したばかりで大臣の首を切るというのも常識的ではない。できる限り内閣を延命させようと思うのが人情だ。少なくも臨時国会に提出する予定の消費者庁法案などの目途がつくまでは、解散はやらないし、総辞職もない。
しかし福田総理は消費者庁法案の目途がつけば政権に恋々とせず、解散でも、総辞職でも踏み切る用意があるように見える。福田総理にとっては解散でも総辞職でも良い。改造をしたからと言って自分の手で解散をしなければならないと考えるタイプに思えない。解散は誰かに譲っても良い。
そこから冒頭に書いた「禅譲」の可能性が出てくる。臨時国会で消費者庁法案を成立させれば、福田総理はそこで麻生幹事長に禅譲する。麻生氏は直ちに解散するかもしれないし、やりたい政策課題を実現するため任期切れの来年9月まで引っ張って解散する可能性もある。とにかく公明党は衆議院選挙が都議選の時期から離れれば良いわけだから、先に延ばす可能性もあると思うのである。
いずれにしても麻生幹事長の誕生で、政局的には色々の可能性が考えられるようになった。ただ一つだけはっきりしているのは、今回の改造で自民党が「反小泉」の色に染まってきた事である。
(田中良紹)