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「党首討論」回避で出された「問責決議」(岸井成格=毎日新聞特別編集委員)
2008年7月8日 リベラルタイム
野党が提出した、福田康夫首相に対する参議院での『問責決議案』は、野党多数で史上初めて可決された。しかし、政治的には『不発』に終わり、改めて衆参二院制の是非論も出た。
衆議院の『内閣不信任案』は、可決されれば首相は解散・総選挙で国民に信を問うか、内閣総辞職で責任をとる以外に道はない。これに対して、参議院の『問責決議案』には、そうした憲法上、法制上の拘束力はない。それだけに、政局に大きなインパクトを与えるためには、解散・総辞職を求める世論の盛り上がりを見極めた上でのタイミングと、出し方が重要なポイントになる。
その意味で、史上初の『問責決議案』可決は、タイミング、やり方ともに稚拙で、伝家の宝刀ならぬ『竹刀』だった。
決議案提出の日、私は参議院議員会館で開かれた、民主党を中心とした野党の勉強会に呼ばれていた。一カ月以上前に予定されていた。
ところが、この日に福田首相と小沢一郎民主党代表の党首討論がセットされた。
私は勉強会の幹事役である民主党参議院議員に電話を入れ、「おそらく党首討論と時間がかぶるでしょうから、当方には遠慮なく、延期してもらって結構です」と伝えた。
意外な答が返って来た。
「イヤ、その日に『問責決議案』が提出されると思うので党首討論はなくなるはずです」
「それはおかしい。ただでさえ問責提出のタイミングを逸した形で、そのまま審議拒否でまた国会空転となれば、国民の批判は政府与党だけでなく、野党にも向かう。少なくとも、党首討論で対立軸を明確にした上で『問責決議案』の提出にすべきではないか」
「イヤイヤ、小沢代表はとにかく党首討論をやりたくないらしい。そのために、党首討論を潰すため直前の提出を考えている」
「そんなことはすぐに伝わるから、批判が集中するだろう」
「さらに執行部は、代表がやる気がないだけではなく、福田首相の『抱きつき』『クリンチ』作戦を避けるためには、『後期高齢者医療制度』の廃案で一切妥協しない全面対決で行く方針を決めたようだ」
当日はその通りの展開となり、可決後に勉強会は開かれた。
私は冒頭に、「今回の野党の出方は納得できない。少なくとも党首討論だけはやってもらいたかった。いま、日本を取り巻く内外情勢は非常事態に近いほど大きな変革期を迎えている。資源、エネルギー、食糧、環境問題等、国民が党首討論に期待する課題が山積している」と不満をぶつけた。出席した野党議員たちからは、「まったく同感だ。残念でならない」の声が相次いだ。
史上初の決議案可決の高揚感はなく、『不発』に終わったはずだ。
閑話休題。小泉純一郎元首相の著書『音楽遍歴』(日経プレミアシリーズ)を読み、細川護 元首相の玄人はだしの陶芸と書の個展(日本橋/壺中居)に足を運んだ。稿を改めたいと思う。
リベラルタイム8月号「岸井成格の政治談義」