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諸悪の根源は本当に府職員か−政治の対立軸(3)−
橋下知事は「府職員が諸悪の根源」で、「高級官僚の天下り」をまったく問題にしない。府職員数の削減を唱えながら、警察から圧力がかかると警察人員の削減を直ちに取り下げた。「弱い者いじめ」の典型的行動様式が示されている。
知事が府職員をいじめても知事を糾弾する者はいない。高級官僚の天下り、警察職員の削減を唱えれば、力の強い者から知事への攻撃が直ちに発生する。橋下知事の行動は「強きを挫き弱きを護る」でなく、「弱きを挫き強きを護る」以外の何者でもない。
本当に府職員が諸悪の根源なのか。私は橋下知事の行動を見ながら、言葉に言い表せぬ違和感を感じ続けてきた。「何かが違っている」と私は感じ続けた。「いわれのない虐待」、「理不尽な差別」と通じる構造を私はそこに感じる。
府職員が橋下知事から糾弾される姿を見ても、誰も手を差し伸べようとしない。一般の府民は拍手喝さいを送る。府職員はいわれなき誹謗中傷を浴びながら、やるせない気持ちを募らせていると思う。橋下知事は府職員との対立図式がテレビで繰り返し放映される結果が、自らに有利に働くことを計算によって熟知している。多数の世論の支持が得られれば「勝ち」であるとの感性しか有していないと思う。
府職員を悪者に仕立て上げ、自分が正義のヒーローになることの論理的正当性を、橋下知事が熟慮していると考えられないのだ。大衆人気に便乗して、善良な府職員の尊厳をどれほど深く傷つけているのかに思いを巡らす「想像力」を欠いているように思う。
私は府職員に非がないとは思っていない。多くの公務員が保障された身分にあぐらをかいて、非効率的な業務態度を示していることを知っている。公務員の労働の質を引き上げるための努力は必要だと思う。公務員の意識を改革し、最少の費用で最大のサービスが提供されるように、公務員が提供するサービスの品質向上が強く求められる。橋下知事はまず、この点に注力すべきだ。
だが、一方で、最大の努力を傾注している職員も多数存在すると考える。私の知人の一般公務員では、献身的に職務に尽力している人がほとんどだ。拙著『知られざる真実−勾留地にて−』にも記述したが、東京拘置所職員の多くも極めて勤勉で善良な公務員だった。
府職員を諸悪の根源として糾弾するのではなく、高級官僚、およびその天下りを糾弾するべきと考える。糾弾すべき対象は「一般公務員」なのか、それとも「高級官僚および天下り」なのかが問題である。橋下知事の問題提起を、「諸悪の根源は一般公務員であって、高級官僚および天下りではない」と解読し、その是非を冷静に考察することが求められている。
深く考えもせずに、メディアが提供する「府職員=悪VS橋下知事=白馬の騎士」の図式に乗って府職員糾弾に加担すること、これが「いじめ」の基本構図である。「いじめ」加担者の大多数に「いじめ」の意識は乏しい。しかし、いわれなく「いじめられる」者は「数の暴力」に苦悶するのだ。
2006年5月5日にエキスポランドはジェットコースターの整備不良で痛ましい死亡事故を起こした。その運営主体である独立行政法人には大阪府からも警察からも天下りが受け入れられている。高級官僚と天下り問題が府職員糾弾よりも優先されるべきだと私は考える。また、橋下知事は巨大利権の温床となる巨大プロジェクト見直しにも慎重である。
中川秀直氏は官僚利権根絶を唱えているが、その実現は極めて疑わしい。通常国会で成立した国家公務員制度改革基本法を見る限り、現在の政権与党に官僚利権を根絶する考えがあるとは考えられないからだ。
新制度ではキャリア制度廃止が謳われているが、総合職、専門職、一般職と名称が変わるだけで、キャリア制度は完全に合法化される。しかも、キャリア官僚の天下り特権は完全に温存される。さらに、これまで民間企業への天下り承認を報告してきた人事院の「天下り白書」も作成されなくなる。個人情報を盾に情報が公開されなくなる懸念も強い。
自民党の支配権を掌握した清和政策研究会の幹部の地位にある中川氏が本当に官僚利権を根絶する考えを持つなら、このような天下り温存の制度改正が政府から提案されるはずがない。
官僚は国民の幸福追求を行動原理の基本に据えていない。官僚は勤務評定の基準に従って行動する。役所はそれぞれの官庁の利益拡大にどれだけ貢献したかを勤務評定の基準としている。必然的に官僚は官庁の利益拡大を目指すことになる。
役所の権益とは法律によって業界を支配すること、予算配分権を拡大すること、天下り利権を拡大することに尽きる。財務省の場合には、税金を1円でも多く徴収することがこれに加わる。天下り先は、特殊法人、公益法人、および民間企業だ。公的天下り機関の維持拡大に努めるとともに、官庁の権限を活用して民間企業への天下り利権の維持拡大を図る。
高級官僚の天下り利権の巨悪と比較すれば、一般公務員の悪ははるかに小さい。そして小悪である一般公務員の労働の質を努力によって高めることは十分に実現可能だ。実際、職員のサービス水準が非常に高い自治体が多数存在する。橋下知事は府職員を糾弾するより、大阪府職員のサービス水準の飛躍的向上を目指すべきだ。
私は公務員制度改革についての提言を拙著『知られざる真実』の89−98ページに記述した。その骨子は、@第1種国家公務員を第2種国家公務員と統合して廃止する、A天下り制度を全廃する、B公務員の定年までの雇用を保証する、の三つだ。天下りを廃止すれば、公益法人等に注入している財政支出の大半が削除される。
多くの人は警察からの巨大な天下りの現実を知らない。警察には犯罪捜査や立件に関する巨大な裁量権がある。立件するかしないか、逮捕するかしないか、だけでも意味は重大だが、決定は警察および検察に委ねられている。この裁量権と天下りが不可分に連結している。
一般公務員の小悪よりも、高級官僚の天下り制度の巨悪が問題である。自公政権と新たに創設される政治新勢力が「一般公務員を諸悪の根源」とするのに対し、野党は「高級官僚の天下りを廃絶の対象」とすべきだ。
小泉元首相は27万人の郵政職員を悪の根源とした。橋下知事は府職員を悪の根源としている。図式は同一だ。しかし、郵政職員と府職員が本当に悪の根源なのかを冷静に考えるべきだ。
罪なき者にいわれのない罪を着せ、諸悪の根源とのイメージを植え付け、一般大衆の不満を昇華させる。他方で、情報操作と世論誘導によって、外国資本への巨大利益供与と日本社会の破壊を「正義の政策」に偽装する「権力の濫用者」こそ諸悪の根源であり、国賊だ。この「真実」を人々に知らしめなければならない。それが政権交代を勝ち取る救国野党の責務である。
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2008年7月 4日 (金) 政治 |
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・・・植草氏を心から尊敬し応援したいと思います。副島隆彦記 2008.7.2
http://www.asyura2.com/08/hihyo8/msg/319.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2008 年 7 月 03 日
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